炎という名の情熱の先に...

「よしっ 行くぞッ」
「おうッ」
私たちは標的めがけて走り出した。
標的はどうやらこちらに気付いたようで巨大な体をこちらに向けた。
「打ち合わせ通りに」
「了解」
私は標的の目の前に飛び出して大きな角の周りを回って気を引く。大きな1つの目がこちらの動きを追うが、棍棒による遅いながらも強力な攻撃は全て外れ地を穿った。その間にも相棒はコイツの背後にまわって術式の準備を終えた。後は詠唱を残すのみ。私は打ち合わせ通りに巨人の目の前で爆発を幾度も起こす。巨人は今から何が起こるとも知らず鬱陶しそうに私を追い払おうとする。しかしその重鈍な攻撃は一向に当たらず地に大穴を空けていく。そしてとうとう詠唱が完了した。相棒がこちらに合図を送ってくる。「こちらを向かせろ」という合図だ。私は爆発を起こしながら横を回った。予想通りその愚鈍な化け物はこちらを追ってくる。そして巨人はやっと2人目の敵を見つけるのだ。自らの身長ほどもある大きな大剣を構えた私の相棒を。
「行くぞ キュクロプスよッ ストライキングッ」
おそらくこの化け物には理解できないであろう言葉を言い放つと、相棒は大剣を振りかぶり大きく跳んでキュクロプスの脳天をかち割った...



サイクロプスの亜種、キュクロプスの退治報告をギルドに届け出た私たちは酒場で討伐祝いをしていた。
「大成功だったな!相棒!」
「そうだな...討伐だったからな。捕獲だと...いや、ありえないか」
「見事だったぞ!まさか真っ二つとはな!貴様にしては豪快じゃないか」
「まぁ...な。キュクロプスは再生能力が高い。ああやって真二つにして断面を焼けばさすがに再生できないだろうと思ってな
 念には念を入れて頭部は完全に炭化させたが...」
「なるほど...たしかに再生能力のある魔物の拷問にはそういう方法を用いると聞いたことがある」
「拷問...ね」
私のボケは軽くスルーされ、相棒は涼しげな表情で酒をあおった。
「あのな...せっかく私がボケてやったのに、それはなんだ!」
「ん?ボケだったのか?てっきり本気かと...」
私はコイツにどんな目で見られているんだろうか...
「さて...そろそろ寝るかな。お前さんはどうする?」
「...私はもう少し。」
「そうか。明日は買出しに行って昼には出発する予定だ」
「ずいぶんと早く出るんだな」
「あぁ。ここにはキュクロプス討伐のために来ただけだ。他に用はない」
「そうか...分かった」
私にそう告げると相棒は酒場を出て行った。
私は残っていたアルコール度数99%の酒を飲み干し、椅子の背にもたれる。
思えば相棒と出会った頃はたまにしか酒盛りが出来なかった。
あのころは私も彼も未熟で、ウサギ一匹狩るのでさえままならなかったな...
それが今やどうだ?
二人の力を合わせれば見上げるような大きさの魔物を仕留められるようになったのだ。
彼と私は当時よりも遥かに成長したのだ。


だからこそ...気付いて欲しい。
私のこの想いを...



...何を乙女ぶっているんだ?
所詮私は彼の「相棒」でしかない。
そんなことを今言えば彼との関係は間違いなく悪くなる。
いや、場合によってはコンビ解散とかもあるかもしれない...


気がつくと視界がぼやけていた。
...私らしくもない。
だけど、酒を飲むといつも弱気になってしまうのは何故だろう?
私も...そろそろ休むとしよう。





翌朝、2人は必要な道具や食料を買い揃えるために市場へと向かった。
寂れた通りを抜けると辺りは急に喧騒に包まれ、人があふれるほどにいた。
けれども彼を追っていくのはそれほど難しいことではなかった。
私の外見のせいか私の周囲だけぽっかりと人がいない。
こういう時、この体は楽だなぁと思う。
まず、彼が向かったのは雑貨屋だった。
彼が必要なものを購入している間、ざっと品物を見てみる。
ペンと羊皮紙、皿にフォークやナイフ、人形にネックレス。
普通は女性ならアクセサリに惹かれるのだろうが、あいにく私はそうじゃない。
つけていても邪魔になるだけだ。特に今は。
だから彼が用を終えると私は未練なくそこを後にした。

次に向かったのは魔具屋だ。俗に魔法屋とも言う。
最近ではめっきり見かけなくなっていたせいか、それは町の裏通りにあった。
彼が訪れると店主は諸手をすり合わせて交渉を始めた。
店に陳列されているものは傍から見れば意味不明なものばかりだ。
複雑に絡んだ金属棒、ミミズが這ったような字で書かれたスクロール、
ブクブクと泡だつ半透明の液体、目玉の瓶詰め。
魔法はある程度知っているつもりの私でもよく分からないものが多々ある。
そもそも精霊である(正確にはだった)私は魔具を必要としない。
それらがなくとも発動が可能だ。
あれらは魔力や制御が脆弱な人間が
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