ある日の親魔物の町ジラードのギルドの集会所の酒場。
「う〜ん・・・」
カウンターで依頼の報告書を読んで難しい顔をしているのはこの酒場の店主にしてギルドのマスター、エキドナのイルハだ。
「また失敗の報告ですか?」
そう言って声をかけたのは紅茶を持った線の細い青年。
「そうなのよ、オーイス・・・」
そう言ってため息をつくイルハにオーイスは持っていた紅茶を差し出した。
「これでも飲んで気分を落ち着けてください。」
「ありがと。」
「いえ、気にしないで。」
オーイスはこのギルドでイルハの補佐として最近雇われた男だ。
戦闘関係は全く駄目だが、雑用などは驚くほど良くこなすので早くもイルハから信任されていた。
「でも、この依頼、あんまり長く放置しておくわけにもいかないわね・・・」
イルハが再び考え込んだ時だった。
「よーう!イルハ居るか?」
「あははー」
威勢のいい声と共に酒場の戸口から大剣を担いだ冒険者風の男が入ってきた。
頭にはケセランパサランが乗っている。
「あら、エムル、ラフィいらっしゃい。」
エムルと呼ばれた男はそのままイルハとオーイスの前のカウンター席に座った。
ラフィと呼ばれたケセランパサランはエムルの頭に乗ったままだ。
「はははっ、辛気臭い顔をしてるじゃないか!!
こっちの依頼は終わったぞ。」
そう言ってエムルは一枚の紙を渡した。
オーイスがそれを取って確認する。
「え〜っと・・・はい確かに依頼完了です。
エムルさんお疲れ様でした。」
「オーイスだいぶ事務仕事が板についてきたじゃないか。」
「わはー、オーイスすごいー」
「そんな・・・俺なんてこれしか取り得がないですから・・・」
横から三人のやり取りを見ていたイルハはふと何かを思いついた表情をした。
「ねぇ、エムル。
帰ってきて早々で悪いんだけど新しい依頼を受けてくれない?」
「新しい依頼?」
「まさか、イルハさん、あの依頼を・・・!」
オーイスは唐突なイルハの発言に驚いたが、
「ねーいらいってなにー?」
「面白そうだな!
話してみてくれ。」
エムルとラフィにこう言われて説明を始めた。
「数週間前から近くの森で奇妙な事件が起きてるんです。」
「奇妙?」
「森に入った人が老若男女問わず手当たり次第に襲われているんです。」
「確かに妙だな・・・」
「さらにおかしなことに、襲われた人は気絶させられるだけで何も取られていないんです。」
「それだけじゃないのよ。」
横からイルハが口を挟んだ。
「被害が増えてきて、自警団からギルドに調査の依頼が来たのよ。
で昨日までに何人かが調査に向かったけどみんなやられちゃって・・・」
「殺されたのか?」
イルハは首を横に振った。
「違うわ、みんな戻ってきたの。」
「もし、犯人が魔物だったら連れて行かれてるはずです。
今のところ人間の仕業か、魔物の仕業かも分からないんです・・・」
「色々謎が多くて自警団も私達も困っているのよ・・・
受けてくれるかしら?」
「う〜ん・・・」
エムルは考え込んでしまった。
その時、
「あははー、そのはんにん、つよいー?」
ラフィが突然口を開いた。
「ラフィちゃん・・・遊びじゃないんだから・・・!」
静止しようとしたオーイスをイルハは手で抑え、
「そうね〜、たくさんギルドのメンバーを倒してるから強いと思うわよ。」
と笑顔でいった。
「わはー、エムルとどっちがつよいー?」
「さあ、分からないわね〜。
勝負したら分かるかも。」
「勝負ー勝負ー!」
その言葉にエムルがピクッと動いた。
「お、おい何をいって・・・!?」
「だってね〜♪」
「しょうぶーしょうぶー♪」
二人の態度を見たエムルは一瞬沈黙し、そして笑い出した。
「はーーっはっはっはっ!
負けたよ。
こいつがその気ならやってやる。
いいぞ、ラフィ!
その犯人と勝負してやる!」
「わはー、わはー♪」
「受けてくれてありがとう♪」
「で、場所は何処なんだ?」
「ああ、それならオーイスに道案内をさせるわ。」
その言葉に驚愕するオーイス。
「イ、イルハさん、何言ってるんで・・・」
「いいじゃない。
依頼に同行して内容を見るのも一つの経験よ。」
「で、でも危険じゃ・・・」
「エムルは強いから大丈夫よ。
ねぇ、エムル。」
「ふむ、多少きつくなりそうだが・・・まあいいだろう、任せてくれ!
うはははっ!」
「あははー」
「ちょっと、ちょっと、俺の意見はーー!」
「エムルの言うことはちゃんと聞くのよ。」
イルハの声を聞きながらオーイスは強引にエムルに引っ張っていかれた。
その夜、月明かりの下、オーイスの案内でエムルとラフィは森に来ていた。
「この辺りのはずなんですけど、だ、大丈夫かな・・・」
「あははー、よるのおさんぽー!」
「ふははっ!
ラフィ、あまりはしゃぎ過ぎるなよ!
・・・
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