それぞれの戦い……えぇ!?

「ふぅ……だいぶ収まってきたわね」


トルマレア王国の街中にて、どうやら国民の魔物化作戦は功を成したようだ。
女性は殆ど魔物になったし、操られている兵士たちも、魔物化した国民に捕まってエッチなことをされて一人ずつ目を覚ましている。私が作った薬がこんなに活躍するなんて光栄だわ。
……尤も……。


「イェーイ!ローププレイでお仕置きよ!」


フォックス海賊団のフェリス。


「うふふふふ♪お姉さんがたっぷり可愛がってあ・げ・る♪」


デイビー海賊団のリティア。


「掲げる志はすなわち、風林火山!!さぁ、貴様らの中で一番強い兵士を連れて来い!!」


そして、タイガー海賊団の武田菊恵。
突然現れた彼女らの助太刀によって状況がもっと優勢になったのも事実。彼女たち率いる海賊団のメンバーが洗脳されてる兵士たちを抑え、時にはエッチなことで目を覚ませたりして活躍している。
どういった経緯でここまで来たのかは知らないけど、どうやら私たちの味方らしいので、ここは素直に頼った方がよさそうだ。副船長さんとの連絡も取れなくなったし、彼女らの助太刀はありがたい。

「さて……怪我人はいないか見回りに行こうかしら」

船の仲間たち、もしくは国民たちが怪我を負ってないか見回ろうとしたら……。

「む!いたぞ!この女が先導者だ!」
「……え!?」

なんとも運の悪いことに、まだ洗脳が解かれていない兵士に目を付けられてしまった。
しかも……

「おのれ、よくも小癪な真似をしてくれたな!」
「せめて貴様だけでも討ち取ってくれる!」

……ちょっと待ってよ……五人も一気に来るなんて聞いてないわよ。
参ったわね……私は船長さんやオリヴィアちゃんたちとは違って強くないし、武力で兵士を抑えるなんてとても無理。

「……悪いけどお兄さんたち、私はあなたたちに構ってあげれる暇もないの」
「これだけの騒ぎを起こしておいて逃げるつもりか!」

……いや、騒ぎを起こしたのは私一人じゃないのに……。

「さぁ……遊びは終わりだ!覚悟しろ!」


……まずいな……ここは逃げるしか……




「待てぃ!そこまでだ!」
「え?」



この場を凌ぐ方法をあれこれ考えていると、突然どこからか男の人の声が聞こえた。

「だ、誰だ!?どこにいる!?」
「こっちを見たまえ!」
「ん!?」

私と兵士たちは、一斉に声が聞こえる方向へと視線を移した。

「か弱き女性に刃を振るなど、この私が許さん!」

その声の主は……民家の青い屋根の上に仁王立ちして、私たちを見下ろしていた。


「赤き十字のシンボルは、悪を許さぬ正義の証!」


白い生地に、赤い十字のマークを象った覆面。


「たとえ死しても許さぬのは、罪無き人々を苦しめる、悪しき病と非道な心!」


白いスーツ、銀色の手袋とブーツ、そして黒色のベルト。


「人々が健やかに生きれる未来のため、私は戦う!」


更に……マント代わりとして羽織っている、医者の白衣。


「そう……我こそ白銀のドクターヒーロー!!」


その姿は……作り話などに出てくるような、まさに男の子が好きそうな正義のヒーロー。



「その名も……シルバーA(エース)!!只今参上!!」



……そう名乗った男の人は、屋根の上で片足を上げ、ビシッと右手を突き出してポーズを決めた。
……えっと……そもそも……あれ、誰なの?この国の住民じゃなさそうだけど……。

「……な、なんだあれは?」
「さぁ……?」

洗脳されてる兵士たちは、屋根の上のヒーローを見てポカンとしている。いきなり変な人物が現れてどうすればいいのか困惑しているのだろうか。

「……?」

ただ……おかしなことに、私は困惑とは別の感情を抱いた。
これは……デジャヴ?

「さぁ、構えなさい!お前たちの相手は、この私だ!」

と、屋根の上のヒーロー……シルバーAは兵士たちに向かって言い放ち……

「まずは挨拶代わりだ!とぉう!」

なんと、屋根の上から高く跳躍した。
そして空中をグルグルと回転し、そのまま兵士の内の一人に向かって……

「ドクターフライングキック!!」
「ぐぉっ!?」

凄まじい勢いで、跳び蹴りをお見舞いした!

「なっ!?き、貴様!我らに歯向かう気か!?」
「言った筈だ!お前たちの相手は私だとな!」

手早く一人目を倒したシルバーA。私と兵士たちの間に割り込むように着地すると、体勢を立て直してファイティングポーズを取った。

「おのれ……ならば貴様から始末してくれる!」

挑発されたようにそれぞれ剣を構える残りの兵士たち。そして早速、その内の一人が剣を構えながらシルバーAに突撃してきた。

「もらったぁ!」

シルバーAの頭上に振り下ろされる刃。
しかし……


ガシッ!


「なに!?」

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