「せいっ!せいっ!」
ここは反魔物国家アセトの都市にある訓練所。
そこで一心不乱に剣を振る男がいた。
彼の名はグラゥ。田舎の生まれのアセト軍に所属する騎士を目指す歩兵である。
彼が鍛錬を続けていると遠くで教会の鐘が鳴った。
「いけない!礼拝の時間だ!」
グラゥは道具を片付けて大急ぎで教会に向けて走り出した。
「あら、グラゥ!調子はどう?」
礼拝が終わり教会から出てきた彼に一人のシスターが話しかけた。
彼女の名はセリア。アセトの教会に勤めるシスターだ。
グラゥより少し年上で、田舎から出てきて軍に入りたての彼の世話を良く焼いていた。
「あ、セリアさん。僕はこの通り元気です。」
「ふーん、ちょっとは騎士に近づけた?」
「まぁ、なんとか・・・」
「ふふっ。頑張りなさい。」
その後、グラゥは教会書庫に向かう。
「すいませーん。エセル司書!」
声をかけると本棚の間から眼鏡をかけたシスターが歩いてきた。
「もうそろそろ来ると思ってましたわ。」
「はい、書庫を使わせてもらっていいですか?」
力だけあっても立派な騎士にはなれない。
そう考えているグラゥは度々ここで勉強していた。
「かまいませんわ。ここに頻繁に来る物好きはあなたぐらいでしょうから。」
エセルは再び本棚の方に歩いていった。
残されたグラゥは本棚から数冊の本を引っ張りだして、手近な椅子に座りそれを読み始めた。
ある日、グラゥは疲れが溜まったのか体調を崩した。
「ゲホッ、ゲホッ。」
ベッドに横になっていると扉をノックされた。
「どうぞ、開いてます。」
入ってきたのは果物入りの籠を持ったセリアだった。
「大丈夫、グラゥ?お見舞いに着たわよ。」
「ああ、セリアさん。ありがとうございます。」
セリアはグラゥの側の椅子に腰を下ろし果物をむき始めた。
「セリアさん、優しいなぁ。」
「水臭いこと言わないの。でも気をつけなさいよ。最近、教会内に魔物が入り込んでいるって噂があるわ。襲われないようにしたほうがいいわね。」
「魔物か。もし、その魔物を捕らえられたら、騎士になれるかもしれないなぁ。」
「何言ってるのよ。今あなた病人でしょ。」
セリアは笑って話題を変えた。
「ねぇ、何であなたは騎士になろうって思ったの?」
「えっと、これが理由です。」
そう言うとグラゥは棚から一冊の本を出した。
「なにこれ?絵本?」
「そうです。呼んでみてください。」
セリアはその絵本を読み始める。
「ふむふむ、若者がドラゴンからお姫様を助けて、そのお姫様と結婚し騎士になる話ね・・・ちょっと、もしかして?」
「そうです。その本の騎士に憧れて僕は騎士になる決意をしたんです。僕にとっての目標ですよ。」
胸を張るグラゥに対し唖然とするセリア。
「呆れた・・・でも夢に向かって行動し続けてるグラゥはすごいね。それに引き替え私ときたら・・・」
「セリアさんはどうしてシスターに?」
「特に理由は無いわ。何となくなった感じね。」
「だから、言葉遣いがフランクなんですね。」
「うるさいわよ!」
怒ったセリアはグラゥの頬を抓る。
「痛ててっ・・・!でもセリアさんは優しいですからきっといいシスターになれますよ。」
「よろしい。」
手を離したセリアに、
「あっそうだ、もし僕が騎士になれたらお付き合いしていただけませんか?」
グラゥが唐突に言い出した。
「あら〜、それってプロポーズ?」
「茶化さないでください!セリアさんは僕の理想の人だと思います!駄目ですか?」
「考えておいてあげるわ。でもその前に元気になりなさい。」
そう言ってグラゥの額を小突いて、セリアは出て行った。
「よ〜し、明日から頑張らなくちゃ!」
グラゥは呟きながらベッドに潜り込んだ。
体調が治って数日後、久しぶりに書庫にきたグラゥは書庫の隅に屈む人影を見つけた。
「あれ?セリアさん?」
恐る恐る近づき、声をかけるとセリアは弾かれた様に立ち上がった。
「珍しいですね。セリアさんがここにいるなんて。」
「わ、私だって調べ物くらいするわ。それより明日が試験なんでしょう?私は邪魔しないよう出て行くね。」
セリアはグラゥの横を通り、出口へ向かったが、ふと立ち止まり振り返った。
「ねぇ、騎士になることがグラゥの幸せなのよね?」
「えーっと、そうですね。僕はそのために今まで頑張って来ましたから。」
「そうよね。頑張ってね。」
「?」
首をかしげるグラゥを置いて出て行くセリア。
彼女の姿が見えなくなると、奥からエセルが姿を現した。
「今、誰かと話してませんでした?」
「セリアさんですよ。でも何か様子が変だったような・・・」
そう言いつつグラゥはいつもの様に勉強を始めた。
次の日、いつもの様に家に帰ってきたグラゥ。
だが彼は扉を開けた瞬間固まった。
ドアの前には服の裾から触手を出すセリ
[3]
次へ
ページ移動[1
2 3 4 5]
[7]
TOP[0]
投票 [*]
感想