「ねぇ、ルビア? どーして、このエロ本はロリ系ばっかりなの?」
「うっせぇ、馬鹿。 未来が詰まってるからに決まってるんだろうが!!! 」
ベッドの上で寝転がって雑誌を読んでいたが、数冊残されたエロ本の内容について訊ねられるとトトに向けて投げつけられた。ヒョイ、とトトは首を傾げるだけで避ける。雑誌を寝転がった状態で野球ボール並みの速度で投げるルビアもルビアだが、それを難なく躱すトトもトトだ。代わりに雑誌は本棚の角に当たって無残に折れ曲がった。
「あー・・・ もったいない、折角買ってきたのにぃ・・・」
「うぜぇなぁ・・・ その雑誌全部埋めたから良いんだよ。 どうせ大した商品ついてねぇからな」
「え? うそ? これ、昨日発売じゃん。 半日で全部のナンプレを解いたの?」
「ったりめぇだろ? んなもん、解き方が決まってんだから頭の体操ぐれぇにしかなんねぇよ」
「流石、元神様・・・ やることが違うねぇ・・・」
「テメェの場合は頭が3億年前から進歩してねぇんじゃねぇのか?」
ルビアの激しい毒舌をトトはどこ吹く風と受け流す。本棚にぶつかったところを指でなぞり、グシャグシャになった雑誌を拾い上げて手でしわを伸ばしている。物を大切にするとか、まじ、トトちゃん良い子。何かの拍子にトトちゃんが元の姿に戻っても潰さないで、虫かごに入れて保護してあげよう・・・
それに比べて、この蝿の王様と来たら・・・
ドコから取り出したのか今度は人の携帯ゲーム機を弄り回している。
少しはトトを見習えというのだ。
「トト、なんかメシでも食うか?」
「ううん、お構いなくー♪ ありがとねー♪」
「旨いもん」
「お前、少しは遠慮しろよ」
「じゃあ、インスタントかレトルトが良い。 お前の手料理は不味いから」
謙虚なトトに対して、ルビアは全く持って自重する気がない。マジでブチ殺してやりたいが、口喧嘩は勿論のことながら、腕っ節の喧嘩で勝てるわけも無く我慢するしかない。
仕方なしに重い腰をあげて冷蔵庫に向かう。
「・・・なにこれ?」
「どしたの?」
冷蔵庫の扉を開けて絶句しているとヒョッコリとトトが覗き込んできた。一応、食品を入れておくという理由から冷蔵庫だけは唯一といって良いほどルビアが来る前から整理されていたが、今は整理されているどころの話ではない。
空だった。
新品同様と申し上げても問題ないくらい。見事な空。唯一物が入っていたという証として冷たい空気が奥から流れ出ていた。
「空だね。 なんにも入ってない」
「そうだね・・・ なんにも入っていない」
「うーん。 お腹空いてるなら、コレ食べる?」
「気持ちは嬉しいけど、雑誌はスナックみたいに破いて食べるものじゃないからね」
「あ、そっか。 人間は食べられないんだっけ? えへへ・・・ 失敗失敗♪」
ピリピリと雑誌を一口大に千切り口に運び、舌の上に乗せて味わうように転がす。目を閉じて味わった後、白い喉仏が動いて嚥下した。潤いのある唇から溜め息のような長い息が漏れる。
僅かに放心したような恍惚の表情を浮かべて、口の中に残る僅かな余韻を楽しんでいる。
ナンプレ雑誌をここまで気持ち良く間違った使い方をするのは、多分初めてじゃなかろうか・・・
それは良いや。
問題は、冷蔵庫に食べ物が入っていない理由である。
「そりゃ、オレが食ったからに決まってるだろ? オメーが寝てる間に自分でやって食ったんだよ」
「ちょ、お前。 アレ、一週間分の食料だぞ? それをたったの数日でって・・・」
「ガタガタうるせぇ、金玉の小さい糞ガキだなてめぇは? はぁ? 食料自給率低いかもしれねぇけど、日本じゃ児童虐待でもされねぇ限り飢えで死ぬ奴なんかいねぇよ。 ホームレスだって太る飽食の時代だぞ? 冷蔵庫を空にされたぐれぇで、ピーピー騒いでるんじゃねぇよ」
「そうじゃねぇよ!!! また買い出しに行かなきゃなんねぇだろうが!!!」
「行けば良いだろうがボケぇ!!!」
「なんでテメェに指図されにゃ、ならんのじゃ!!! 俺はテメェを養うつもりはねぇからなぁ!?」
「あぁ? 何言ってくれやがるんですか、童貞キモオタニートは? ハナからテメェに期待なんざしてねぇよ、糞ハゲ。 自分の生活費ぐらい自分で用意するわぁ、カスが!!!」
・・・
「圭太ぁ ご飯買いに行こ♪」
「やだよ・・・ 金はやるから買ってきてくれ」
「えー・・・ 圭太ぁ・・・ 一緒に行こうよ。 私、一緒に買い物できるの楽しみだったんだよぉ?」
コテン、と首を傾げて顔を覗き込む。純粋な好意で言ってくれているだけあって思わず目を背けてしまう。
外は恐い。
ゴミ捨て場までは注意すれば誰にも会わずにゴミを捨てにいけるが、コンビニとなれば話は別だ。どんなに会わないように注意して
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