バフォ様のお茶目さん

 今回のサバトの酒の肴は俺たちの様だった。
 浴びる様に酒を飲み、食べ物を喰い散らかし、祝福に満ちた野次を飛ばす。イルは大規模な集会などが少し苦手な様で、時折こちらを見るのだが、そのせいで余計に“ラブラブ”などと囃し立てられている。ちょっぴり恥ずかしいようだったが満更でもなさそうだ。
 もっとも人一倍他人に気を使うクロムが嫌がる事を黙認するなどありえない話ではあったのだが。

「さて、今宵はもう遅い。 ヌシも泊まって行くが良かろう。 さもなくば、何かの間違いで魔物達が襲ってくるかもしれんからな」
「それ・・・断ったら、絶対けしかける気満々ですよね?」
「さぁのぉ」
 とりあえず、クロムのお言葉に甘える形で北の塔に泊まる事にする。曰く、アレサやファフの一般人が来た時などのために最上階には宿泊施設があるそうだ。

「ここ・・・一応は、ダンジョンですよね?」
「そうじゃ」
「露店が開かれたり、バザーやったり、サバトを開いたり、探検ツアー企画したりと・・・随分、楽しそうですけど・・・」
「無闇に人を襲い迷惑を掛けるより良かろう? 儂らとて望まぬ相手と番(つがい)になるより、望む相手と共に居たいのは必然。 相手を見極めるためには、積極的に人と交流する機会を増やすのは通りじゃろう?」
「・・・まぁ、確かに」

 当たり前と言えば、至極当たり前の事だ。
 魔物が襲うと言っても、人間の肉を食べて胃袋を満たす訳ではないので相手を吟味する。もちろん、人間だって拒否権はある訳で意中の人が居れば断ることもあるし、相手を良く知らなければ、そうそう長く続くものでもないだろう。
 不幸になるための結婚なんてものは、誰もする訳がない。

「本能に従順ではあるが、一時の感情に身を任せて全てを無に返すような事はせん。 それぐらいの思慮分別は弁えておるし、魔王の最終的な目標が“人間という種の根絶”ではなく“人間と魔物の共存”である以上、相互の理解は必要不可欠じゃ」
「敵意が無いなら争う必要もないし、楽しくやろう・・・という事ですか」
「そういう事じゃ。 魔物と人が短時間に友好的になり過ぎると性別が偏る問題があるようじゃが・・・ジパングのように古くから魔物と付き合いのある前例がある以上、それほど危険視する必要はないじゃろ。 問題が起きるようなら魔王と相談すれば良い」
「人間の場合、人間からインキュバスになるので、人間の歴史に終止符が打たれるのではと危惧する輩もいるようですが・・・」

 かくいう、自分もインキュバスになる事には色々抵抗があったりする。イルの事は好きだし、困らせるつもりもない。けれども、感覚としてインキュバスになる事に抵抗があるのだ。イルもそのところは理解してくれている。

「まぁ、分からなくもないがの・・・ しかし、人間と魔物では寿命が違い過ぎる。 人魚の血を使って寿命を延ばしても、やはり人魚達の負担が大きいからの。 より長く共にありたいと思うならば、譲ってもらわなければならない一線じゃ。 もちろん、人間の歴史を軽んずるつもりはない。 儂らの中にも、人間と争っていたという過去を持っている以上、素直に人間を認められぬ者もいるのじゃよ」
「・・・」

 歴史を持っているのは、何も人間だけではない。
 人には人の歴史があるように、魔物には魔物の歴史がある。魔王が代替わりして友好的になった地域によっては貴重な歴史的資料が発見されたものの、先代魔王の時代の遺物であり人間と魔物の間の国民感情に悪影響を与えかねないとして途方に暮れているという話がある。
 “今の人間(魔物)にどうしようもない事だ”と主張する事は、たとえ事実であっても不可能であるし、仮に認めたとしても理性ではなく感情として納得がいかない問題だろう。

「まぁ、ヌシらが人間を辞めてインキュバスになる事は感覚的に、“転校する時の新しいクラスへの不安”みたいなものじゃ。 慣れればなんとでもなるもんじゃよ」
「おい、ワード一枚分のシリアスムードを返せ」
「何を言っておる、これ以上は作者の気力がもたんそうじゃ。 伏線を伏せたからさっさと、このシリアス雰囲気をなんとかしたいそうじゃ。」
「おい、今までで一回でも伏線あったかよ」
「なにを言うておる!!! 行き当たりばったりで作っておる小説にそんな上等なものなどあるはずなかろう!!! だいたい、当初はシリアスな話の予定だったものの、一話目の半分も行かない内に精神的に辛くなって止めたのじゃ!!!」
「メチャクチャじゃないか!!!」
「当たり前じゃろ、あのロリコンは“キャラ設定集すら作らず”にシリアス作ろうなどと悪ふざけも良い所な事を抜かしておったからの・・・ お陰で儂のキャラクターが崩壊しておる。 大体、感想読んでモブキャラをサブキャラに格上げしおったしの・・・ 最
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