「ねぇねぇ、あとどれくらいで着くの?」
「もうすぐ着くぞ。十分も掛からない」
「あら、もうそんな近くまで来たのですね」
「出航のペースを何時もより早めに上げてたからな」
出航から五日目……ついにトルマレアに上陸する日が来た。俺、サフィア、ピュラ、そしてシルクはダイニングに集まり、これから向かうシルクの故郷、トルマレアの話に花を咲かせているところだった。
「いよいよ上陸か……トルマレアってどんなところなんだ?」
「自然豊かな国だぞ。特に農産物の育成には力を入れている」
「あら……農産物と言いますと、野菜や果物のことですか?」
「ああ、農作に使用する肥料や土にも徹底的にこだわっている。遠方の国が欲しがるほどの逸品だ」
「ほう、そりゃ興味深い」
「楓さんが喜びそうだね!」
シルク曰く、トルマレアは農作物で有名だとか。ピュラが言った通り、楓がはしゃぎそうな国だな。
「でも……何故ベリアルはトルマレアにいるのでしょうか?」
「それは分からない。以前から何を考えてるか分からない野郎だが、何か企みがあるってのは確かだ」
「同感だな。あんな男が私の国にいると思うと……内心穏やかでいられない」
そう……実は俺たちが向かっているトルマレアにて、俺たちが来るのを待ってる男がいる。
そいつの名はベリアル。かつて俺の故郷、カリバルナの公爵として暗躍していた危険な男だ。
今回、トルマレアに向かうきっかけになったのもベリアルだ。以前奴の口から、近々カリバルナを手中に収めるなんてとんでもない企みを聞いた。勿論、そんな勝手な真似は俺らが許さない。
洗脳によって強制的に部下にされたバルドを助ける他、ベリアルの悪巧みを阻止するためにも、こうしてシルクと共にトルマレアに向かっている訳だ。
「なんにせよ、シルクの国とは言え、呑気に上陸するのはほぼ無理だろうよ。尤も、ベリアルさえ仕留めればいいだけの話だが」
「だが、バルドの洗脳はどうやって解けばいいんだ?」
「それはまだ分からないが……そのことは後で考えようぜ。とりあえずバルドの身柄の確保を優先した方が良いぞ」
「なるほど、確かにな」
全ての根源であるベリアルを何とかすれば、一先ず目的は達成されるだろう。
とは言っても、ベリアルも弱くない。あいつは冥界の雷を自由に扱う能力を持つ。とても一筋縄で敵う相手ではないだろう。苦戦を強いられるのは避けられないが、それでも立ち向かうまでだ。
ガチャッ
「あら、みんな此処に集まってたのね」
と、色々と雑談を交えていたら、突然ダイニングの扉が開いてシャローナが入ってきた。
「あら、シャローナさん。どうかしましたか?」
「ええ、実はちょっと船長さんに用があって」
「え?俺に?」
シャローナは意味ありげな笑みを浮かべた。よく見ると後ろ手に何かを持っている。
……あぁ、そういうことか。
「断る!」
「え、ちょ……まだ何も言ってないじゃない」
「言われなくても分かってる。どうせまた新しく作った薬の実験台になって欲しいんだろ?」
「あら……察しが良いわね」
「お前から他の用事を頼まれた記憶は無いんでな」
「否定できないわ……」
シャローナは苦笑いを浮かべながら、手に持っていた物を俺たちに見せた。薄緑色の液体が入った小さな小瓶だ。
やっぱり……また変な薬を作ったな。しかも俺で試そうとしやがって。その研究癖は一体誰から受け継がれたのやら。
……まぁ、一応どんな薬なのかは聞いておくか。
「……で、今度はどんな薬を作ったんだ?」
「うふふ……これは今までの薬とはちょっと違うわよ」
ろくでもない効能なのは過去共通だろ。
と、心の中で毒づいてやった。
「その名も……一口飲んだだけでおちんちんがビンビンに勃起して、能動的に射精させちゃうお薬!」
「……なんとも説明染みた名前だな」
「ちなみに名前は後でちゃんと考える予定なのよ」
……これはまた……需要があるかどうかさえ微妙な珍品作ったな……。
「えっと……それってつまり、男の人の性器に触れずに精液を出させるお薬ってことですか?」
「そう!中々斬新でしょ?」
サフィアの質問にシャローナは満足そうに頷いた。
……で、早速俺に飲ませようと思った訳か。
「断る!」
「え、いや、だからまだ何も言ってないじゃない」
「話を聞いてれば言われなくても分かるわ!試しにそれを俺に飲ませようって魂胆だろ!」
「まぁ、そうだけど……一回くらい協力してもらっても……」
「その一回が命取りなんだよ。お前が作った薬にはろくな思い出が無い。そもそも、男なら俺以外にもこの船にいるだろ?他をあたってくれ」
「船長さんでないと駄目なのよ」
他の男に頼むように言ったが、シャローナ曰く俺でないと駄目だとか。どういうことだ?
「つまり、どういうこ
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