「それで・・・遅刻した訳じゃな・・・」
ニヤニヤとバフォメットは笑いながら、正座している俺をみている。
「夜の営みを延々朝まで続けて遅刻ねぇ・・・」
「おまけに朝には一緒に洗いっこだって」
「そこで、そのままもう一回なんて・・・ヤラシイ」
「真面目な人だと思ってたのにねぇ・・・」
言いたい放題言っているのは、魔女達だ。ただ、全て事実なので反論できない。
ちなみにイルは隣の部屋で
「これで一人前だね!おめでとう!」
「良い人を捕まえたね!」
「うん、ありがとう」
「イルちゃん、優しいから襲えるかどうかずーっと心配してたんだよ?」
「へへっ、心配かけてごめんね」
「あ〜あ、イルちゃんに先越されちゃうなんて〜
私も早くパートナーを見つけないと・・・」
「大丈夫だよ、僕が見つけられたんだから絶対に見つけられるって」
「これでディアンもサバトに入信してくれるかな♪」
「むぅ、僕そこまで、ちっちゃくないやい!少しはあるもん!」
「でも、Aでしょ?」
「それでも前よりちょっとは大きくなったんだ! ・・・並み以下、だけどさ・・・」
「じゃあ、やっぱり仲間だ!」
「むぅ・・・分かったよ、認めるよぉ・・・」
「でも、イルはディアンに処女をあげちゃったのか・・・イルの処女は私がもらうはずだったのにな・・・」
「うん、それは認めない」
・・・なんだこの扱いの差は?
隣の部屋では目茶苦茶、御祝いムードなんですけど
「それはヌシよ・・・ヌシが腑抜けた男だからじゃよ。一生懸命誘っている幼女をガン無視しておったのだからな。」
「・・・。」
すごく耳が痛いです。
サバトの教えがどーのだとか、幼女の素晴らしさがこーのだとかは置いておいても、イルの事を傷つけていたのだっから、反論する余地はない。
「まったく・・・ワシらは、ずっと無償で動いていたのじゃ
そして、挙げ句の果てに幸せに繋がって大遅刻
仮に老婆心で行動していたとしても、そりゃ、文句の一つでも言ってやりたくなるじゃろ」
まぁ・・・確かに・・・
恩を仇・・・とまでは言わないが不義理な行動をされれば腹が立つのも当たり前だよな
「って、何か裏で手を回していたのかよ!」
「当たり前じゃ! まさか、北の塔への直通魔法陣が本気でメンテナンス中とでも思っておったのか?」
やれやれ、本当にお人好しじゃの、と溜め息をついた。
ま さ か ・ ・ ・
「どこぞの妖精使いのタワケが作った術式不明の魔法陣ならまだしも、北の塔の主たるワシが作った魔法陣じゃぞ? だいたい、バフォメットの中には旅館と妖精の国を直通で繋ぐルートを作った猛者もいるというのに・・・ この程度の距離でちょくちょく検査が必要になる粗末な魔法陣など作れば、バフォメットの名が廃るというものよ」
フン、と自慢気に背を逸らして絶壁とも言える胸を主張した。
イルに人を襲うように仕向けたのはお前か・・・
「クク、なんじゃ?
ヌシは告白のされ方一つで、付き合う付き合わないを決める程、ケツの穴の小さい人間なのかや?」
「いや・・・そういう訳じゃないけどさ・・・」
腹が立ったかと尋ねられれば否だ。
俺はイルの事が好きだったし、イルも俺の事を好いてくれていた。なら、それはそれで結果オーライって言っても良い。でも、襲うんじゃなくて、やっぱり普通に告白して欲しかったのも事実だ。
「ヌシ、意外と乙女じゃな」
「うるさい」
カラカラとバフォメットは笑った。
「しかしの、人と魔物の共存を目指すなら、人の価値観を押し付けるだけじゃなく魔物の価値観も受け入れてもらわなくてはならぬ。
一方的な価値の押し付けるは共存ではなく、隷属じゃ」
「それは・・・分かってる」
王国にいた頃に嫌という程見てきた。正教の教えを押し付けて、魔物と上手く付き合いながらやっていた地方をことごとく破壊した。
医療専門とはいえ、俺はそれに関わっていた。二度と同じ過ちを繰り返さぬように誓い、今まで行動してきた。
共存関係を築くために、俺は、今まで魔物達とそれ以上の関係を築かないように自分を律してきたというのに・・・
「阿呆じゃの、人間とはいつも同じ過ちを犯しおる。相反する種とて、互いに了解しておるのなら何の問題がある?
種族なぞ誰が決めたか分からぬ瑣末な問題なんぞを気にするより、ヌシらの想いを気にした方が有意義じゃ
互いに好いておるのに、一方的に断る方が、よっぽど自分の考えを押し付けておるのではないか?」
でも、と言いかけて、喉から出かけた言葉は何の形にもならなかった。それを言われてもなお、否定する事はイルへの想いを否定する事になるし、イルの好意を断る事になる。俺には、イルから笑顔を奪う事なんてできなかった。
「お人よし、じゃな」
「クロムが、えげ
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