私が母の胎に宿っていた時にはすでに魔女の一員だった。
母と父がサバトの構成員だったためだろうか?
それとも私自身が魔女であると望んでいるためだろうか?
それはどちらでもあり、どちらでもないのだろう。
要因に望まれ、結果が生まれた。
結果が望み、要因を生み出した。
結果が先か要因が先かそんな”にわとり”と”たまご”みたいな事はどちらでもいい。
どちらにしても『魔女』が望み魔女が孕んだ『魔女』、ありとあらゆるシアワセを配るために生まれた魔女なんだから。
バフォメット様や両親、サバトの仲間達は私の事を真正の魔女と呼ぶ。
街の人……人間達も私の事を真正の魔女と呼ぶ。
前者と後者では呼ばれる意味が似てるけど違う。
サバトの仲間達は畏敬の念で
人間達は恐れを込めて
私自身は何もしないのにどうしてこわがられるんだろ?
私は人間も魔物もそれ以外もみんなみんな大好きなのに。
私は自分の望みに従って大好きなみんながシアワセになれるお願いを聞いているだけなのにな。
私は毎日サバトにある私の部屋から出て夕方と朝に散歩へと出かける。
お友達に挨拶をしながら決まったコースをゆっくりと。
太陽が昇るときと沈む時が一番おともだちと何か悩みを抱えている人を見つけやすい時間だもの。
「おはよう。ヨハンさん」
「あ、あぁ。おはようリードちゃん」
ヨハンさんは近所でパン屋を営んでいる。恐れられている事は分かるけどちゃんと挨拶を返してくれる珍しい人間のおともだちの一人だ。
なにか奥さんとあるようだけど、人間に望まれてもいないのに願いを聞くのは失礼だってバフォメット様が言ってたから挨拶するだけにしている。
「おはよう。ビショップさん」
━━━あぁ、おはよう。いい天気だね。
広場に吊るされた僧侶様はこの街の人たちを常に見ている。時にはついつい手招きをして仲間を増やしたがる危ない人だけど、普段は温厚でゆっくり揺られている大人しい人だ。
「ねぇ、ビショップさん。なんで今日がいい天気なの?」
━━━朝もやで辺りが見えない最高の天気じゃないか。
「そうなの?」
━━━そうだよ。小さな魔女さん。
「おはよう影さん」
………
影さんは恥ずかしがり屋さんなのか何も喋らない。だけど代わりに身振り手振りをしてこっちに挨拶をかえしてくれる。
「影さん、そんなに動きまわって疲れない?」
………
「そっかぁ。それがお仕事なら仕方ないね。あ、もう行くんだ。じゃあね」
影さんは雇い主であるねこさんのそばを離れないように歩調を合わせてついてゆく。それでも挨拶には律儀なのか一度こちらを向いて頭を下げ、またねこさんに向かって走って行った。
「おはよう。蛇さん」
“おう。早いな嬢ちゃん”
街を見下ろせる高台に住む蛇さんは常に何かを探して一日中走り回っている。でも同じ場所をぐるぐる回っていても絶対に見つからないと思うのにな。
「蛇さん、いつも何を探しているの?」
“あ?何を探しているのかを見つける為に探し回ってんだよ”
「もしよければそのお願い聞いてあげるよ?」
“いや、こういうのは自分で見つけなきゃなんねぇんだよ。嬢ちゃんもおっきくなればわかるさ”
「ふーん。そっか」
深入りはしちゃダメっておとうさんもおかあさんも言ってたから聞かない事にしよう。
用はそれだけかいと蛇さんが訪ねてきたから邪魔しちゃってごめんなさいと言うとまた蛇さんは自分の尻尾を追いかけてぐるぐると回りだした。
「おはよう飛魚さん」
「うん。おはよう。リード」
飛魚さんは体を失ってからも跳び続け、ついに水の中を泳ぐように空気の中を飛べるようになったらしい。
確かに私の住む町は海に面してるけど、それでも丘の上まで泳いでくるのは凄いと思う。
「ねぇ、飛魚さん。おとーさんが言ってたんだけど、飛魚って恐い人から逃げる為に跳んでるってホント?」
「本当だよ。それがどうかしたのかい?」
私の周りをぐるぐると回りながら質問してくる。そんな当たり前の事を聞いてどうしたのかちょっと興味をひかれたみたい。普通だったらとっくにもうどこかに泳いで行ってしまうし。
……でもごめんね。そんなに期待されるほど大したことは考えてないんだ。
「いや、なんで飛魚さんはこんなところまで飛んできたのかなーと」
もう体が無いから恐い人は襲ってこないと思うんだけど。
「リード、僕は死から逃げるために跳び続けているんだよ」
飛魚さんがぐるぐる回る事を止め、興味を失ったようにどこかに飛んで行った。
相変わらず落ち着きがないなぁ。それにもう死んでるのに死から逃げる為って……変なの。
骨細工さん、おはよう。
りんごさん、おはよ…
せせらぎさん、おは…
かたかた虫さん、お…
糸が切れた人形さん…
割れた硝子さん、…
…………
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