カーテン越しの柔らかい日差しが顔に当たる。
……朝?
私はもぞもぞとベッドから体を起こした。
そして、ふと昨日何があったかを思い出す。
……。
…………。
ふ、ふふふふふ!
やってやりましたよ!
私はベッドから飛び出して勢いよくカーテンを開けた。
ああ、朝日が気持ちいい!
私は全身で柔らかな日光を味わう。
にやけと尻尾の暴走が止まらない。
ばたばたと忙しなく羽箒のような尻尾が揺れているのが分かる。
それは、もちろん嬉しいから揺れているに決まっている。
ふふ、居候とはいえ、あの人と一つ屋根の下!
迂闊ですね、リュオさん!
びしり、とポーズをとりながら私は声を殺して笑う。
お節介の化身。メイドの鏡。家政婦マスター。そんなキキーモラがただ居候だけをするはずないじゃないですか。
感極まり、ベッドをぼすぼすと叩く。そのまま毛布に顔を埋めて擦り付ける。そして笑う。
きっとこの光景を誰かが見ていたならば一歩引かれているだろう。
自覚はしている。自重はしない。でも、時々自嘲ならするかも。
ふ、ふふふ。
私は唐突にがばりと毛布から顔を上げる。
燃えてきました。
……焼いてやります。
派手にやろうじゃないですか。
さぁ、世話を、焼いてやります。
ふふ、これから毎日世話を焼こうぜぇ、と本能が疼いてやがるのです!
どぅんどぅんやってやろうじゃないですかっ!
にゃはははははっ!
私はいてもたってもいられず部屋を飛び出して厨房に向かった。
まずはリュオさんのために朝ごはんを作りましょうか!私は一陣の風になりながらそう画策していた。
もし咎められても『居候させていただいているので……』とでも言えば問題ないでしょう。どんどん世話を焼いて生活を楽にしてやりますっ!
私は頭に指を当てて厨房の場所を思い出す。昨日あれだけ走り回ったのだ。一応場所は把握している。
ついでに向かいがてら懐中時計で時間を確かめた。
現在、五時。
よし、余程仕事熱心でなければリュオさんは起きていないだろう。
さて、さっさと作って株を上げましょうか。
私は厨房のドアを開けた。
じゅぅ、とんとんとんとん。
フライパンで炒める音と包丁でテンポよく刻む音が小気味良く響く。私は鼻をひくつかせた。いい匂いが厨房に溢れている。
ウルフ属の魔物である私の鼻は美味しい料理になること間違いなし!とその匂いをしっかりと知覚した。
ああ、どんな美味しい料理ができるのでしょう。そう私はわくわくしながらすっとんきょうな声を上げた。
「リュオさんっ、なんで厨房に立ってるんですかっ!」
私が厨房に入った瞬間、目にしたのは料理をしているリュオさんの姿だった。
かなり手際がいい。私でもああはなかなかできないかもしれない。
……私は勢いよくかぶりを振った。それではいけない。それでは私が活躍できないじゃないですかっ!
「なんでって、自炊しないと朝食とれないだろう?今まで独り暮しだったしな」
作業をしながらちらりと一瞬こちらをみるリュオさん。言っていることは正しいのですが……。
「うぅっ。手伝います」
「ああ、いい。いらん。もう出来上がる」
「な!なななんでそんな早いんですか?」
「慣れてるからだな。それに、キキーモラの性質上早起きして世話を焼きそうだったからだ。居候とはいえ、客に押し付けるわけにはいかないしな」
私は床にへたり込んだ。
リュオさん、いくら使用人が嫌いだからって……。
「そして、なんでこんなに料理がうまくなってるんですかぁっ!?」
負け犬の如くそんな捨て台詞を吐きながら食器の準備をしようとした。
だが、残念ながらすでに盛り付け待ちの皿がリュオさんの近くに置いてある。
私はしょぼくれながらダイニングルームに向かった。厨房から直接行けるようになっているとリュオさんが指を差してくれた方に足を向ける。
せめて、テーブルだけでも拭こうと私は考えたが……
あいにく既にテーブルも拭かれていた。
「ちくしょおおぉぉぉぉぅ゛」
私はテーブルに突っ伏し、情けない声を上げた。
◆◇◆◇◆◇
「……美味しいデス、リュオさん」
「なぜ片言なんだ?」
「あはは、ナンデデショウ?ゴチソウサマ、食器、片付けてオキマス」
「いや、いいぞ。丁度俺も食べ終わったし、俺が片付けておく」
「ぎ、」
「ぎ?」
「ぎぶみーわぁーくすっ!!?」
私は泣きたい。まさか、料理スキルが同等だったとは。わざわざジパングや大陸のいたるところに修行しに行った私の立つ瀬がない。
私は悔しくてダイニングを飛び出す。
……でも、オムレツ、本当に美味しかったです。リュオ=サン、とてもとても見事なワザマエ、タツジン。
そう頭の中で呟き、私はぴしゃりと自分の頬を叩いた。いけ
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