ヒュウゥゥゥゥゥ……
窓から吹き抜ける風が、私の耳に響いてきた。
「……早いとこ出なければな……」
ここは……小さな島に建っているボロボロの屋敷。数十年前にはかつて人が住んでいたのだろうけど、どういう訳かただの廃屋と化している。
そしてこの廃屋自体も、海を荒らす海賊のアジトに成り下がってるのが現状だった。
「目ぼしい物は無いか……」
月明かりに照らされる空き部屋の中、この私……シルクは部屋の物色をしていたところだが、特にお目当ての物は見つからなかった。
お目当てと言っても、私が求めているのは金でも宝石でも、このアジトに集っている海賊たちの首でもない。
私が欲しいのは……あの人の手がかりだ。
「このアジトにも居なかったと言う事は……また次か……」
結局、このアジトにはあの人も、手がかりになる物も見当たらなかった。なんとか上手い具合に潜入したのに……残念だ。
とは言え、大方の見当はついている。此処から一番近い海賊のアジトをまだ調べていない。あの人がそこにいる可能性も十分ある。
成果が無かった事を何時までも嘆いていても仕方ない……気持ちを切り替えて、次のアジトに行こう。
「……待っていろよ、バルド……必ず助けるからな!」
ドカァン!!
「!な、なんだ!?」
早く部屋を出ようと思った瞬間、部屋の外から爆音と思われる凄まじい轟音が響いてきた。あまりにも突然の出来事に、私は思わず腰に携えている剣に手を掛けかけてしまった。
一体何が起きたのだ?なんだか……外が騒がしいような気がする。
「まさか……気付かれたか!?」
……いや、だとしても一々爆音を起こすような真似はしない筈だ。敵の海賊も馬鹿ではない。仮にも私の潜入に気付き、私を捕らえる気でいるのであれば、此処まで余計に騒がずに来るだろう。
それなら……何故あんな音が?
恐る恐るとドアに耳を当てて、外の様子を音のみで窺ってみた。
「追えー!あの男を逃がすな!」
「奴も海賊だったんだ!宝を持ち逃げなんて冗談じゃねぇ!」
「くそっ!忍び込んだネズミは一匹だけだろ!?なんとかしろぉ!」
「……私の事ではないようだな……」
部屋の外から聞こえる海賊たちの会話からして、どうやら騒動の原因は私ではないようだ。
しかし、『あの男』『奴も海賊』『宝』など、どうも気になる言葉が出てきた。
これらから考えて見ると……私の他にも一人、このアジトに侵入してきた者がいる。そしてその者は海賊で、アジトの宝を盗み出した……といったところか。
だが、これはある意味一種の好機だと考えられる。アジトの海賊たちが侵入者に気を取られていてくれた方が逃げやすい。その侵入者が何者かは知らないが、ここは見知らぬ男に囮となってもらおう。
「……慎重にしなければな」
早速私は、このアジトからの脱出を試みた……。
〜〜〜(キッド視点)〜〜〜
「この野郎!待ちやがれ!」
「待てと言われて待つ奴がいるかよ!」
お宝が入ってる大きな袋を肩に担ぎながら、石造りの通路を走り続ける。俺の後をしつこく追い続けてる同業者たちは、宝を取り戻そうと必死の形相を浮かべていた。
こちとら重い荷物を担いでるが、足の速さならあいつらには負けたりしない。伊達に鍛えてきた訳じゃないし、今までの冒険の中でもしっかりと強くなってきている。半端な覚悟で海に出てるような、後ろの連中とは違うんだよ。
「……お、見えてきた!」
走り続けているうちに、上の階へと繋がる階段が見えてきた。あれを上がれば出口まで行ける。
よし……ここでいっちょやるか!
俺は腰に携えているショットガンを左手で抜き取り、銃口を後ろの敵に向けて……。
「悪いがお前ら……寝てろ!」
バァン!
ボフン!
「おわぁっ!?なんだこれ!?煙……が……」
「な、なんだ……急に……眠気……が……」
「お、おい、待て……お前……なに、を……し……た……」
発砲された弾が爆発を起こし、辺り一帯が煙に包まれる。その煙を吸った後ろの敵は急に眠気に襲われて、次々と深い眠りについた。
「はははっ!この弾も中々使えるな!これからも有効に活用しよう!」
新しく作った弾の効力に満足しながら、俺は上の階へ続く階段を上り始めた。
さて……俺を追ってた連中はあのまま眠っていれば問題ない。あとはこのまま逃げ切れば良いのだが……ここは敵のアジト。何が起こってもおかしくない。
「いよっと!さて、このまま突っ切るか!」
階段を上がりきり、またしても一直線に伸びる通路へと差し掛かった。
所々に部屋のドアが見られるが……。
「ひゃはは!やっぱり来たな!」
「逃げられると思うなよ、バーカ!」
……予想通りだ。部屋のドアが勢い良く開き、そこから敵の海賊
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