SubStory? エスティー(佐藤 敏夫)の場合

 トントンと扉を叩く音で眼を覚ます。
 「ふぁーい・・・ちょっと待ってくださぁーい」
 布団で眠っていた青年はモゾモゾと身体を起こす。時計を見やるとまだ朝の早い時刻で、何かの冗談かと思って外を見ても、太陽がまだ東の空で輝いている。学生にとって休日というのは惰眠を貪るためにあるのであって、太陽は起きた時には真上にあるものだ。間違っても、朝早く起きて健康的な生活を送るためのものではない。休日という学生の神聖な時間を侵すとは良い度胸じゃないか・・・
 連日課題を終えるために睡眠を削り、昨日は全てのレポートを提出した開放感と連続徹夜による妙なテンションの状態でフェアリー達の“遊び”に乱入した。
 超絶に眠い目を擦り、フェアリー達の遊び疲れた幸せそうな寝顔に何かを感じながら。あちこちとハネた髪を撫で付けて玄関に向かう。
 外に出ると爽やかな空気が俺を迎えた。ただ、最初に目に入ったのは妖精達と紳士(という名の変態)が戯れつつ早朝散歩に勤しんでいる姿だったが・・・

 おい、紳士、こっち見んな。
 敬礼すんじゃない、つーか、誰だよ。
 “妖精の国”に人口が増える事は良いけど、最近何故か無闇に敬礼される事が多くなった。どうやら何かの協会の“責任者”などをやっているらしいのだが、一向に身に覚えがない。もう一人の人格(二重存在?)が何かやっているのだろうか・・・

「ハーピートレイラーでーす・・・って聞いてますか?」
「あ、失礼・・・荷物?・・・印鑑?」
「いえ、印鑑なんか必要ありませんよ!手紙ですから!」

 ハーピートレイラーのヘカテは十中八九の人間が落ちそうな特上の笑みを浮かべたが、眠気が勝る。すみません、寝て良いですか?

「そんな眠そうな目で見ないで下さい!
 一日の計は朝にあり一年の計は元旦にあり、さぁ、喜びを分かち合いましょう!
 今日と言う良き日を一緒に!!!」

 知ってるか、ポストってのはピクシー達が悪戯で蛙を入れてための物じゃないんだぜ?
 寝ぼけた事ばっかり言ってると焼き鳥にして食べてしまうぞ?

「そんなぁ〜・・・いくら“妖精の国”の情報をリークしてくれるエスティーさんでも、そこまでのサービスはできませんよぉ。朝から元気なのは良いですけど、人目というものもありますし・・・
 でも、どうしてもって言うなら・・・仕方ないですねぇ〜
 一回だけですからねぇ、秘密ですよぉ♪」

 バタバタと羽をバタつかせて一人勝手に盛り上がり始めるヘカテを何とか宥める。ハイテンションなのは勝手だが、朝から押し倒されたりしたら死ねる。サッサと手紙と新聞を受け取ってマジで二度寝しよう。

「あ・・・それ、無理だと思いますよ?」
「なんで?」
「私だって、普通は、わざわざ起こしてまで手紙を渡すなんて事しませんよ?
 特別な手紙だから、こうして起こしている訳です」

 ニヤリと笑って、ヘカテは手紙をチラつかせた。
 特別な手紙だとか言って、ガス代の請求とか携帯の請求書とかだったら泣くぞ?
 引き落としだから、内訳が記載されているだけなのに“珍しいから、開けて見せて!”と叩き起こされた時は泣きたくなった。
 睡眠時間を削られた上に、プライベートを覗かれる。おまけに意味が分からないからと携帯をコンコンと説明させておいて、“ふぅん、良く分からない”の一言で済まされた。あの時の睡眠時間をマジで返してくれ。

「だから、謝ってるじゃないですかぁ〜
 あんまりしつこいと女の子に嫌われますよ?」
「ふん、その点は問題ありませんね」
「何その自信!どこから来るの!?
 まさか、実は彼女持ち!?」
「いや・・・そもそも、俺の周りに女子いませんし・・・(遠い目)」
「根本問題!!!」
「大体、居たところで話掛ける勇気もありませんよ(爽やかに)!」
「開き直るな!!!」
「ふふふ、でも、町を歩いていると、たまに話かけられますよ?」
「ま さ か !?」
「知らない爺さんと婆さんにですけど」
「単なる老人ホイホイ!」
「ついでに、中学の職業訓練の時には俺だけ客に5〜6回商品の場所訊かれました
 他は三時間近く職業訓練やっても、一回も訊かれなかったのに・・・
 他人から見ると人畜無害に見えるそうです」
「な、なんだって!!ロリコンなのに!?」
「“ロリコン”じゃない、ただの“可愛いもの好き”だ!!!
 ・・・でかい声出して、ゴメン」
「まぁ、それは良いよ(どうせ、ロリコンだし)。
 あれでしょ? 元の世界では汎用キャラか何かなんでしょ?」
「“ツンデレ”扱いされるから顔なしキャラじゃないって信じてたのに・・・」
「そんな称号まで!?」
「ありますよ?
 後は、お酒が飲めないから、全員飲み潰れている時にやる事なくて台所を片付けていたら、ついた仇名が“妖精さん”」
「フェアリー送ら
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