「ふはははは!公爵かぁ……懐かしい響きだなぁおい!」
「…………」
余裕をさらけ出し、過去を懐かしむような様子を見せるベリアル。
その高い笑い声は、周囲の人間を威圧させる感じに思えてならなかった。
「ただ、今となっては古い思い出も同然。俺ぁ海原を荒らしまわる海賊よ。お前とは同業者ってことになるな、キッド」
「……一緒にするんじゃねぇよ。アンタ、どうせ昔みたいに、自分より弱い無抵抗の人間でさえ容赦無く襲ってるんだろ?」
「それが海賊ってもんだろ。やってることはお前と大して変わらない」
「俺はアンタとは違う!俺はな、罪の無い人には手を上げない主義なんだよ!」
どうやら性格は昔と全く変わってないようだ。相変わらず、か弱い人間たちに躊躇いも無く刃を向けているようだな。
20年以上経っても、人を甚振る趣味が消えてないとは……救いようの無い輩だ。
「……それでよく海賊なんてやってこれたもんだな。世も末って奴か」
「なに?」
「いいか?強い奴が弱い雑魚を殺して生き残る。それがこの世の理だ。弱者から物を奪って何が悪い?何かを守れるような力すら持ってないような、貧弱人間の存在そのものが罪みたいなもんだ。そう思わねぇか?」
「相変わらずムカつく野郎だな!」
「ふはははは!褒めてくれてありがとよ!」
「……ちっ!」
全く持って気に食わない野郎だ!
ベリアルの悪態に、思わず舌打ちをした。すると……。
「ベリアル!貴様、バルドに一体何をしたんだ!」
さっきまで俺の後方に居たシルクが自ら前に出て、敵意の篭った視線をベリアルに向けながら言った。
確かこの二人、前に面識があったんだった。まさかシルクも、自分たちを襲った海賊が、王国の元公爵だったとは思ってなかったんだろうな。
「おーおー、相変わらず威勢のいい女だ。だが、そんなに眉間に皺を寄せてたら、折角の美人が台無しだぜ?」
「ふざけてないで質問に答えろ!バルドに何をした!?まさか、洗脳でもしたのではないだろうな!?」
腕組みをして見下ろすような視線を向けるベリアル。だが、シルクは臆する事無くベリアルに牙を向けた。
そう言えば、シルクの仲間、バルド……だったな?どういった理由かは知らないが、俺が駆けつけた時には仲間であるはずのシルクに襲い掛かっていた。振り下ろされかけた刃には躊躇いの欠片も無かった。恐らく、本気で殺しに掛かったのだろうけど……大した理由も無しに、平気で仲間に手を掛けられるようなものなのか?
今シルクが言った通り、誰かに操られていれば合点がいくだろうけど……。
「……まぁ、そのまさかって事だ。ちょいと脳の中を弄らせてもらった」
「!!……貴様ぁ!」
シルクの推測は正しかった。どうやらバルドは本当に洗脳されてるらしい。
「落ち着けよ。実際に手を掛けたのは俺じゃない。俺のところに、エオノスって言う魔術師の部下がいてな、そいつに洗脳させたのさ。そいつが此処に居ない限り、洗脳を解くのは不可能だ」
「だったら、今すぐそのエオノスとやらを呼び出せ!痛みつけてまでも洗脳を解かせてやる!」
「そいつは無理だ。こいつにはもう少しだけ部下でいてもらう予定だからな」
「バルドは貴様の部下じゃない!」
口元を吊り上げながら余裕を見せるバルド。対してシルクは敵愾心をさらけ出しながら尚も食い下がる。シルクには悪いが、その光景を一目見ただけで、双方の力の差が明確に表されていた。
だが、人を操るなんて容易くできる真似ではない。相当高度な技術を要するのだろうから、エオノスって輩はかなり厄介な魔術師なんだろうな……。
「そうは言うが……お前こそ、こんな所に居ていいのかよ?お家に帰らなくていいのかぁ?」
「…………」
ベリアルの言葉を聞いた途端、シルクは気まずそうに口を閉ざしてしまった。
この表情……何か訳ありのようだな。ベリアルの奴、何か知ってるのか?
「とんだお転婆姫だな。お前に従ってる部下は気苦労が絶えないだろうよ」
「……貴様よりはマシだろう」
「言ってくれるぜ。守ってもらってばかりの姫が言える言葉かよ……なぁ、光の姫騎士さんよぉ」
「……?」
……なんだか、シルクとベリアルの会話について来れない。
ベリアル……さっきから何を言ってるんだ?
姫とか部下とか……それってまるで……。
「おい、さっきから姫って……何言ってるんだ?」
頭の中で浮かんだ疑問をそのままベリアルに言った。
「ん?なんだ?知らないのか?てっきり本人から聞いてたのかと思ったが」
「何の話だよ?こいつはトレジャーハンターなんだろ?」
親指でシルクを指しながら言ったが、当の本人はばつが悪そうな表情を浮かべながら視線を逸らした。
この反応……やっぱり訳ありって事か。
「……ふはははは!トレジャーハンターだぁ!?なんとも愉
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