霧崎さん 助手・ヴァンパイア

 あぁ・・・やっと目覚めたか・・・
 もしかしたらもう起きないのかと思って不安だったのだが・・・
 よかった、安心した

 お前のいない世界なんて・・・なんの価値もないからな・・・
 お前が眠っている間は、まるで世界が死んでしまったようだった

 それこそ・・・

 感触も 音も 色も 香りも 味も

 何もかも、世界から失われてしまったようだった

 ふふ、分かるかい?

 真の孤独はね・・・ 一人でいることじゃないのだよ・・・

 死は最も孤独に近いと言うものもいるようだが
 それも間違いだ

 誰かが己の存在を心に留めていてくれるのなら、それは決して一人ではない
 歴史が証明しているだろう?

 孤独に押し潰されぬよう、人は墓を立てて弔ってきたのだよ・・・

 ならば、何が真の孤独か?

 それはね・・・

 自らの存在を認識できない状態
 それが・・・完全なる孤独なのだよ

 あぁ・・・あんな世界に居るのは・・・本当に地獄だったよ・・・

 お前と会うまでの時間も、確かに孤独だったがね・・・
 それさえも、これ以上ないほど楽しさと喜びに満ちた世界だったと思えるほどだったよ
 一瞬でも、あんな世界に戻るくらいなら・・・ 私は死んだ方がマシだ

 けれどね・・・お前が居たから、それも我慢できたよ

 ふぅ・・・
 すまない・・・少し、愚痴が過ぎてしまったな・・・

 こんな事を聞かせて、お前の耳を汚すつもりはなかった・・・
 信じて欲しい
 少しばかり、弱気になっていたのかもしれない・・・
 許してくれ・・・

 フフッ・・・でも、心配しなくて良い・・・大丈夫だよ

 いつだって、私が守ってやる

 血族だろうが・・・ 神だろうが・・・ 魔王だろうが・・・

 お前を害しようというのなら・・・全て残さず排除してみせよう
 指一本触れさせたりしないよ・・・
 望むのなら、肉の一遍・・・いや、髪の毛の一本たりとも残さないよ

 だから、お前は安心してそこに居てくれ
 例え、世界がお前の敵になろうとも・・・私はお前の味方だ・・・

 私だけが、お前を思い、理解してやれる
 私だけが、お前のために行動してやれる
 私だけが、お前を心の底から愛してやれる

 大丈夫だよ?
 私は正常だ・・・

 これ以上ないほど思考はクリアーだよ?

 ははは・・・
 あははははは・・・・・

 なぁ・・・お前は私を愛してくれるよな?
 これだけ、お前を愛しているのだから
 それ以上に私を愛してくれるよな・・・

 髪の毛の先から、つめの先まで愛しているのだから
 お前はそれ以上に私を愛してくれているのだろう?
 それを証明してくれるかい? さぁ!

 ふふふ、恥ずかしいのかな?
 良いよ・・・ 本当は、お前の口から聞きたかったのだが・・・
 恥ずかしいのなら、無理強いはしないさ・・・

 私は、ちゃんとお前の気持ちは分かっているからね
 お前がいつ言ってくれるのか楽しみだ・・・
 そうだろう?

 そうやっていつもはぐらかして、焦らすのだからな
 一時の喜びよりも、恒久の幸せを与えてくれる
 本当にイケナイ人だ

 そういう細やかな心遣いに、ますます惚れてしまうだろう?
 まったく、どうしてくれる・・・

 あぁ・・・愛してるよ・・・

 聖水の如く、お前は私を侵し
 銀の弾で貫いたが如く、お前は私の心を貫いた
 心臓に杭を打ちつけた如く、お前は私を縛りつけ
 日の光を浴びた如く、お前への思いが今もこの身を焦がしている

 お前さえいなければ、私はこんなに苦しむことは無いのに
 お前さえいなければ、私はこんなに嬉しいことも無いのに

 苦しめるのは、常に忘れず胸に刻みつけておけという意味なのだろう?
 逃げようとするのは、常に追いかけて欲しいという意味なのだろう?
 暴れるのは、愛ゆえの試練なのだろう?
 拒絶するのは、愛情の裏返しなのだろう?

 全部分かっているよ・・・私の全てはお前へ向いている

 あぁ、お前こそ私の主に相応しい
 私は幸福だ・・・

 けれど、まだ足りない・・・
 足りないのだよ・・・

 不自由だと思わないか?
 世の中には「愛する」という以上に愛を表現する言葉がないのだ・・・

 どうすれば、良いと思う?

 私は、お前をこんなに愛しているのに・・・
 それを表現する手段がないのだよ。

 私だけが好きなのに、私だけが愛しているのに、私だけが尊敬しているのに、私だけが慈しんでいるのに、私だけが想って良いのに、私だけが感じて良いのに、私だけが触れて良いのに、私だけが抱き締めて良いのに、私だけが憎んで良いのに、私だけが哀れんで良いのに、 私だけが、私だけが、私だけが、私だけが、私だけが、私だけが、私だけが、私だけが、私だけ
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