「あぁ・・もうっ! しつこいんだから!」
森の木々を避けながら飛び逃げるシルフ。
その後ろを追い、剣を振りかざす男がいる。
どうやらそいつから追われ、逃げているようだ。
「待ちやがれ! 俺と性交して契約しやがれ!!」
「やだって言ってるでしょ!? ホントにしつこい!」
男はただ精のはけ口として、彼女を追い、犯そうとしている。そのついでに精霊使いになれば、仕事も来るし、がっぽり貸せげる。と最低最悪な考えを持って。
この鬼ごっこはここ一時間強続けている。
気まぐれに地上に降り立って、散歩でもしようとしたところ、後ろからこの男に見つかり、そのまま鷲掴みにされそうになった。だがそれの気配を感じて、避けられた。それからしつこく追ってくる。
「もう! こうなったら、風の力で・・!」
風を操り、男をその風圧で遠くまで飛ばしてしまおうと言う作戦。
そうするために、距離を取りながら、後ろ向きに飛ぶ。
「・・きゃっ!」
しかしそのせいで、後ろか見えず、背を木に打ちつけた。それも結構な速さだったから、かなりのダメージを彼女は受けた。
地に落ち、その痛みでうずくまる。
そこに男が来て、剣を振り上げる。これ以上逃げられないよう、大ダメージを負わせる気だ。
彼女はさすがに覚悟した。今の状態ではろくに飛べない。動けたとしても、たいした距離を稼ぐ事は出来ない。もうだめだ、と。
「はっはー!」
しかし、彼女には一筋の光が照らされていた。
――――ガキィン。
男が振り下ろした剣は、何かに当たり、彼女の身には当たらなかった。
「な! 誰だ! テメェは!」
「・・ろくに動けない女の子を襲おうなんて・・頭、どうかしてるんじゃないか?」
恐怖に目を閉じていたシルフが目を開けると、違う青年が間に入り、腕につけている防具のような物で、剣を受けていた。
だがその青年は防具を身につけているものの、武器になる物は身につけていない。
「何ぃ?」
振り下ろされた剣にさらに力を加え、腕を斬ろうとしている。
しかし彼は真剣な顔をして、全く苦に思っていない。それどころか、余裕さえ見えている。
「・・・違うな」
「あぁ!?」
「そういった攻撃を、刀剣なんかで受けた場合は、まぁそれでも押し切る事は出来る。でも、こういった形で受けた場合は、怒濤に降り注ぐ滝が如く叩き付けるのがいいだろう」
それを聞き、男は剣を振り上げる。
「忠告、ありがとよぉ!」
そうして振り上げ、下ろしている間に、彼はシルフに尋ねる。
「お前、シルフだな? 風の力、借りていいか」
「え、えっと・・あの・・・」
「早くしろ。いいのか、ダメなのか!」
青年に答えを急かされ、「もう!」と言いながら、彼に貸す。
足に風を纏わせるように促し、それに従って彼が振り上げた右足に集中させる。
「終わりだぁ!」
「そっちがな」
男が剣を振り下ろし、その剣が地と垂直になったくらいで、青年の蹴りが男の腹に入った。
「言っただろ? 怒濤の滝が如く、と。大振り過ぎだ。馬鹿め」
そう言い、脚を蹴り抜くと、その勢いにシルフの風の力が加算し、男は文字通り、蹴り飛ばされる。
「・・・・・・・すごい・・・」
それが彼女の率直な感想だった。彼に貸した風の力は、彼女が使えるそれのホンの一部に過ぎない。なのにその力を最大限まで引き伸ばした。その蹴りは、まるでレーザーのように見えた。
蹴り上げた足を地に着けると、借りた風の力は消えた。
彼は振り向き、彼女に手を差し出す。しかしその時の表情や雰囲気と、さっきまでの雰囲気が違い、まるで別人。
「大丈夫?」
「あ、ありがと・・・」
「気を付けて」
歩く、歩く、次の街へと歩く。
先程の戦いを終え、彼、リュートは旅を続ける。
リュート。それが、シルフを助けた青年の名。彼は普段は優しい表情で、優男のイメージだが、戦いとなると、引き締まり、冷静沈着となる。彼は袋を担いでおり、そこに武器や財布などを入れている。
武器として用いているのは、籠手(こて)と呼ばれている、手の先から肩までを覆い護る防具。彼が持っているものは肘までを覆うものだが。その他にも、グローブなどを持ち、その袋に入っている。
彼は接近戦、特に拳を使った戦闘を好み、刀剣や銃の類は持っていない。
「もうすぐで町につくかな」
もう目と鼻の先に、というか視界に入っている。
町に足を踏み入れると、彼は早速宿を探し、町の中を見て回る。その行為には、ついでに、どこにどんな店があるか、をチェックする。
「・・ふむ・・ここにしよう」
というかここしかない。
「こんにちは。数日、宿泊したいのですが・・・」
「ん? あいよ。一人と一精霊ね。これ、鍵ね。二階だよ」
「ありがとうございます・・・・ってあれ? 一精霊?」
鍵を受
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