3話 救済!白銀の剣、世界最強の白兎!

だだっ広い草原の中。
草の上に転がるは、大小の怪我を負った兵達。
響き渡るは、分厚い鎧に金属を叩きつける鈍くて高い音と、剣が砕ける、やけに澄んだ、鈴の如き高い音。
そこは既に戦場と化していた。
赤い旗を掲げる、親魔物派では無いが教団を恨む反乱軍。
青い旗を掲げるは、狙われる教団軍。
そんな中、将軍たる女性、マリー=マーガレットは。
既に、暗殺者に狙われていた。
「マリー将軍、お覚悟を!」
「くっ…卑怯な!」
そう、戦況は圧倒的に教団の優位な筈であった。
しかし、暗殺者に。
自らの将が狙われる状況では、話は別だ。
「将軍!今参りま…うわぁ!」
「よお、そうはいかねぇよ。」
助けに行った兵の一人が、腹を蹴り飛ばされて倒れる。
しかし、その次の瞬間。
蹴った側の兵士が、砕けた鎧の破片と共に吹き飛んだ。
何故だ、と将軍が目を見開くと同時にさらには暗殺者まで吹き飛んだ。
その重装兵を吹き飛ばす怪力の主は、案外すぐに訪れた。
軍の中で、少年兵を除き一番背が低いマリーよりも背が低い。
しかし、相手が背の低い女性か、少年か、はたまた実は男性なのか…
それらはよく分からなかった。しかし全身を毛皮で覆い隠し腰に軍刀なんか提げている辺り、あまり普通の人間、という感じはしなかった。
「…随分チャチな武装だね。」
「き、君は?」
素性が知れない。
なので、マリーは念のため相手の正体を聞いてみる。
すると、その謎の人物は自らの唇にあたるだろう場所を指でなぞった後、天を指差して言った。
「私は、獣のように生き、魔物のように交わり、兵のように守る…」
高い声。もしかすると、女性なのかもしれない。
「…そんな、通りすがりのメスウサギさ。」
…しかし妙な女だ、とも思った。
たしかに自分を動物に例える人間は良くいる。
ただ、それは大抵豹や獅子などの肉食獣。
兎に例える人間は今まで見たことがない。
「で?君は…何者なんだ?」
思案の最中に質問が飛んで来たため、マリーは慌てて返事をした。
「私は教団の軍の将軍、マリー=マーガレットです。先程のことは感謝します。」
「…へぇ、教団の軍ってのは、どっち側に倒れている奴だい?」
教団の軍、と聞いた途端に目の色を変えるマリー。しかし、それにしても聞き捨てならないことを言った。
「た、倒れている
#8265;あの大軍が、両方
#8265;」
「ああ。どっちかだけを倒すと、虐殺が起こるし、ね。」
言われて将軍は、改めて周りを見渡す。
既に…その場に立っている人間は、そいつと将軍の二人のみだった。
いや、さっきの口ぶりや、こいつだけが立っているという事実。
もしかすると、こいつも人じゃないかもしれない。
「ま、まて、君は…本当に人間なのか
#8265;」
「他者の話はちゃんと聞きたまえ。」
すると、その謎の女は毛皮で出来たマスクを外し、そして同じく毛皮で出来たケープを脱ぎ捨てた。
改めて全体を見渡す。
女は少し幼さの残る顔をしており、まだ学院の高等学部の少女と同じくらいか、とも推測出来た。
かと思えば、しかしその下の体は若々しいながらも艶やかで、引き締まってこそいるものの柔らかそうで、なかなか色気のある体をしていた。
しかし、マリーが思わず凝視してしまったのは別の理由である。
その頭。その頭の上には二つの、兎の耳があった。
コスプレかと思いきや、時々ピクピクと細かく動く。
可愛らしい動きではあるものの、それが余計に不気味ですらあった。
「最初に言った。僕は通りすがりの、メスウサギだと。」
兎。人間。それを組み合わせた生物…
「ま、まさかあなたは…」
怯え出す将軍と、サーベルを鞘ごと腰から外した兎女。
「どうした?僕の正体に気付いたかい、将軍チャン。」
兎女は片手こそぶらりと下にさげているが、もう片方の手を軍刀に当てており、恐らくは抜刀の構えか、と将軍は泡のような唾を飲み込んだ。
「魔物兎、マーチヘア
#8265;」
「ご名答、正解者は…」
兎女が歩みを止めた一瞬の隙。
将軍は懐の拳銃を、彼女に向けて正確に射撃をした。
乾いた音が響く、しかし銃弾は彼女に当たらない。
怯んだ将軍が、最後に見たものは。
「━━━夢の世界に、ご招待差し上げるぜ」
抜刀しないまま軍刀の柄を将軍の腹にめり込ませる、圧倒的すぎる兎の姿だった。












戦場、もとい、既に戦場跡となった場所。
「これで全部かい?…全く、こんなオモチャを待つくらいなら、大人のオモチャがあるだろうに…」
溜息をつきながら、武器を全て『砕いて』ゆく兎女の姿があった。
…あとは兵士か、と顎に手を当てて考えた彼女だったが、
「…あ、そうだ。せっかくの出張だし、あのアンデット達のお土産にしよう。」
結果として、『お前ら男拘束したから好きなの持って帰れ作戦』をする事にした。
これ
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