「……全く、とんだ横槍が入ったもんだねぇ」
「ああ、だが大して支障は無いだろ?」
「まぁね」
レイピアを構えながらアイーダと向かい合う。
両手にサーベルを持ってるアイーダは、余裕綽々といった態度を見せていた。
「しっかし、驚いたねぇ。まさか、この襲撃の黒幕の正体が、あのキャプテン・キッドだったとは。あんたはあの男の手下って訳か」
「誰も手下になった憶えはない。私は誰にも従う気は無い」
「流石はヴァンパイア。プライドの高さは評判通りだね」
しかし、あそこでキッドと鉢合わせになるとはな。仮にもこの場に残って、二人でアイーダに挑めば多少は楽になるのだろうが……その必要は無い。
シルクの向かった先に何があるか分からないし、寧ろそっちに行かせた方がシルクにとっては大助かりだろう。
人の要望もまともに聞かない男だが、戦闘の実力は高く評価できる。いざと言うときには役に立つだろう。
「……で、その男は放っておいていいのか?」
「ああ、一々構う必要も無いだろう」
「自分の部下なのに、冷たい女だな」
「好きに言いな」
肩を竦めるアイーダ。その後方には、床から上半身を出している男の姿が……。
〜〜〜(数分前)〜〜〜
「何人来ようと同じだぁ!……って、あれ?リシャス?」
「キッド!?」
「あれは……キャプテン・キッド!なんで此処に!?」
「……あれ?お前一人か?シルクは?」
「ここから奥にある地下牢にバルドが居ると聞いて、シルクだけ先に行かせたんだ」
「そうか。で、この褐色の女は?」
「この女がアジトのボスだ」
「え!?マジか!?まさか女だったとは……どうする?手ぇ貸すか?」
「いや、先に行っていい。私よりシルクの方を助けてやってくれ」
「そうか、悪いな」
「ちょっと待ちな!他の奴ならともかく、あんただけは逃がす訳にはいかないね!」
「なんだよ、一人くらいいいじゃねぇか」
「駄目だ。あんたの首を取れば、あたしの名は一気に上がるからねぇ!」
「……しゃーない。ちょっとだけ構ってやるか……」
ドガァン!
「うぁ!?」
「な、なんだ!?床が……人!?」
「……ん?こいつ……まさか、あたしの部下!?」
「……ガク……ガクブルガクブル……」
「お、おい!どうしたんだよ!?何があった!?」
「……キツネ恐い……キツネ恐い……」
「おい!キツネって何の話だよ!?しっかりしろ!」
「……今のうちに行った方がいいのでは?」
「そうだな。じゃあリシャス、ここは任せた。しっかりやれよ!」
ダダダダダダダ!
「あ、しまった!おいこら待て!」
「余所見するな!貴様の相手は私だ!」
「くっ!……しょうがない。キャプテン・キッドの首は後回しだ」
「……キツネ恐い……稲荷恐い……キツネ恐い……稲荷恐い……」
〜〜〜(現在)〜〜〜
……数分前の話をざっくりと纏めると、そう言うことになる。
「……キツネ恐い……稲荷恐い……」
……床を突き破って現れたあの男。
何に怯えているのかさっぱり理解できないが……もういいや。気にしないでおこう。
「さて、始めようかね」
「……ああ」
ゴタゴタがあったが、気を取り直して戦闘体勢に入る私とアイーダ。
そして……!
「すぐに決めてやる!」
「上等!」
戦闘開始の合図であるかのように、互いに武器を手に駆け出した!
キィン!
「良い機会だ。今までヴァンパイアとは戦った事無いからね。じっくり楽しませてもらうよ!」
「ああ、そうした方がいい。その時間もすぐに終わるからな!」
互いに武器をぶつけ合い、鍔迫り合いの状態になる。
至近距離で互いの目を睨み合いながら、挑発的な発言を口から吐いた。
「そぉらっ!」
「甘い!」
アイーダは一歩下がりつつ、空いてる左手のサーベルで斬りかかったが、私はレイピアで左手のサーベルを受け流した。
「はぁぁ!」
「うぉっとっとぉ!」
今度は私の攻撃。レイピアによる素早い突き刺しの雨を降り注がせた。
しかし、相手も易々とやられはしない。両手のサーベルで一つ一つの突き刺しをしなやかに受け流した。
どうやら敵もかなりの腕前のようだ。アジトのボスを務めているだけはある。
「やっぱり速いねぇ!こりゃ私も負けてられない!」
「負けられないのはお互い様だ!」
一通り連撃を受け流したところで、アイーダも反撃に出てきた。
私のレイピアを上手く避けながら、両手のサーベルで舞うように斬りかかる。私も相手の斬撃を防ぎながら、急所への突き刺しを試みる。
剣と剣がぶつかり合う金属音が通路に響き渡る。互いに猛攻の手を緩める事無く、埒の明かない攻防戦が数分間繰り広げられた。
「しぶといねぇ……いよっとぉ!」
すると、アイーダは私がレイピアでサーベルを受け止めた
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