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「お、おはよう、白水」
体を起こして、あいさつをすれば、英君が真っ赤になりながら返してきた。えへへ、嬉しい!
……ぽひゅー!!!!
私は沸騰している。うおぉん私は魔力発電機だ! じゃなくて!!!
うん、キス、されちゃった。もこもこと私の中で記憶と感触がよみがえる。私は『一緒に添い寝してくれる幼馴染』なんて理想に当てられてぐっすりだったのだけれども。
だけれども。いやー。まさかね。
私は幸せを噛み締めるように、ぎゅっと目を強くつぶった。
キスで目が覚めるなんて眉唾だよ英君! 私はお姫様か何かなの!?
つまるところ、ばっちり起きちゃっていたのだ。うにゃぁっ!!
……英君すごく、その、めちゃくちゃ気持ちよかった、です。初めて、とか、技巧が、とかじゃなくて。その。
ただただまっすぐ私を見てくれて、欲しくてたまらないと私を、見てくれて。それが、何よりも何よりも気持ちよかった。
一回別々の学校に行ったんだよ。普通はそれだけ離れてれば、どこかで太陽のような子を見つけるものだよ、英君。熱い吐息が漏れる。大好き、好き、英君。
ふるふるっと体が震えた。きゅうっと熱が集中する。
そして、気付く。私、今、英君の前。ひ、ひひひ1人で身悶えしてた!?
肩を抱いて悶々としていた私の姿は、おそらく外から見て事後っぽく見えなくもない。
ひゃぁぁっ! 恥ずかしい! 私はばんばんと毛布をばんばんと毛布をばんばんと叩いた。何か何か何か、言わないとっ!
「英君英君、もうちょっと、英君、一緒に、寝よ?」
ごまかすように首を傾げながら私はにこっと笑った。毛布をちらっとめくり、隣の少しへこんだスペースを撫でる。そうこうしている間も私の頬は火照りっぱなしだ。きっと顔はまっかっか。
「ほらほら、空いてるから」
「――!?」
さっきまで気まずそうな顔だった英君の顔に血の気が戻ってくる。いや、ちょっと戻りすぎ?
口をパクパクさせながら顔を真っ赤にさせる英君。あははは! おそろい!
「ば、馬鹿やろっ! お、さな馴染とはいえ、俺は男、だぞ」
私の肩をゆさゆさと揺さぶりながら言って、はっとする英君。そっと手を離すと、そっぽを向いた。少し唇が震えている気がする。
もしかして、多少強引にやっちゃったのを申し訳なく思ってるとか。……うむむむーどうだろう。とりあえず、私は流されてくれなかった英君に頬を膨らませた。
そして、目を逸らしたんだけれども、英君はなんかあたふたしている。むむ、私が気になる?
そんな様子が少し前の私の慌てっぷりに重なって、やり返した感がある。にへへ。そらそらどきどきしろー。私がどきっとした分だけどきどきしてしまえー。
にへらと私は笑う。ほっぺたが溶けたかのように締まらない。幸せ。
「へくしっ」
「ほらほらくしゃみなんてして〜。ほら、こっち来たら暖かいから」
「おまっ!? 寝ぼけて頭の芯までぽけぽけしてやがんのか!」
「こないならこうしてやるー。うりうりー。えへへへ、英君の匂い」
「ばっ! 何やってんだ」
私がうつぶせになって英君の枕に顔を擦り付けると慌てたような声がした。うん、英君の言う通り、私の頭は若干おぴゃっとしてるのかもしれない。でも、そうなってしまうくらい今が幸せだった。
「おりゃっ」
「おびゅ」
両脇に手を差し込まれ、私はお好み焼きみたいにひっくり返された。目と目が合う。
英君は日本人らしく黒色で艶々な目をしている。飲み込まれてしまいそう。息が止まる。笑みも止まる。
私は、その唇に口付けをしようとして、まずは抱きつくために両手を伸ばした。
しかし、その手はすかりと空を切る。英君が少し身を起こしたからだ。私は空気を抱き締めた。
もう一度、と手を伸ばす。
「何してんだ?」
呆れたような顔で英君は私を見る。
……私はキスをしたかった。なーんて、言えるわけがない。私はむっと口を一文字に結んでむくれた。
「起こして」
私はそっと目を閉じる。
1、2、3。聞こえるのは私の跳ねる心臓の音、英君の呼吸。時計の音は聞こえない。私の胸だけが長く、長く、時を刻む。
その間、私は古き良きホラー映画のゾンビのように手を伸ばして待つ。待つ。待っている。待っている。待っている。待っている! 遅い!
あれ、なんか前もこんなこと言ったような。
「遅ぉぉぉ――わぶっ!」
目をかっと開けて叫ぼうとしたらおでこをつんと突かれた。
びっくりして涙目になってしまった私を見て大笑いする英君。文句を言ってやろう、と頬を膨らませて、口から空気を抜いた。なんというか、毒気が抜けた。
――ようやくいつも通りの英君になったような気がして。
まーいつも通りって言っても、何年も前の英君のいつも通りだから、うむむ。当てにならない。でもでも、とにかく、なんか、変な気負いとか負い目みたいな言葉に出来ない何か
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