そんなこんなで、今晩はここに宿泊する事にする。隣の部屋がVIP使用中(馴レーション様)などと書いてあったが、突っ込んだら負けかなと思っている。ごゆっくり、とだけ言い残してエスティーは下がった。
荷物を降ろし、一息入れる。
そろそろ日が沈むのか、東の空は群青色に染まり始めていた。カーテンを閉め、ランプを点けて、明日の予定はどうしようかと思案する。忙しい忙しいと感じ、どこかで休日が欲しいと思っていても、いざ突然休日が与えられると予定が埋まらない。
予定が埋まらないから休日なのだが、職業病なのかポッカリと空いてしまった予定というのは、どうにも落ち着かないものだ。
その時、コツコツと誰かが扉のドアを叩いた。
こんな夜分に誰だろうと思っていると、再び誰かがドアを叩いた。
(開けてみれば分かるか・・・)
カチャリとドアを開けると、五匹のフェアリー達が転がり込んできた。
「「「「「お兄さん遊ぼ!」」」」」
声を揃えて、少女達は言った。手にはトランプやらチェスやら絵本やらを持っていて、自分の持って来た道具で遊ぼうとワイワイと主張している。
「ねぇ、大富豪やろうよぉ〜」
「駄目だよ、スピカは自分の都合の良いように勝手にルール作るじゃん」
「だって、ジョーカーはスペードの3で返せるんだよぉ〜?」
「ダメダメ、Jバックとか聞いた事ないもん!
それより、ボクとチェスやってくれるよね?ボク、チェス強いんだよ?
リーフェにだって勝てるんだ!」
「テイルにもマスターにも勝てないくせに、強いなんて言っちゃ駄目でしょ?」
「あ、あれは調子が悪かっただけだもん!」
「Jバックはあるもん・・・」
「へぇ〜、この前なんて、待った三回して勝てなくて泣きそうになってたのは誰?」
「んぐぅ・・・」
「それにチェスだったら、できるのは二人だけでしょ?
他のみんなの事も考えなきゃ。まったく・・・フェアは周りの事も考えなきゃ
やっぱり、ツイスターゲームだよね?」
「だから、ツイスターゲームは無理だって・・・体格差がありすぎるもん」
「あら、それなら魔法で身体の大きさを揃えれば良いでしょ?」
「リーフェは魔法できるの?
この前、アリスちゃんの家に入る時に間違って窓ガラス割ったじゃん
慌てて、マスターがアクリル板を嵌めてたけど・・・本当は、まだ直してないんでしょ?」
「そこは・・・失敗しないように・・・頑張るもん」
「八切り返しはローカルじゃないもん・・・」
「ね、だから、麻雀やろうよ!森の館のバフォメット様から借りて来たんだよ?」
「それでも良いけど・・・罰ゲームは無しだよぉ、シィル」
「なに言ってるのテリエラ?面白いじゃん、罰ゲーム
それに、正式な麻雀は点数分の血や精を抜くんだよ?」
「そんなの全然麻雀じゃないよぉ・・・
だったら、絵本の方が良い〜」
「一発は実はローカル役なんだよ・・・知ってた?」
俺の意見を全く聞かない内に盛り上がり、そして勝手にあちこちでいらない火花を散らし始めるフェアリー達を見て、どうしたものかと頭を掻く。商売相手の人間でも議論が熱くるとこんな感じにはなるが、フェアリー達の場合は感情で動いているので説得なんてできやしない。どうして落ち着かせたものかと考えていると、更に一匹のフェアリーが飛び込んできた。テイルだ。
「こら〜、ラプラさんが困ってるじゃない
こういう時は、お客さんの意見も聞かないと駄目でしょ」
腕を組みホバリングをしながら、テイルはグルリと五匹のフェアリーを見渡した。多分、お姉さん格なのだろう、ピタリと話を止めてテイルを見上げた。フェアリー達は、互いに顔を見合わせ、それから俺の方を見てそれぞれの玩具を掲げた。
「大富豪が良いよね?」
「いや、ボクとチェスでしょ?」
「ツイスターゲームしようよ!」
「もちろん、麻雀だよね?」
「絵本読んでぇ〜」
どれを選ぶか迷いテイルの方を見るとテ、イルはちょっとだけ苦笑を浮かべて、「もし、迷惑じゃなきゃね」とだけ付け加えた。なんとなく遊んで欲しそうな仕草をしていたし、テイルには助けてもらった礼もしたい。どうせ暇を持て余していたところだ。遊びに付き合うぐらい訳もない。
もう一度、場を見渡す。
大富豪はローカルルールが多すぎるて揉める気がするし、チェスは二人じゃないとできない。ツイスターゲームは、体格差がありすぎる・・・っていうか、ラミアでもないのにどうやって、ツイストするんだ?いずれにしろ、ツイスターゲームは本来の魔物的な意味で危ないから却下だ。以前、エキドナに固められてマジで落とされた。麻雀だけなら良いけど、罰ゲームってのがなぁ・・・
子供相手だから、エスカレートするだろうし・・・
「じゃあ、絵本にしよう」
答えると、テリエルと呼ばれたフェ
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