「で……どれが良いと思う?」
「知るかよ。自分で決めろ」
「冷たいなぁ……もうちょっと協力的になってくれても良いんじゃない?」
「彼女へのプレゼントなんて、男の幼馴染に選んでもらって良いもんじゃないだろ?」
「いや、キッドなら女心をキチンと理解してると思ってね」
「……お前、俺が遊び人に見えるか?」
「いや、そう言う訳じゃ……」
「そんなに引くなよ。冗談だから」
ここは、カリバルナの街中にあるアクセサリーショップ。僕はキッドを連れて、ルミアスに渡すプレゼントを選んでいる最中だった。
ルミアスと恋仲になってから大分経つけど、未だに彼女にちゃんとしたプレゼントを渡した事が一度もない。流石にこのままではいけないと判断し、キッドに協力を頼んで今に至る……と言う訳だ。
この店なら安くて綺麗な品が揃ってるし、ルミアスが気に入ってくれるものも幾つかあるだろう。まずはその気に入る品を見つけなければ……。
「……これなんかどうだ?」
「う〜ん……もうちょっと明るい色合いが良いな。これなんか良いかも」
「ほう……確かに綺麗だが、デカすぎて邪魔にならないか?」
「あ、確かに……」
……とは言ったものの、恋人へのプレゼント選びとは思ってた以上に難しいものだった。
品の見た目だけじゃなく、自分の予算までキチンと計算しなきゃいけないし……どうしたものか……。
「お困りのようですね」
「え?」
頭を抱えていると、背後から店の店長を務めているドワーフに声を掛けられた。
「何か、お役に立てる事はありますか?」
「あ、はい。実は、今交際してる恋人にプレゼントをあげようと思いまして……」
「おぉ〜!それは素晴らしい!きっとその恋人も喜ぶでしょうね!」
ドワーフは目をキラキラと輝かせて僕を見つめてきた。
……実はその恋人は、あなたの天敵であるエルフです。
なんて口が裂けても言えなかった。
「恋人へのプレゼントでしたら、とびっきりの品がありますよ!少々お待ちください!」
そう言って、ドワーフはスタスタと店の奥へと走って行った。
「お待たせしました!これなんかどうでしょう?」
少し待つと、すぐにドワーフが何やら二つのアクセサリーを持って戻ってきた。
「……これは……?」
それは……銀色に輝くブレスレットだった。一つは月、そしてもう一つは太陽のシンボルが刻まれている。世間でも有名な二つの対称をモチーフにしたのだろう。
「これは、ソーラー・エクリプス・リング……ちょいと名前が長いので、簡略してSELとも呼びます。名前とデザインの通り、日食をイメージして作られたブレスレットです」
「へぇ……でも、何故二つも?それに、何故日食なんですか?」
頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出すと、ドワーフは楽しそうな笑みを浮かべながら答えた。
「はい、これは愛する者同士がそれぞれ一つずつ身に付ける事によって、初めて価値が出る物なのです。日食とは、太陽と月が重ならなければ起きない現象です」
「それは聞いた事がある。数年前にもカリバルナで見られたとか」
日食なら本で読んだ事があるから僕も知ってる。滅多に見る事が出来ない珍しい現象なんだとか。数年前にも多くの国民たちが日食を目の当たりにして早くも話題となったのは覚えている。
「よくぞご存じで!ここで一つの昔話をさせていただきます。数百年ほど昔、このカリバルナの地を守ってた伝説の騎士がいました。実はその騎士は王国の王女に恋心を抱いてましたが、その王女もまた騎士を愛していた……つまり両想いだったのです」
「へぇ……それで?」
「騎士と王女……それぞれの身分の違いから恋が実る日は来ないだろうと思われていました。しかし、ある日に王国の騎士は王女への愛を打ち明けたのです。王女も騎士の想いを受け止めて、永遠の愛を誓いました。その瞬間に日食が起きたと言われています。その事から、日食はカリバルナでは永遠の愛とも呼ばれているのです」
「なるほど……」
「その後、騎士と王女はカリバルナの初代国王を何としてでも説得して、生涯共に生きる許可を得ようと奮闘しました。最初こそ国王は猛反対でしたが、やがて二人の真剣な想いを理解して、遂に二人の仲を認めたのです。こうして、騎士と王女……絶対に結ばれないと思われていた二人は、めでたく夫婦になりました」
それで日食なのか……納得できた。
「互いに愛し合う男と女が、永遠の愛を誓う。伝承通りに考えると、男が月、女が太陽、そして永遠の愛が日食……と言った感じですね。尤も、本物の日食は自ずと消えるものですが、このブレスレットによる愛は消えたりしませんけどね」
「へぇ……面白いですね」
「でしょう?」
ドワーフの話の内容は大変興味深いものだった。
ただ単純に月と太陽を象ったのではなく、恋人同
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