子供が仲良く並んで行進するみてえに連行される義賊も、なかなか滑稽な絵だが、こうして大人しくお縄についているのも負けず劣らず滑稽な絵になると、我ながら思っちまう。三十六計逃げるに如かずを実行しておきながら、時間がたって油断していたらこのザマだ。薄暗い洞窟は予想通り、座り心地がいいはずがなく、硬い地面に俺は座り込んでいるが、尻を刺すように食い込んでくる細かい地面の突起が不愉快だった。
文句を言える立場じゃないってのは、理解してるつもりだが、流石にこれはここから先、長時間ここにいることになるだろう展開を考えると、愚痴りたい気持ちになる。
なんせ、座り心地が悪いだけじゃなくこう薄暗いと気分まで滅入っちまう。真っ暗闇とは違う、どこかうっすらと闇が払われているような暗さ。
「なあ、せめて干し草かなにかを敷いちゃあくれねえか?このままじゃ尻が鬱血しちまいそうなんだが」
「知るか、人の物を勝手に盗った罰だ。そのままでいろ」
「手厳しいもんだなおい。西方の地の龍ってのはどいつもあんたみたいなのか?」
「どういう意味だ」
「そのまんまだよ。なんか見た目は絶世の美女なのに性格に一難ありっつうか、見た目だけならもう諸手を上げて褒め称えてやりてえくらいなのに性格だけ見ると、どうも損してるって言うか」
「ど、どれも性格か!よくも捕まっている身でそこまで私を罵倒できるものだ!」
「いや罵倒してる気はさらさらないんだがよ、どうも上から目線で話かける魔物っつうのは、ジパングにはいねえからなあ。新鮮さは感じるんだが、どうもこれじゃない感が」
「・・・もういい、お前の話は聞いていても益にならないことは、逃げられたときに十分わかった」
いや、あれはどっちかと言えば逃げるための嘘ばかりだったんで、益が無いのは当たり前なんだが。やはりこいつ、天然か。思い込みとか、やっぱり激しそうな顔だ。返事をするにも、あらぬ誤解を受けないように注意を払いながらする必要がありそうだ。
幸いにも、こういう話し相手はゆきめとの(心が冷えるどころか凍りつきそうな)会話のお陰で慣れている。こいつ、どうも人と話したことはあまり無さそうだし、話し合いとかならこっちに分がありそうだ。
「なあ、えっと、ユノとか言ったっけか?」
「なんだ」
「どうやったら俺を帰してくれるんだ?」
「当然、私の宝を返したら、だ」
いや使っちまったんだが。ほとんどが本当に遊郭へと消えて、残りは俺の隠れ家にあると知ったらこいついったいどうなるんだ。泡でも吹くんじゃねえのか。
「あの時は逃げ口上ながらに、うまく騙されてしまったが、まさか本当に全部売り払ったなんてことはあるまい。さあ隠し場所を吐け、今なら見逃してやろう」
「いや捕まえてる時点で見逃してねえよ」
「つべこべ言わずに吐け」
「やなこった」
吐いたら間違いなく俺の命が危うい。おそらくこれは確定事項だ。「なんだいなんだい、なにを義賊ともあろうものがそんなに怯えてるんだい」なんて言われそうだが、考えてもみろ。ユノの立場からすれば、おそらく長年、こつこつと溜めていた宝物をそこら辺のネズミに盗られたようなもんだ。怒りで髪の毛が逆立つに違いねえ。賭けてもいい。
だから、その怒りをなんとか収まらせつつ、俺にとっても都合のいい方向へと話しを持っていかなきゃならねえ。そうでもしないと今度こそ本当におれのふぐりが吹き飛びそうな気がする。ゆきめに蹴られユノに握りつぶされかけられと、散々な目に遭ってきた俺のふぐりだが、まだ役目を終えるにゃ早い。・・・はずだ。
「自分が置かれている状況がわからないのか?」
「そりゃお互い様だろ?俺が吐かなきゃ場所は永遠に謎だ」
「図に乗るなよ!私の力があれば場所などすぐに!」
「わからねえから俺をかどわかしてんじゃねえか」
「・・・そうだった」
間違いない。こいつは馬鹿だ。
・・・龍ってのはどの種にしても知能は高いって聞いたんだがなあ?これがよく聞く、個体差ってやつなんだろうか。いや、だったら素晴らしいくらいに個体差ってのは激しいもんだ。と、なると、ゆきめが、私を可愛がってくださいな、なんて言うおしとやかな子だった場合もあったってことか。
それも面白そうだが、まあそれは置いといて、だ。
「だろ?だから、これはちょいと儲け話なんだが」
「む、その手には乗らんぞ。どうせ上手いこと言って抜け出す算段だろう」
「いやいや、お前にとってもいい話だと思うぜ?まあまずは聞いてからにしろ」
「聞こう」
変わり身早いなおい。
「よし、いいか、よく聞け」
「いいから話してみろ」
「俺の身体で払うってのはどうだ?」
「・・・」
俺の言葉を聞いたユノは、なんとも味のある表情をしていた。なんというか、戸惑いと照れと、呆れを上手い具合に混
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