トットットットット……
ここは魔王城と呼ばれる場所。
といっても本物ではなくリリムが主の城である。
他にもこういった感じの城は沢山あるのだが今は置いておこう。
その城に遊びに来たリリムがいた。その名はアミチエ。通称アミと呼ばれる。
彼女は極度のシスコンであり、妹の事になると周りが見えなくなるタイプである。
そのシスコン度は新しい妹が産まれる度にわざわざ里帰りをするレベルだ。
今回のお話はそのシスコン王女が妹の城に遊びに来たというものである。
スタ…
おっと、いつのまにかアミチエが扉の前に到着していたようだ。
恐らく、いや、ほぼ間違いなくここが例の妹の部屋なのだろう。
コンコン
??????
「誰じゃ?」
アミチエが扉をノックすると返事が聞こえてきた。
しかし、この声は妹のものではなかった。
だがアミチエは驚いた様子もなく、質問に答える。
アミチエ
「私よ。」
??????
「なんじゃお主か、アミよ。鍵はかかってないから入ってもよいぞ。」
許可が出たのでアミチエは扉を開けて部屋へと入る。(出なくても入ったかもしれないが)
そこにいたのはリリムではなくバフォメットであった。
バフォメットは椅子に座るようにジェスチャーしたのでアミチエは椅子に座った。
続けてバフォメットも向かい側の椅子に座る。
バフォメット
「よくここへ来るのう、そんなに愛しのリエラが恋しいかの?」
リエラ…それはアミチエが会いに来た妹のことである。長くするとリエラ・エルテージ。
当然ながらリリムの一人であり、このバフォメットはお世話役というわけだ。
だから妹とは別の声が部屋から聞こえても驚かなかったのである。
アミチエ
「それもあるけど、あの娘は昔から無茶をする娘だったから放っておけなくて…ね。」
バフォメット
「相変わらずのシスコンじゃのう。」
アミチエ
「それはありがとう。」
シスコン呼ばわりされても動揺どころか誇らしげなのは流石である。
彼女曰く「シスコンの称号はステータスだ!誇らしい事だ!」とのこと。
バフォメット
「ところでアミチエよ、ここにはワシとお主以外は誰もおらん。」
バフォメットは唐突に話題を変えた。
その内容はさきほどの会話とはあまり関係なさそうだが…?
アミチエ
「あら?どうしてなの?」
バフォメット
「みんなには事前に休暇を出しておいたのじゃよ。」
アミチエ
「へ〜、準備がいいじゃない。」
バフォメット
「だからここではリエルの名前で呼んでも大丈夫じゃ、問題ない。」
アミチエ
「リエル…か。その名でリエラのことを呼ぶのはいつ以来かしら?」
リエル…それはリエラ自身が考えた愛称である。
「リエ」ラ・「エル」テージの「」の部分を合体させて作り出した愛称なのだ。
この愛称は親しい者のみに呼ばすことを許す、信頼の証みたいなものである。
なお、知らない者に教えてはならず、許してないのに勝手に呼ばれると泣く。
怒るでもなく号泣する。演技ではなくマジ泣きである。
余談だがこの愛称は両親はもちろん、リリム達も全員ではないが知っている。
アミチエ
「ところで…リエルはどこにいるのかしら?さっきから姿が見えないけれど…」
バフォメット
「ギクッ!」
バフォメットは素人が見てもわかるぐらい体をビクつかせた。
当然それをアミチエが見逃すわけがなく…。
アミチエ
「お世話係ちゃん、リエルはどこにいるのかしら?」
バフォメット
「えっと…それは…」
アミチエ
「…………」
アミチエは無言でバフォメットを睨みつける。
ここだけの話、アミチエは怒ると本当に怖いらしい。
このままでは実力行使されかねないのでバフォメットは白状することにした。
決してアミチエが怖かったのではなく、実力行使されたら面倒だっただけである…多分。
バフォメット
「こことは別の世界へ行ったのじゃ。」
アミチエ
「別の……世界……?」
バフォメット
「うむ。アミチエが見つけた世界とは違う場所へ行ったのじゃ。ワシの開発した魔導機械での。」
それを聞いた瞬間、アミチエの顔色が明らかに変わった。
そしてアミチエは瞬時に椅子を倒しながら立ち上がり、バフォメットに机をはさんで迫った。
アミチエ
「どこへ?どこへいったの!?リエルは!!」
バフォメット
「落ち着くのじゃ!第一アミチエなら妹が危険な目にあっても瞬時にわかるじゃろう!」
冷静さを失ったアミチエを安心させるように説得するが…。
アミチエ
「何かあってからじゃ遅いのよ!ちょっとその魔導機械使わせて!!」
効果はなかったようだ。流石シスコン王女である。
バフォメット
「駄目じゃ!その魔導機械は充魔しないと使えんのじゃ!」
アミチエ
「私の魔力を使えばいいじゃない!!」
バフォメット
「駄目なものは駄目じゃ
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