トレジャーハンター、シルク

「足が滑りそうになった時は流石にヒヤリとしたな」
「でも結局は大物が釣れてよかったですね。まさか釣竿一本でマグロを釣るなんて……流石ですね!」
「じゃあ明日はお兄ちゃんが釣ったマグロも食べれるの?」
「そうだな、楓に頼んでおこう」


夜の九時頃、俺はダイニングにて、テーブルを挟んでサフィアとピュラの三人で他愛も無い雑談を交えていた。
晩飯を食べ終わり、食後のお茶を飲みながらお話を始めたらもう二時間以上は経っていた。主に俺が今日釣ったマグロが話題となって盛り上がったが……一匹しか釣れなかったから、流石に全員食べさせる訳にはいかないだろう。尤も、サフィアとピュラには最優先で食べさせるつもりだが。


「そういや……二人とも風呂はいいのか?まだ入ってないだろ?」
「あら、もうそんな時間でしたか。それでは先にお風呂に入ってきますね」


ここでサフィアたちは風呂へ行く事になった。
もう夜も更けてきたし、そろそろ就寝の準備をしておいた方がいいだろう。明日だって、何時戦闘があってもおかしくないからな。


「ピュラ、一緒に行きましょう」
「うん!」
「ではキッド、また後で」
「おう、行ってきな」


そしてサフィアとピュラは二人揃って立ち上がり、大浴場へ向かって行った。


「ズズッ……さてと、明日はどうするかな……」


ダイニングを出て行く二人の後姿を見送った後、楓に淹れてもらったお茶を啜り、明日をどう過ごすのかぼんやりと考え始めた。
釣りばっかりやるのもつまらないし、たまにはチェスでもやろうか……あぁ、でもサフィアとやるのは出来るだけ避けたい。あいつメチャクチャ強いから、完膚なきまでに叩きのめされるのが目に見えるんだよなぁ……。
にしても……この緑茶、美味ぇ……。

「お疲れ様です、船長さん。お茶のおかわりは如何ですか?」
「おう、楓か。それじゃ、もう一杯頂くか」
「はい、畏まりました」

色々と考えていると、キッチンから楓が急須を持って来た。そして楓の厚意を受けて、お茶のおかわりを湯呑みに淹れてもらった。

「それにしても、今日船長さんが釣ったマグロ、とても大きかったですね。私としても腕が鳴ります!」
「いや、俺も一目見たときは驚いたよ。まさかあんな安っぽい餌でマグロが釣れるとは思わなかったな」
「釣られたマグロさんは、安っぽい餌を食べたい気分だったのでは?」
「だろうな」

ちょうど楓が俺の向かい側に腰をかけたところで、このまま話し相手になってもらった。
オリヴィアは部屋で武器コレクションを見てるし、ヘルムは自室でルミアスへの手紙を書いてるようだし、シャローナはまた医療室で変な薬の実験をやってるみたいだし……暇になってきたから楓がいてくれて助かった。一人で静かに居るのは性に合わない。

「そう言えば船長さん……ちょっと気になる事がありまして……」
「ん?どうした?」

すると、楓から何やら神妙な面持ちで話を切り出された。


「ピュラちゃんの事ですが……どうかしたのでしょうか?」
「……ピュラ?」
「はい、なんだか最近様子がおかしくて……」


楓が言うには、最近ピュラの様子がおかしいとのこと。
そう言われても、俺には今一ピンと来ない。さっきだって普通に楽しく雑談していたし……。

「なんだ……アレか?もしかして、食欲が無さそうだったとか?」
「いえ、その逆です。無いどころか、寧ろいっぱい食べてるような気がしまして」
「え?そうか?俺にはそう見えないな。今日だって朝、昼、晩と三食ともピュラと一緒に食べたが、量は何時もと変わらないし、ご飯のおかわりもしなかったぞ」
「そうなのですが……問題はその後なのです。何時もの食事を食べ終えた後にはキッチンから果物やお菓子を取り出してるようでして……」
「……ピュラが?なんでまた……」
「他にもおかしい点があるのです。その取り出した果物やお菓子を何処かへ持って行ってる姿を以前見かけました」
「……なるほど、確かに妙だな」

楓が気付く問題点と言えば食に関する事だろうと思い、もしやピュラの食欲が無くなってきてるのかと考えたが……違ったようだ。
話を纏めると、最近になってピュラは果物やお菓子を何処かへ持って行ってるとのこと。
詳しく聞いてみれば確かに気になる点は幾つかある。間食にしても、どうせ食べるなら何処かの部屋へ持ち運ばずにダイニングで食べた方が楽な気がする。それにピュラは何時も元気な子ではあるが、必要以上に食べるような大食いじゃない。いくらなんでも食事の後にまた食事だなんて考えられないが……。

「……成長期ってやつか?」
「それにしたって早すぎる気がします……」
「だよな……もしかして楓、ピュラの食事のメニューだけ量を減らしてるなんて……」
「いえ、それはあり得ません。寧ろあれ位の歳の子
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