サントゥアリオの森は別名ユニコーンの森とも言われ、古くから聖域として有名な森だ、この森はただ一種の魔物ユニコーンを除いて魔物は存在せず、教会の者でもこの場所に対して手を下すことはできないでいた、この森はその主である純潔の象徴ユニコーンと同様、美しく清らかな場所で、澄んだ湧き水が流れこむ小さな池を中心に、四季それぞれにさまざまな果実を身に付ける樹木が生い茂り、目を楽しませる様々な華が咲き誇っている。
ユニコーンの少女フロルはこの森の守護者であり、森の見回りは彼女の日課だ、川や池の様子、樹木に痛みはないか新しく蕾を身につけた花はあるか、時には自作の水門で川の水の流れを調整や木の選定を行ったり力仕事も行う。
この森はいつか現れる彼女の夫と共に過ごす楽園だ、その日が来るまで彼女はこの森を守るのが彼女の役目であり、使命でもある。
ただ今日の見回りはそれだけでは終わらない、この森に住む野鳥たちの声が騒がしい……侵入者がやって来たのかもしれない、普段この森に住む動物たちを怯えさせてはいけないと持ち歩かない弓を手に彼女は四本の足で侵入者を探すため森の中を駆け抜ける。
侵入者は簡単にみつかった、森の入口付近にうずくまるように座るその男は、額から大量の汗を流し腹部を赤く染めていた、錆びた鉄のよう強烈な血の匂い……彼は怪我をし悶えていたのだ。
「助かっ……た」
侵入者の男は、フロルの姿を見れば安堵の笑みを浮かべ、そのままその場に倒れこんでしまった。
「大変、早く治療をしないと」
その男に対し彼女は慌てて近づけば、彼女は祈るような仕草をし、小さく詠唱をはじめる。額から生えるユニコーンの象徴とも言う小さな角は青白く光り、詠唱が完了すれば、男の身体は優しい青白い光が包みこまれていく……腹部からの出血が止まれば、男の表情からは苦悶が消えていく。
この森の侵入者に対して、場合によっては怪我をさせることも厭わない覚悟で来ていた彼女が、男から何も理由を聞かず治療を行ったのは理由がある……彼からは雌の匂いがしなかったのだ、フロルはその男に近づけば、思わず音を立て、唾液を飲み込んだ。
「こ……ここじゃ治療も満足もできませんし、い、家に連れて行かないと……」
誰に言うわけでもない、ただ自分に言い聞かせるように言いながら、フロルは男の顔を覗き込む。
その男は赤茶けた髪の男で、その顔はまだ少年のような幼さも見える、その顔を覗き込んでいるとフロルの顔は徐々に赤らめていく、電撃が走るような衝撃が彼女の心のなかを駆け抜けて行った。
フロルは彼を背に乗せれば、しっかりと蔦で縛って固定し、己の住処へと連れて行った。その足取りは先程までとは違い、どこか軽やかで嬉しそうであった。
ある彼女の住処はこの森を見渡せる小高い丘にある丸太小屋だ、彼女サイズの大きめの入り口から中に入れば、自分の寝床の隣に設けたベッドに彼を寝かせ、その衣服を脱がせていく。
いつか己の夫の為にと作っておいたその寝床の上で眠る彼、その腹部の怪我は彼女の治癒魔法ですで塞がっていたのだが。
「ほ、他に怪我はないでしょうか……きちんと治療をしないと」
しっかりと筋肉のついた逞しい彼の胸元を見れば再び彼女は唾液を飲み込み、彼のズボンをも脱がしていく、その下着越しに見えた膨らみの大きさから、彼女はさらなるときめきを感じた。
鍛えられた逞しい身体、少年のようなまだあどけなさが残りながらも、その身につけた鎧から兵士だったのかもしれないし旅人なのかもしれない、何より彼からは雌の匂いがしない。
その上この下着の下のものは、下着越しからでもその大きさが分る……フロルの求めていた、いつか出会う夫こそ彼だと彼女は確信した。
だが何故怪我をしていたのだろうか? 彼の怪我は自然とできたものではなく明らかに何者かによって刺されたものだった。だがそんな事は関係ない、彼の敵であるならば彼女によっても敵なのだから、敵意を持って来るならば迎撃するのみだ。
「旦那様……」
彼の外傷が完全に無くなっていることを確認した彼女は、ゆっくりと彼の身体をゆすり起こそうとする。優しい手つきで肩を、そして股間も撫でて。
「ん……」
男が静かに目を開ければ、フロルは柔らかく微笑んだ顔で男を見つめていた。
「君は?」
男はフロルをじっと見つめるように、問いかける。ふと己の負傷を思い出したように腹部を撫でるが怪我は消えていた。
「私はフロル、この森に住むユニコーンです……負傷をしていた旦那様を治療しました、ココは私たちの家です」
そう言ってフロルは男の首に手を回し、顔を近づけ。
「私たちの?」
「ええ、私たちのです、旦那様私が旦那様をお守りします、どんな事があっても裏切りはしませんですから……」
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