おはようからHRまで

「チュッ
#9829;」
「…………」


とても綺麗で美しい女が俺の顔面の間近に迫っていた。しかも唇には柔らかくて温かいものが触れている。
目覚めたばかりだと言うのに、俺は今置かれてる状況を冷静に把握した。


俺は……唇を奪われてたようだ。
まぁ、悪い気はしないが……。


「ん……あらキッド、おはようございます」
「おはよう。お陰で気持ちの良い目覚めだったぜ」
「まぁ、うふふ♪」


目覚めたのに気付くと、唇を奪った俺の恋人……シー・ビショップのサフィアは温かい笑みを浮かべながら俺の顔を見下ろしていた(足は人間のものに変えてる)。
白いワイシャツの上には黒色のブレザー、そして左胸には炎を纏ってる髑髏のエンブレム……俺より先に起きた為か、既に学園の制服に着替えてた。
朝からこの笑顔を見れるのは幸先が良い。寝起きの気だるさもすぐに消えて行った。


「さぁ、今日から学園ですよ。気持ちを切り替えて頑張りましょう」
「あぁ、そうだな」


そう……今日は休日が明けてからの月曜日。海賊学園に登校する日だ。
休みが終わった直後の学校ってのは色々とだるいが……学園に行く事自体は苦じゃない。寧ろ楽しいと思えるくらいだ。
何だかんだ行って、今の学園生活を満喫している最中だからな。

「さ、キッドも着替えて朝食にしましょう。ルイスさんたちも待ってますよ」
「そうだな。それじゃ、俺は着替えるからサフィアは先に……」
「…………」
「ん?どうした?」


学園の制服に着替えようとベッドから起き上がると、サフィアはジ〜っと俺の顔を無言で見つめてきた。
どうしたんだ……?俺の顔に何か付いてるのか?

「ど、どうした?」
「あの……やっぱり出た方が良いですか?」
「え?なんで?」
「その……どうせならキッドと一緒にダイニングに行きたいな〜と思いまして」
「……待ってるのか?」
「はい」
「ここで?」
「はい」
「俺、ここで着替えるんだけど」
「はい」
「堂々と見る気か?」
「はい」
「即答かよ!」
「はい」

意地でも俺と一緒に一階へ下りたいようだ。
……いや、俺の着替えが見たいだけか?別に見ても面白くはないと思うが……。
そりゃあ、ずっと前から、その……色々とヤッてる間柄だから今更着替えくらいで……って、そう言う問題か?

「ほらほらキッド、早く着替えないと遅刻しますよ」
「ああ、分かってる。だから服のボタンから手を離してくれ。そして外さないでくれ」
「え?でも外さないと着替えれませんよ?」
「分かってる。自分でやるから、手伝わないでいいから!」
「そう言わないでください。私だって、二人っきりの時は甘えたいのですから」
「いや、これは甘えてるんじゃなくて襲ってるとしか……」


……そして毎朝恒例の、サフィアによる半強制的なお着替えタイムが始まった。何時もはお淑やかな言動のサフィアだが、こうして二人っきりになったら、ここぞとばかりに積極的になってくる。叔父さんたちの前では少し遠慮してる分、その反動が返ってきてるのだろうけど。
いや、今更ね、裸体を見られるのに抵抗は無いんだが……着替えくらい自分で出来るってのに……。


「……それよりサフィア」
「はい?」
「そのシャツ、この前新調したばかりだよな?」
「はい、そうですけど……?」
「……値札、付いたままだぞ」
「え!?……あ!や、やだ!私とした事が……!」
「……ぷっ!」
「……あ!今笑いましたね!?」
「笑ってないよ」
「笑ってましたよね!?」
「笑ってない」
「笑ってました!」
「笑ってないって」
「笑ってました〜!」


……こうした取り留めの無いやり取りも、俺にとっては大切な一時だったりするけどな。



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「あぁ……今日もやられちまった……」
「あら?そう言ってる割には本気で嫌がってるようには見えませんでしたよ」
「……ま、その……サフィアと触れ合うのは嬉しいからな」
「……うふふ♪」

結局サフィアに半ば強制的に手伝われる形で学園の制服に着替え終わり、叔父さんたちが居るであろうリビングへと一緒に向かって行った。
一階へと通じる階段を下りて、片手で制服のネクタイを弄りながらリビングのドアを開けた。


「……あぁ、おはようキッド」
「あらキッド、おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん!」
「あぁ、おはよう」


そこには毎日一緒に暮らしてる家族が全員揃っていた。
インキュバスのルイス叔父さんはダイニングテーブルの椅子に腰掛けて新聞を読んでいて、リリムのアミナ叔母さんは朝食の準備を進めている。そして子供のマーメイドのピュラはアミナさんの手伝いをしていた。

「アミナさん、お待たせしました」
「あ、サフィアちゃん、ちょうど良かった。もうすぐ出来るから、パンをお皿に盛
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