走っている……騒音の中を。
探している……頼れる人を。
呼んでいる……大切な人を。
でも……なんにも返ってこない。
「パパー!ママー!」
滝の涙を流しながら必死に呼びかける。
返ってくるのは無しかない。
「うわあああ!!」
「なんて事だ……たかが愚民どもに押されるなんて!」
「愚民を舐めんじゃねぇ!お前たち、よくも今まで好き勝手にやってくれたな!」
「出て行け!この国から今すぐ出て行け!」
繰り返される戦乱の叫び。
圧倒的たる革命の始まり。
そして今から……この国は0へと変貌を遂げる。
この戦乱は……全ての引き金。
「パパー!ママー!」
泣き叫びも空しいばかり。
次第に募る寂しさ。
どうしようもない状況下。
「待てよ」
「ひぐっ……ふぇ……?」
そんな中、明らかに自分を呼びかける声が聞こえた。
闇雲に走るのを止めて、ゆっくりと背後を振り返ってみる。
「小僧、そんなに泣いてどうしたんだ?」
自分よりも遥かに大きい体を見上げる。
自分が探している父と同じくらい大きい男の人だ。
「……あ……あぁ……」
「そう怖がるな。何もしない」
男の人はこちらの警戒心を解こうと、やんわりとした口調で話しかける。
……不思議だった。
今まで会ったことの無い人なのに……。
なんだか……変な感じが……。
「この野郎がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
……ここでプツリと、昔の記憶で構成された映像が途切れた。
………………。
…………。
……。
「……夢か……」
徐に瞼が開かれて、俺はベッドの上で上半身を起こして軽く伸びをした。
しかしまぁ……夢とはいえ、あんな昔の記憶を見る羽目になるなんてなぁ。
カリバルナの革命……さっき見た夢こそ、俺の故郷が生まれ変わる運命の日だった。
あの日に叔父さんが国王になったんだよな。そう言えば叔父さんとアミナさん、元気にしてるかな……。
……最後のほうで出会った、あの巨体の男。
あいつは……確か……。
「スゥ……スゥ……」
ふと隣に視線を移すと、瞳を閉じて安らかに眠っているサフィアの姿が見れた。
そう言えば昨日は……同業者のアジトに潜入して、財宝を奪って、それを宝物庫に納めてから船長室に戻って……その後二人でヤッたんだっけな。
「よいしょっと……」
夢のことを一々考えてても切が無い。とりあえず起きよう。
サフィアを起こさないようにそっとベッドから降りて部屋のカーテンを開けた。
今日も良い天気だ。波は穏やかで雲も白い。東から降り注がれる太陽の光が身体に染み渡るようだ。
「……さてと」
今日も一日頑張ろう。
そう思いながら、俺は身支度を整え始めた。
〜〜〜(ピュラ視点)〜〜〜
「ふんふんふふ〜ん♪」
このお船の料理人をやってる稲荷の楓さんに、朝ごはんで使うみそを持ってくるように頼まれて、私ははな歌を歌いながら食りょうこまで向かっていた。
「卵焼き〜♪卵焼き〜♪」
今日の朝ごはんには私の大好きな甘い卵焼きが出るらしいから、朝からちょっと幸せ!
しかも楓さんが、『お味噌を持ってきてくれたら、ピュラちゃんにはお礼に卵焼きを一個オマケしますよ』と言ってくれたから、とっても得した気分だ!
「それにしても……これすっごく便利!」
ちなみに私はフワフワと宙に浮かぶ浮き輪に入って、尾びれをバタつかせて移動している。
この浮き輪……人魚の魔物が地上で移動する為に作られた物で、バルーンフロートと呼ばれる物らしい。前に小さな島に立ち寄った際に、お兄ちゃんが刑部狸さんから買ってくれたものだ。
浮き輪に体を通すだけで海中と同じ方法で地上を移動できる優れもので、お陰でお船の中での移動が楽になったし、私もすっかり気に入っちゃった。
今度は町の中でも使ってみたいなぁ……。
「……あ、ここだ」
そう思ってるうちに食りょうこの前まで着いた。
早くみそを持っていこう。
そう思いながらゆっくりとドアを開けた。
「……あれ?」
そして中に入ったら……何かがおかしいことに気付いた。
奥の方に人のかげのようなものが見える。私よりだれか先に来たのかな?
「そぉ〜……」
物音を立てないようにこっそりとかげの方へ歩み寄る。
気付かれないようにゆっくりと……。
「……え!?」
「……あ……」
そこには……むしゃむしゃと干し肉をかじってる人がいた。
しかもその人は……このお船の人じゃなかった。
〜〜〜数時間後(キッド視点)〜〜〜
「……ふぅ……」
「釣れませんね……」
「ま、そんなに事を急いでも仕方ないさ。こうしてジッと待つ
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