「みゃー・・・」
・・鳴いても、誰も反応してくれない・・・。
「みゃーお!」
あ、こっち見た!
「ねぇねぇお母さん! 今、猫の声が聞こえた!」
「え? うーん・・気のせいじゃないの?」
「・・そうかなぁ・・・」
・・・・行っちゃった・・・。
あーあ・・・。
誰か、あたしを拾ってくれないかなぁ・・。
#10045;
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それが、昨日の話。
「・・みゃ・・・」
今にも雪が降るんじゃないかというくらいの寒い冬の日。
その一匹の猫は、茂みの中で項垂れ、ため息を付くように鳴く。
亜麻色で綺麗な毛並みのその猫は、誰かを待っているかのように、毎日毎日そこで鳴く。
この猫は、捨て猫だ。
拾われることのなかった、捨て猫。
拾われる前に捨てられてしまった猫だ。
しかし、ただの猫ではない。妖怪や魔物と称されるネコマタだ。
「みゃーお・・・」
ネコマタは、山から降りてきた。
この時から半年以上も前の話。
山育ちの彼女は、気まぐれに街に降りてくると、その時に見た男性を気に入った。猫の姿へと変え、男に近づき、彼女が放つ魔術により、彼は彼女に引き寄せられた。しかし、彼女は捨てられてしまった。
男は、猫アレルギーだった。
それにもかかわらず、自らのせいで、彼は猫である彼女へと寄り、くしゃみが止まらなくなってしまう。ネコマタは、ふおり投げられてしまった。きっと不本意なのだろう。しかし、その事実は変わらない。
男は、再び近づいてきた。でも彼女は男から背を向け、逃げるようにその場を去った。・・放り投げられたことが、拒絶されたことが、彼女の心に深く恐怖を与えてしまった。再びの拒絶を、拒んで、去ったのだ。
それから、彼女は魔術を放つ前に、十分に男と距離を縮めるようになった。
アレルギー、ということは知らないが、またあんな事にならないように。
しかし、その後、彼女が惚れた男は、不幸ながらも皆、猫アレルギーを発症してしまう。
注意していたから再び放り投げられることはなくなったが、それでも辛く感じた。
「・・みー・・・」
彼女は、諦めてしまった。
魔術により男を惹きつけないようにし、影から鳴くだけ。その声で誰から足を止め、拾ってくれることに希望を込めたのだ。
しかしそれもおしまいにしよう。今日、あと少しだけ鳴いて、誰もこちらに来ないようなら・・もう、山に帰ろう・・・。
そう決めて、もう、五時間。誰も、彼女を拾ってくれる人はいない。
(あと少しで、日が完全に落ちる。・・・そろそろ、行こう)
弱々しく、彼女は立ち上がり、茂みから出ると、項垂れながらも歩み、彼女が生まれた山を目指す。
「みゃお・・・」
もしかしたら、まだ鳴けば誰から拾うかな。そんな儚い願いを込め、一鳴きし、キョロキョロと見回してみる。
誰も足を止めている人はいなかった。
再び項垂れて、一歩を踏み出す。
見ていても、すぐに歩み出してしまう人たちばかりだ。
みんな、幸せそうな表情で、帰宅している。
その流れに逆らい、彼女は歩く。
さっきまでいた所から、山まであと半分。彼女は完全に諦めた。その時、
「うおっと!」
彼女は走ってきた男に蹴飛ばされてしまった。
「んみゃーーっ!!」
しかし彼女も猫。見事な着地で、軽傷で済んだ。
「フゥーーーッ!」
蹴飛ばしたの誰だ、と毛を逆立てて、彼女は男を睨みつける。
「すまん! ゴメンな・・・」
男は謝り、彼女を優しく抱き上げる。
「ここ、か・・・、あー。大丈夫、そう? あれ、でもここに違う傷が・・・」
抱き上げた男は、彼女を上向けにし、体を触りまくる。
(ちょッ! やめっ!)
抵抗するが、所詮は猫。そこから飛び降りでもしない限り、逃げるのは難しい。
「お前、野良か? 首輪、ついてないし・・・」
彼女の両脇を持ち、掲げるように抱かれる。
男の視線は彼女の首周りと、彼が見つけた傷。
「・・・お前、うち来るか? 傷の手当もしたいし」
「みゃ!?」
急なその発言に、彼女は耳を疑った。
「うん。そうしよう。今は冬だし、寒いだろ?」
彼女の返事も聞くことなく、彼は彼女を抱いたまま、帰路へとついてしまう。
その判断に、ネコマタ自身は戸惑ってしまっている。
彼の誘いはとても嬉しいが、急だった故に心の準備やもろもろができていない。
「・・・みゅぅ・・・」
でも、上着越しの男の温もりは、とても心地よくて、何も考えられず、幸せな気分に浸りながら、どうにでもなれと身を委ねた。
彼が歩んでいると、もう暗いというのに、塀の近くをホウキで掃いている男性に声をかける。
「ただいま、大家さん」
「お。おかえり、朱(あかい)くん」
彼はボロのアパートに向かい、足を向ける。どうやら
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