俺は自衛団の所に改めて顔を出すわけで彼女たちは個性的なわけで

俺は1人でオリキュレールの街を歩いていた。ついに病院を退院したのだ。
ちなみに1人なのはアルティは俺の退院を見届けた瞬間に近くのアイスクリームの店に扉が爆裂しそうな勢いで走っていったからだ。金の亡者ならぬ甘味の亡者たるアルティについていける気がしないので俺は彼女を置いて歩いている。

俺は街の空気を胸一杯に吸い込む。
ああ、清潔過ぎるところは精神が病んでくるからいけない。俺は今、自由に外を歩ける素晴らしさを全身で感じている。

が目的地は相変わらず自衛団の詰所だ。
ちなみに道ははっきりと覚えているぞ。
トラウマ込みでだがなっ!

・・・。

不意に暗い気持ちがのしかかってきたため、時折足を引きずるようにしながら俺は赤レンガの町並みを進んだ。

法外に強いクロネに全身まんべんなくズタズタにされたあの時から数えてみる。
そうすると、俺はあれから三日間だけ入院をして退院をした。
絶対に医療に詳しい奴や冒険者とか生傷の絶えない奴はおかしい、早すぎる、と言うだろう。
だが勇者のタフさと魔物の魔法技術は予想以上だった。



ご覧の通りまだ包帯だらけだ。



ん?皮肉ったり貶したりしているつもりはないぞ。俺の経験や記憶ではこれだけの傷を負ったらまだ全身ギプスだらけで大変な事になっているはず。
反魔物領や教団の息が掛かりまくった反魔物領、言うなれば教団領ならば治療状態はそんな感じで地面に立ててすらいないだろうからな。全然だめではない。むしろいい。

ランクの高い勇者が受けるような最高クラスの癒術や魔法薬の投与を当たり前のようにポンポンとしやがるからな。

ホント、いくら戦争しても勝てねぇわけだ。

で、まあ、当然それでも包帯だらけということで、実際まだ退院には早く本調子に体が動かないんだけどな。

・・・が、あの病室に戻る気はない。

・・・。

全身ズタボロの時は静かだったのだが、かなり体調がよくなってからが問題だ。
主にサキュバスとかサキュバスとかサキュバスとかサキュバスとかたまにダークプリーストとかダークプリーストが寝込みを襲いにくるなんて安心できるかっ。
あいつら病院をなんだと思ってやがる。

・・・。

というわけだ。
まあ、無理矢理ヤられるなんていう最悪の状態にはなっていないからよしとする。
なぜかアルティが追い払ってくれていたため俺の貞操は保たれていたのだ。

変なところで俺に恩を売りやがってあのネクラマンサーめ。

俺はぶつくさと呟きながらたどり着いた詰所の扉をノックした。

「失礼しますリヴェルです」

グラキエスのシェウィルさんが恐いので丁寧に挨拶をしながら中に入る。

因みにクロネにさん付けをしていないのはお見舞いに来てくれた彼女を一度さん付けで呼んだ時の『私にさん付けはいらないかな?』
との一言からだ。
俺は足りない頭を働かせ、さん付けはいらない、と解釈して今に至る。
それに、俺は人間だからつい見た目で呼び方を決めてしまうフシがあるからな。

俺はそう思いに耽りながら詰所の中に入っていく。

そういえば他の自衛団員はどんな人のだろうか。
ふと、疑問が浮かんだ。確か、クロネが他にもいることを匂わせるような言葉を放っていたはず。
・・・『好戦的な』というステキワード込みで。

はは、なるべく会うのを先回しにしたい。
と俺は苦笑いをした。

「ん?ああっ!?もしかして新入りさん!」

そんな湿気った笑いを吹き飛ばすかのような明るいとした声が聞こえた。

どんっ、と体当たりか何かをくらって俺は真横に吹っ飛んだ。
治りかけにより当社比数倍の痛みに顔をしかめていると俺に当たったのは大きな箱だと気づいた。
がとん、と重厚な宝箱がさっきまで俺のいたあたりに落ちる。『アケテ』と書いてある貼り紙付きで。

俺は息を飲んでその箱を開けーーーる前にポケットに持っていた針金を少し曲げてその鍵穴に差し込んだ。
きっとミミックだ。『ざんね〜ん!ミミックでした!』なんていうテンプレには引っかからないからな。
俺はそうやって針金で鍵を回した。

がちっ。

ぱかっ。

ずばん!

勢いよく開いた宝箱の中からショットガンのように紙吹雪が飛び出す。
窒息しそうになる量の紙吹雪を顔面に受けながら後ろに下がると何かに抱きつかれた。

「ざんね〜ん!トラップでしたっ!」

そいつの声はやけに楽しそうで、これを仕掛けたのだろうと分かった。
しかし、振り返ろうにも羽交い締め。
加えて文句を言おうものなら紙吹雪定食を味わうこととなりそうだ。
俺に抱きつく腕はがっちりと俺を捉えていて脱出は無理そうで、あの箱の紙吹雪はどうなっているのか無尽蔵。

うぶぶぶ。

そろそろ呼吸が辛くなってきた。
なにせ勢いよく紙吹雪が飛んでくるなかで誰かに抱きつかれて固定。窒息するっつー
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