Empty 

「こらっ シグ!また遅刻か!」
「ひぃっ!? スイマセン師匠ッ」

早朝早々俺は叱られてしまった。
それもそのはず、約束の時間に1時間も遅れてしまったんだから。
はぁ...憂鬱だ。

「全く...よいか?土地師というものはだな...ブツブツ」

また始まった。
師匠お得意の延々説教。
こぉれがまた長いんだ...ざっと2時間ってとこかな。
ちなみに土地師というのはこの地特有の仕事だ。
何でも山の形を見ただけで何が埋まってる、とか、
森の様子を見ただけでどこに何が生息しているか、とかが分かるんだと。
なんで伝聞調かというとまさにそのとおりだから。
親から何故か知らないけど無理やりこのヘンクツじじいのところへ弟子入りさせられて、毎日良く分からない修行ばかりやらされている。
例えば...そうだな。
川に連れて行かれて、
「その流れをその身に感じるのだっ!」
とかほざいて俺を川に突き落とし、その上あがってこれないように足蹴にしたり、
空を見て師匠が懸命に指差してるものを見つけようとしたけど見つけられず、
見つかるまで食事を抜きにされたり...
まぁ 何の才能も無い俺がそんなものを見つけられるはずもなく、
干からびて転がっているところを偶然通りかかった旅人に助けられたりしたんだけども。
そのときは必死で気付かなかったんだけどなんで土地師が空を見あげにゃならんのか。
結局のところ、そんな無茶な修行で身に付いたのはゴキブリ並みの生命力といったところか。
それだけは何の才能が無くても勝手に身に付いた。
別に身に着けたかったわけじゃないけど...

ゴッ

「こらっ 聞いておるのか!?」
「あ〜 スイマセン」

師匠の愛の鉄槌は俺には効かない。
なぜならすでに数百は受けているからな。
最初の頃は悶絶して床を転げ回るほどの痛みが刺さったけど、
今じゃハエが止まったかな程度にしか感じない。
喜ぶべきか、悲しむべきか。

「全く...もういい。それより修行だ。今日は新しいのをおもいt...
 新しいのをするぞ」

今すさまじく聞き捨てならないセリフが聞こえた気がした。
ま、きっと空耳だろ。

「さて、今日はここから1日歩いたところにある岩場にドワーフの集落があるんじゃが...」

もう嫌な予感しかしない。
師匠が魔物の名前を出した時点でもう危ない。
アマゾネスの旅人を襲えだの、リザードマンと一騎打ちして来いだの、
ケセランパサランを探して来いだの、マタンゴを一体捕獲して来いだの...
何一つ成功した試しがない。
大方殴りこみといったところかな?今回は。

「そこにあるドワーフの宝を盗み出してきて欲しい」

ほぉらやっぱr...今犯罪を犯せと宣告されなかったか?

「その宝というのは幻に包まれておってな。
 ある者は超レアな鉱物じゃと言い、ある者は光り輝く巨大な宝石じゃと言う。どうじゃ?驚いたじゃろう?」
「いや、むしろあんたが『超』なんて若いセリフを発した時点で驚いたけど」
「そうじゃろうそうじゃろう」

ダメだ。完全に自分の世界に入ってしまっている。
それで?なんだ...その...ドワーフの集落に突撃して宝を盗み出せと。
とうとう犯罪行為にまで手を染めることになるとは...

ちなみに俺に選択肢は、ない。
修行を拒否すれば魔物のエサにされるのがオチだ。
逃げ出そうにも俺は記憶力が悪いから元々住んでた家なんて覚えてないし、
どこにあるかさえ分からん。
道を聞こうにもどうやって話しかければいいかわかんないし、
魔物に襲われれば食われてしまうだろう。
言っておくが戦闘能力すらない。
なんで今まで生きてこれたのか不思議なくらいだ。
で? 俺はヘンクツじじいに尋ねた。

「武器は?」
「ふふん 聞いて驚くなかれ...これじゃ!」
「フツウのちぇーん〜」

どこかの青い狸まがいのセリフと共にクソじじいが取り出したのは、
先っちょに変なものがついた普通のチェーンだった。
いや、どう見ても普通のチェーンだ。
ちょっと錆びかけてて変色しかけてはいるが...

「で?」
「これはフツウという細工師の最高傑作でな...
 振って良し!縛って良し!引っ掛けて良し!という優れものなのだ!
 作られたのは今から300年ほど前で...」

またお得意の妄想話が始まった。
このハゲじじいは見た感じ明らかに普通のものを瞬く間に勇者の武器に仕立て上げるスキルを持つ。
いらねーよそんなスキル。
...とりあえずもらっておこう。
武器の当てはあるんだ。一応。

ヘタレじじいの話を適当に聞き流して昼が過ぎ、とうに冷えた飯をかっこんで向かった先は唯一の知り合いがいる洞穴。
一本道なんだがやや体力のいる構造になっている。
こういうときにゴキブリ並みの生命力が役に立つんだ。
今回は落下1回、切り傷
[3]次へ
ページ移動[1 2 3 4 5 6]
[7]TOP
[0]投票 [*]感想
まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33