雷こわい

「なぁ、シルクはバルドを助ける為に外へ出たんだろ?」
「ん?確かにそうだが、何を今更……」
「それってさ、トルマレアから外へ出たのか?」
「いや、正確に言えば、トルマレアを出た後にバルドが攫われたからな」


カラカラカラ……


「へぇ……何処かへ出かける予定だったのか?」
「まぁ間違ってないな。近くの同盟国の国王と面会する予定だったんだ。バルドには私の護衛として付いて来てもらったのだが、航海途中でベリアル一味に遭遇して……後は話した通りだ」
「そうだったのか……」


カラカラカラ……


「ねぇねぇ、次お兄ちゃんの番だよ〜」
「ん?あ、もう回ってきたのか」


アジトの島から出航して早二日目。トルマレア王国へ向かうブラック・モンスター内のダイニングにて、俺、サフィア、ピュラ、そしてシルクの四人はテーブルに集まっていた。


「今ピュラが$10000、私が$6000貰ったところです」
「二人ともペース良いな……」

外では黒色の雲が空を覆っていて、強めの雨が休む間も無く降り注いでいる。見張り番以外の船の仲間たちは既に船内に集まっていた。
こういった雨の日は海の波が荒れる。それを証明するかのように、僅かながらブラック・モンスターの船体が何時もより揺れているのを感じ取れた。
そして今、俺たち四人はちょっとしたボードゲームで遊んでいる。
その名も『ライフゲーム・パイレーツ』……謂わば人生ゲームの海賊バージョン。
雨の所為で外で遊べないピュラが暇を持て余し、それを見かねたサフィアの提案で始めたのがこのゲームだ。


カラカラカラ……


「7か。えっと……『船の一部が破損したので修理代$5000払う』……おいおい、やめてくれよこんなところで……」
「次は私だ」


カラカラカラ……



「4だな。なになに……『海底洞窟でお宝ゲット!$15000貰う』か」
「うわ、マジかよ!逆転された……」
「ふふふ、面白くなってきた」


こんな感じでルーレットを回し、出た目の数字だけ道に沿って進む。これは普通の双六と同じだが、勝利条件はちょっと違う。ゴールに着いた時にどれだけ多くの金(当然だがゲームでしか使えない玩具)を所持しているかで勝敗が決まる。要するに、沢山金を稼いだプレイヤーの勝ちってことだ。
因みにこのゲーム、ゴール以外の全てのマスには蓋が閉められていて内容が分からなくなっている。ルーレットを回してマスに止まり、そこで初めてマスの蓋を開けて内容を見る事が出来る。大海原の旅は予測不能。実際に経験するまで分からないと……そういった製作者の計らいなのだろうか。

現在のところ、俺の所持金は$30000。サフィアは$56000。ピュラは$80000。そしてシルクが$45000。
順位で並び替えると、一位からピュラ、サフィア、シルク、俺といったところか。


「次、私ね〜!」


そして次はピュラの番だ。楽しそうに小さい手でルーレットを回した。
出た目は……9!結構進んだな……ゴールが近くなってきた。

まぁ、このゲームで重要なのは金だし……。

「……お姉ちゃん、これなんて読むの?」
「ん?どれどれ……『犯罪組織のボスの愛人を誑かして$50000貰う』……」

………は?

「…………」
「……犯罪組織……愛人……」
「……ってドロドロ過ぎるだろ!」

……実はこのゲーム、今日初めてやるから詳しく知らなかったが……なんでこんなのが書かれてるんだよ!
誰だよこんなの書いた奴!海賊のイメージが誤解されるだろうが!

「……なぁ、海賊ってこういうこともやるのか?」
「やんねぇよ普通の海賊は!つーか、普通の人生送っててもこんな展開滅多に無いぞ!」
「……ねぇお姉ちゃん、『たぶらかす』ってなぁに?」
「え!?あ、えっと……あ、後で教えますから、今はゲームを楽しみましょう!ね?」
「うん!」

危うくシルクにまで謝った認識を持たれるところだった。
全く……これ人生ゲームっつーより、波乱万丈ゲームじゃないのか?
にしても、これでピュラは$130000か……追い抜くのは厳しいな。

「では私も……」

今度はサフィアの番だ。あまり力を入れず、軽い感じでルーレットを回した。
出た目は……3。あまり大きい数字じゃないが……。

「『二人の愛の結晶が誕生!ご祝儀として各プレイヤーから$5000貰う』……うふふ♪」
「お姉ちゃん、すごーい!これで六人目だよ!」

なんと、他のプレイヤーからお金を徴収するマスに止まった。
ピュラが言った通り、これでサフィアの子供は六人目になる。もはや大家族だな……。

「うふふ♪六人も子供が……♪」
「……なんか、嬉しそうだなサフィア……」

幸せそうな笑顔を浮かべながら、みんなから$5000を受け取るサフィア。
合計$15000も
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