夜の通り雨が、容赦なく私の頬を濡らす。
雨具は用意してあるが、寒さまでを完全に防ぐ事はできない。
ふと、教団の宣教過程を思う。
中立派の村々に下兵を大量投入し、そこで村人と共存していた魔物を殺し、自らの思想を剣でもって押し付けた。
そして聖戦のためと称し、物資と人員を取り上げる。その物資と人員が別の村を襲った。
正義の名の下、思想を押し付ける戦い。それで幸せになった者は少ない。
教団が犯し続けている罪。私にも降りかかる、その咎無き血。
だからこそ、私は。
枢機卿である私は。
「魔物を拒む教団の者よ、貴様らが騙し続けている無垢なる人達を今すぐ解放しろ!さもなくば、我らが手でこの地を親魔物領とする!」
――このような輩と、剣を交えなければならないのだ。
「クッソ、一難去ってまた一難とはこのことかい!」
「ぼやくなオドアケル。と言うかぼやいていいなら私はお前の3倍はぼやくぞ。」
「・・・・へっ、違ぇねえ!」
私を先頭に、街道を駆けて行く私直卒のシス・フレイム聖騎士団。その数200。
その全員が馬に乗り、疾風のごとく野を駆けた。
我が領内でも粒揃いの精鋭たちだ。
「天使様、あんたは城に残ってて良かったんですぜ!」
「いいえ、わたしも見届けます!」
ラキ様・・・・正直貴女には残ってほしかった。
貴女に傷がつくと、立場的な意味と精神的な意味で私が危うい。
「手紙では、夜明けには我が領地の境に差し掛かるようだ!」
「夜明けか・・・。飛ばせば間に合うわな!くはは!」
夜の街道を私達は駆けた・・・・どこまでも。
朝方、国境の川を渡った軍勢と会敵した。
マンツェリー解放軍の御旗。その軍勢、6000は下らない。
小高い丘の上に陣取った我々は、居並ぶ軍勢から指揮官らしき男とその護衛が前に進み出るのを見た。
私も少数の護衛を連れて、丘を注意深く降りる。
「私はマンツェリー解放軍の第7軍軍団長、バーナード=レオボルタだ!」
「教団枢機卿シアンルドール=ウェルステラです。ここから先は我が領内となります。ただちに引き返してもらいたい。」
純白の鎧に灰色のヒゲ面、何よりもこの将たる風格。
親魔派の軍勢であるマンツェリー解放軍の一個軍団を任せるに足る風格だ。
「魔物を拒む教団の者よ、貴様らが騙し続けている無垢なる人達を今すぐ解放しろ!さもなくば、我らが手でこの地を親魔物領とする!」
「ええ、よーーくわかっておりますとも。」
大方『何のことだ』ととぼけるとでも思ったのだろう。バーナードとやらが呆気に取られる。
「我々の教団は、魔物が共存できる存在になった今の時代も聖戦を呼びかけ、無意味な虐殺を繰り返し、教団の思想を人々に押し付け、戦費や寄付と称して貧しい人々から重税を搾り取り私腹を肥やしている。違うか?」
「なッ・・・・!ぎゃ、逆ギレか・・・!?」
まあ、逆ギレである。
たじろいだ相手に、私はまくし立てた。
「じゃあ貴様らは何だッ!!親魔派の思想を持つのは咎めんが、それを我が領地に押し付けるだとッ!!何世紀も反魔物領として存続し、身も心も教団に寄り添っている彼らから、貴様らは教団を取り上げ自らの思想を押し付けようとする!それのどこが貴様らの嫌いな教団と違う!!言ってみろッ!!」
「そ、そうしたのは教団だろう!それに我々の思想は共存だ、貴様らのような排斥ではない!」
「ああ、そうしたのは教団だ。だが共存?我が領民が魔物を心から拒絶しているのに共存ができると??寝言も寝て言えッ!!」
「わ、私は、共存ができると、信じる!」
『信じる』と来たか。私も信じたい。
だが、現時点でその可能性は限りなくゼロである・・・・領主である私が一番よくわかっているさ。貴様らにわかるまい。
「ほう・・・そうなると自らが信じるがため、教団と同じように自分の思想を無理矢理押し付けるのか。このたわけッ!!」
「たわけとは何だこのわからず屋!ええい、全軍に攻撃開始命令を伝達しろ!!相手はたったの200だ!!」
最後は子供のような捨て台詞を吐いて、バーナードとやらは軍に戻っていった。
私はそれよりも早い手段を用いた。
「なんだ、あの花火は・・・・赤いのが2発・・・・?」
魔法の信号弾だ。遠くからでもよく見えるし、大きな音も鳴る。
赤2発は、「散開攻撃」の合図だ。
「シス・フレイム聖騎士団全軍に伝達、連中を狂犬のように屠殺せよ。理想に狂い現実を省みない馬鹿は死なないと治らんッ!!」
国境の平原に、ときの声が上がった。
200対6000。傍から見れば無謀な数だ。
しかも相手はウェルステラ聖槌軍のような連中ではなく、ちゃんと武装している。
そして親魔派の軍勢だ。武芸に優れた魔物が大勢いるのが特徴で、人間のみの編成より数
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