「お〜し、そっちは船に積み込め。ああ、それはいらねぇ。城に置いてけ」
アジト襲撃作戦が終わってから一日後、辺りはもうすっかり暗くなり始めている最中、夕食を食べ終えた俺は元敵のアジトの入り口にて仲間たちの指揮を執っていた。
明日からまた新たな目的地に向けて出発しなければならない。今はその航海に備えて食料や金品をアジトとして使われていた城からかき集めているところでもあった。
そう……次の目的地はトルマレア王国。シルクの故郷でもある、反魔物国家だ。ベリアルとバルドもそこに居る。
昨日のベリアルとの一件にて、シルクがトルマレアの第三王女だって事が明かされた。ついでに、バルドが勇者だって事も……尤も、今では洗脳されてる所為でベリアルの部下に成り下がっているが。
シルクはバルドの救出に失敗。結局、操られたバルドはベリアルと共に此処から去ってしまった。
その所為でシルクは激しく気が沈んでしまい、昨日からずっと部屋に篭りっぱなしだ。まぁ、そうなるのも無理はない。助けたいと思っていた人が手の届く距離に居たのに、結局助ける事が出来なかった。すぐ近くに居ただけに、悔しさもかなり大きいだろう。
それにしても……シルクはバルドを助けたいと思っていたのは本当らしいが、たった一人で出向いたのはどうも疑問に思う。第三とはいえ一応王女なんだし、こう言っちゃあアレだが……王族の権力でも利用すればバルドの捜索も楽だったはず。なのに何故一人で……?
……まぁ、一人で考えていても仕方ない。詳しい話は本人から聞かせてもらおうか。
「ふぅ、ざっとこんなものかな」
「おお、ヘルム、そっちは終わったか?」
「ああ、大体必要なものは運ばせたよ」
城の入り口からヘルムが出てきた。さっきまで城の中で仲間たちの指揮を執っていたけど、どうやら今しがた終わったようだ。
「それにしても……簡単に片付く仕事だと思ってたのに、なんだかとんでもない方向に向いちゃったよね。まさかこんな所でベリアルが現れるなんて……」
「そうだよな……俺としては、もう二度と関わりたくないと思ってたのに」
「僕だってそうさ。でも、カリバルナを守るためには、どうしても行かないと」
「ああ、分かってるさ……」
昨日ベリアルと再会したなんて話したら、流石のヘルムも気が動転していた。ただ、いきなり故郷を牛耳ってた元公爵が出てきたんだ。ヘルムだって俺と同じカリバルナの出身だし、あの革命の日も憶えているから無理も無い。
「あ、そう言えばさ……シルクはどうしたの?昨日から全然姿を見ないけど」
「昨日の一件からすっかり落ち込んじまってな、ずっと部屋に引きこもりっぱなしだよ」
「そうか……大丈夫なの?様子を見に行ってあげたら?」
「そうだな。聞きたい事も色々とあるし」
仲間たちの指揮も一通り終わったし、そろそろシルクの様子を見に行ってもいいだろう。
バルドを助けられなかった気持ちは分かるが、そろそろ気を取り直してくれないとトルマレアまで身が持たない。今度こそバルドを助ける為にも、元気を出してもらわないとな。
「それじゃ、俺は先に行ってる。お前も出航に備えて早めに休んでおけよ」
「ああ、それじゃあ、また明日ね」
と言うわけで、俺はシルクの様子を見に、ブラック・モンスターへと帰っていった。
==========
「よっとぉ……よしよし、こっちも問題ないみたいだな」
ブラック・モンスターの甲板に上り、周りの様子を見渡す。仲間たちはみんなそれぞれ順調に仕事をこなし、明日の出航に備えていた。
「ようキャプテン、お疲れさん」
「おう、オリヴィアか」
すると、なんか変な形をした槍を担いでいるオリヴィアに話しかけられた。
「なんだその変な槍?」
「ああ、アジトの中で見つけてな。折角だから拾うことにしたんだ」
二ヒヒと白い歯を見せて笑いながら槍を見せ付けるオリヴィア。その姿ときたら、まさに大きなカブトムシを捕まえて自慢する少年に見えた。
「おいおい、拾うって……奪うの間違いじゃないか?」
「いいだろ別に。持ち主だっていないんだし」
「……まぁいいか」
厳密に言えば敵のアジトにあったものだから拾うとは言えないが……まぁこの際どうでもいいか。
「あ、そう言えばキャプテン。なんか、見慣れない奴が船にいるんだか……」
「見慣れない奴?」
「ほら、Who that girl?」
「ん?」
オリヴィアはとある方向へと指差した。
その先には……。
「へぇ、じゃあカリバルナまで遥々と此処まで来たのかい?そんなに可愛い顔してるのに、偉いねぇ!」
「あはは……ど、どうも……」
赤い長髪を束ねた褐色肌の女がコリックに絡んでいた。エルフのような長い耳に体の模様……恐らく、あれはアマゾネスって言う
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