モンスターズスクール(偽) ファルシオ祭りに参加してみた

 祭り
 普段から考えられない程の人ごみと熱気。雑然とした人の流れ。一種独特の雰囲気に酒に酔った様な高揚した気分になる。いつもは腹が立つはずの肩の衝突さえ、町全体が自分を手荒な歓迎をしてくれているように思ってしまう。
 流石に考え過ぎか
 僅かに胸の内で苦笑する。

「あっちで人だかりができてるよ!」
「ねぇねぇ、あれなぁに?」
「ボク、あれやりたい! あれやって良い?」
「私、ライブ見に行きたい! マスター、一緒に行こうよ!」
「引っ張んないでよぉ〜 とりあえず、のんびりしようよぉ〜」
「待ちなさいって! 迷子になっちゃうわよ!?」

 俺の頭の上でフェアリー達は好き勝手な事を言い合いながらクルクルと踊っている。
 ちなみに、人だかりに興味津々になっているのはリーフェ。リーフェに釣られて興味を抱いたのはシィル。今にも人だかりに突撃しそうなボクっ子はフェア。他のフェアリーを引っ張ってライブに誘うのはテリエラ。一生懸命に他の五匹をまとめようとしているのはお姉さん格のテイルだ。

「まぁ、とりあえず・・・落ち着こう。 お前達。 お祭りは逃げないし時間はタップリあるから。 な?」
「「「「「「ふぁ?」」」」」」

 六匹のフェアリー達はピタリと動きを止めてこちらを見て、そのあと周囲を見渡した。よくよく見れば流れの中に、歩く速度を緩めてこちらを眺めている人もいる。何人かの知らない人たちを目が合った。
 精霊達ならまだしも、子供っぽく手の掛かる上に出来る事がかなり制限されているフェアリーを使役しようとする輩はほとんどいない。精霊使いならぬ妖精使いは珍しく、ましてや6匹も飛ばしていたら興味を抱くのは当然だろう。おまけに俺の服装が現代の物で、周囲にいる現地の方々は民族衣装のような服装なので目立つ事この上ない。
 ついでに、時折、男一人で歩いているヤツから「モゲロ」なんて怨嗟の声が聞こえてくるのは聞こえなかった事にしよう。物騒だしな。

・・・

 価値観にも依るだろうが、俺は基本的に祭りでお金はあまり使わない。食べ物やジュースなんて平日に普通の店で買ったほうが遥かに安いし良質だ。祭りとは雰囲気や行事を楽しむものであって、買い物を楽しむ場所ではないと思っている。
 出店を冷やかし、小腹が空いた時に祭りに出ている珍しい種類の食べ物を売っている出店で買って満たすのだ。金魚すくいや射的のような遊技は冷やかすだけ。実際にやって思うようにいかないと嘆くより、それらのやりとりを見ている方が楽しかったりする。おまけに、もらった景品も処分に大抵困る。結局、あまり金を持ってきても物騒なだけなので、ポケットの中には少し多目の小遣い程度しか入っていない。

「とりあえずお前達。 はぐれないようにするから、おいで」
「「「「「「はぁい」」」」」」

 最初はフェアリー達に腰縄でもつけようと思ったが、間違いなく職務質問の対象になりそうなので却下。フェアリーに腰縄つけて飛ばせるなど、犯罪臭しかしない上に好き勝手に飛び回るフェアリー達は絡まるのが目に見えている。俺は可愛いモノ好きであってロリコンではないのだ。良いか?俺はロリコンじゃない。単なる可愛い物好きだ。
 大事な事なので二回言いました。

「冗談さておき。まじめに作業するか」

 契約という絆を具体的なイメージに作り変える。フェアリー達それぞれの契約を強く意識すれば、それぞれが互いに絡み合うことも無い。イメージするのはアラクネの糸。しなやかで丈夫な魔法の糸。

「できた。 これで良いだろ」

 フェアリー達と俺の間に糸ができる。不思議そうにフェアリー達が糸を引っ張ってみたり、互いの糸を絡めようとしたりして遊んでいる。

「マスター。 これなに?」
「契約の鎖を具現化させたんだよ。 これでお前達がどこに居るか分かるだろ?」
「へー・・・ マスター、こんな事もできたんだぁ・・・」
「っていうか、マスターならボク達の事5km先でも場所をサーチできるでしょ?」
「真性ロリコンだからねー♪」
「うるさい、お前達。 人をロリコン扱いするな」
「きゃはは、マスター怒ったぁ♪」
「怒ってない!」
「うっそだぁ〜 怒ってるよぉ〜」
「怒ってないってば!」

 契約者と使い魔の間にできる鎖は、契約した必ずできるものだ。互いに位置や必要な情報を与えるための繋がり、バフォ様に任せて契約したので理論は全く持って分からない。俺自身は、魔術の類は道具無しには使えない。
 しかも、道具と言っても杖や帽子、マントなど汎用性の高いものは全く使えず、お守りや札のような一般人でも使えるインスタントな魔法具だ。携帯電話の通信原理が分からなくても、携帯が使えるのと同じである。

「でも、マスターは一個だけ魔術使えるでしょ?」
「時空転移? あれは魔術じゃない
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