熱のうら

1

 身体の裡にある熱は次第にその質量を膨らませ、私を緩やかに覚醒へと導いた。ぼやける視界がやがて輪郭確かなものになり、そして次に身体を柔らかなベッドに寝かせられていることに気づく。
 ぼんやりとした頭で、ああ、そうかと一人で納得した。
 幸せな夢を見ていた。身体が火照り、そして甘美な熱を全身で受け止める感覚を生々しいほどに覚えている。ぬくい布団の中で、幸せな人と一緒に寝て見る夢としては、設えたように相応しい夢だった。
 夢?
 ああ――夢じゃない。
 と思う。あれは夢じゃない。ここは自分の部屋で、淫靡な迸りを子宮から溢れるほどに注ぎ込まれたのも、身体の上に重なってきた決して不快でない重みも。全ては夢じゃない。ゆっくりと周囲を見渡せば、生々しい行為の現場はまるで時を止めたように昨夜のままになっていた。私の隣で寝ている人も、もちろんそのままで。
 秘裂から零れて、精液だまりを作っていたあの光景くらいが、シーツに大きな染みとなって姿を変えているくらいだ。昨夜は、互いに精根尽き果てるくらいに貪り合って、求めあって、気づけば倒れ込んで荒い息を吐いて胸を上下させていた。
 へとへとになりながら、相手を見ていると、自然と愛しい気もちが湧き上がって来て微笑んだ。ただそれだけの、結婚初夜。
 唯一のちょっとした不満があるとすれば、彼が私のお腹をふにふにとつまんできたくらいか。気にしてるのに。不満を膣をきゅっと締め付けて教えると、なぜか行為は余計に燃え上がったけれど。
 昨日の情事を思い出し、再び熱が裡側へ走るのを感じるけどぐっと堪えて、とりあえずは朝ごはんを用意しないといけない。きっとまた、美味しいご飯を食べて嬉しそうに甘えてくれる。
 上半身を起こし、伸びをして、あとは翅もぱたぱたと準備運動。鏡が欲しいとも思ったけど、自分の朝ぼらけの半ば眠った顔を見るのは堪えられそうにないと思いとどまった。
 さて、と立ち上がろうとして私の身体はベッドへと引きずり込まれた。しばらくあわあわして犯人の腕の中で慌てふためくと、頭の上にぽんと手を置かれて私の抵抗は終わりを告げる。
 優しく頭を撫でる彼の手の感触は、嫌いにはなれなかった。いや、どうして嫌いになれようか。どれだけ確かめてみたって、どれだけ求めてみたって彼はここにいて微笑んでいる。
 おはようの挨拶もそこそこに、私たちはどちらからともなく唇を重ねた。うっとりと目を閉じて、口の中の感覚に集中する。噎せ返る性の匂いと、唾液の混ざる音で部屋が満たされるのにそう時間はかからなかった。
 キスに集中している間に、彼の指が私の股間へと伸ばされ、淫靡な手つきでまさぐってくる。不意の刺激に身体が震え、一旦唇を離した際に熱のこもった吐息が洩れた。
 私もお返しとばかりに白魚のような指を滑らせ、繊手で敏感な先端をいたずらにくすぐった。
 彼が言うには、私の声には甘さがあるそうだ。含まれている、というわけではなく、砂糖が元来甘いものであるように私の声もそれに起因する甘さがある、と。
 要するに私の声を聞くことは好きということなので、私は彼の愛撫で声を出すのを我慢することはなかった。我慢したくぐもった声というものも、ある種退廃的な風情をそのうらに隠しているのだろうけど。
 彼のもう片方の手は私の秘所ではなく、胸を一心不乱に揉んでいた。その度に微弱な電流を流されているような刺激が伝わってきて、もどかしい。気持ちよくはあるけれど、決してそれだけでは絶頂まで導かれることのないそんな絶妙な、刺激。
 それでも愉しそうに胸を揉んでいる彼を見ると、本能をこれでもかと煽られた。母性本能とかいうやつを。
 一度だけ、結婚する前にそこまで大きいおっぱいがいいの?と聞いてみたことがある。彼の返答はもちろん!だった。それだけなら恥ずかしいけれど嬉しい気もちで満腹だったのに、その言葉に続けて、でもちょっとだけ出てるお腹も好きだぞ!と続けて言い放ったのはひどいと思う。
 あの日は私の中で何かが切れる音がして――おそらく私という根幹を構成して私たらしめている重要な糸というものが――壊れたので、彼のおちんちんを丸一日道端の小石サイズにした。今はもうそんなことしないけど。
 ただ、揉むというのは控えめかもしれない。
 彼の熱心な手つきはどちらかと言えば、揉みしだくだ。指から溢れんばかりの量感と、自在に手に合わせて形を歪ませる自分の胸を見ていると、知らず私もえっちな気分が高まっていく。
 自然と奉仕の手にも力がこもるのも、当然だった。
 先走りの汁をたらす先端からそれを掬い、亀頭にぬらぬらと塗り付ける。強すぎず弱すぎずを心掛けながら、彼の逞しいペニスを扱き上げるとさらに先走りは洩れ出てくる。早くこの透明な色よりも、真っ白な、全てを染めてしまうくらいに濃い白
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