「ったく、美知代の奴、人には『飲みすぎるな』とか言っておきながら自分が酔い潰れちまうなんて……」
「カリバルナのビールを飲み始めてから急に酔い始めてたな。あのアオオニの夫……確か、武吉だよな?あいつも巻き添え喰らって大変だったな」
「そうそう、最終的には淫ら上戸になっちまって、半ば強引に武吉を船の自室へ連れ込んじまってさ。今頃激しく交わりあってるだろうよ」
「旦那の方は大変だろうな。サフィアは酒を飲まない性格で良かったよ」
「あ、そう言えばサフィアはどうしたんだ?さっきから何処にも見当たらないんだが?」
「疲れて眠ったピュラを背負って自室に戻って行ったさ。多分サフィアも一緒に寝てるだろうな」
「あの二人って見てて微笑ましいよな。種族こそ違ってはいるが、それでも本当の姉妹に見える」
「そうだろ?たとえ血が繋がってなくても、あの二人は固い絆で結ばれてるのさ」
「……な〜にカッコ付けてんだか」
「るっせーよ」
……こんな感じで、砂浜に埋められてる岩に腰掛け、キッドと何気ない雑談を交えながら酒や摘まみ物を堪能していた。
と言っても、宴自体はもうお開きとなってるようなもので、回りの仲間たちは既に後片付けの最中だった。
その中にはキッドの仲間と一緒に宴の片づけをしてるルトの姿が見える。あいつも自ら進んで後片付けの手伝いに名乗り出てくれたのだ。
……俺としては、片付けよりも俺の傍に居て欲しかったんだけどなぁ……。
ま、それがルトの良いところなんだけどな。
「そういや奈々、アンタ等はこれからどうする予定なんだ?」
「あぁ、もう少し此処で寛いで、二日後くらいに出航しようと思うんだ」
「俺等もそんくらいに出る予定だ。ちなみに進路方向は西南だが」
「そうか……俺たちは北に向かう予定なんだ」
「此処から北って……なんかあったか?」
「あぁ、此処から北にある雪国に寄ろうと思うんだ。そこで製造されてる酒は格別だって聞いたもんでな」
「……アンタも筋金入りの酒好きだな」
「俺だけじゃねぇぞ。基本的に俺の仲間たちはみんな酒好きだ。ルトと武吉を除いて!」
「……酒乱女軍団め。男組が可哀想だ」
「うっせーよ!」
そして俺たちはこの島から北に向かい、キッドたちは西南に向かう予定だ。
それぞれ行き先が違う……つまり、キッドたちとはお別れって事になる。
まぁ、再び会う機会も自ずとやって来るだろうよ。その時にまた一緒に酒を飲めると良いな。
「あはは、二人とも楽しそうですね」
「お、ルト!手伝いはもう終わったのか?」
「はい。『後は私たちでやるから、先に部屋に戻って良いよ』と言われました」
すると、後片付けの手伝いをしてたルトが俺たちのところへ戻って来た。
「よぅ、お疲れ。オレンジジュース飲むか?」
「あ、キッドさん。ありがとうございます」
キッドはオレンジジュースが入ってるガラスの瓶を丸ごとルトに差し出した。ルトは瓶を受け取ると、何かを探すように辺りをキョロキョロと見渡し始める。
「どうした?飲まないのか?」
「いえ、あの、コップが無くて……」
どうやらジュースを注ぐコップを探してるらしい。
そんなもの無くても、直接飲んじまえば良いのに……相変わらず繊細だな。
「んなもん要らねぇだろ。そのままグイッと飲めよ」
「でも、他の人も飲むのでは……」
「それ丸ごとお前さんにやるから、気にしないで飲めよ」
「良いんですか?」
「お前さんだって男だろ?細かい事を一々気にしてちゃ埒が明かねぇぞ」
「は、はい」
と、キッドに促されるままにルトは瓶のジュースをグイッと一口飲んだ。
「どうだ?コップでチビチビ飲むより美味いんじゃないか?」
「あはは……そうかもしれませんね」
「だろ?お前さんも海賊なんだから、もっと豪快にやろうぜ」
「あ……は、はい!」
お前も海賊……そう言われたルトは一瞬だけ戸惑ったものの、すぐに大きく頷いて応えた。
……そういやルトって厳密に言ったら海賊って訳じゃないんだよな。
モーガンの野朗から逃げ出して、海で俺に拾われて、そのまま俺の船に乗って……。
結論から言うと、ルトは根からの海賊って訳じゃない。
ま、細かい事はどうでもいいか!俺の傍に居てくれれば、それで良いし♪
「さて、もう夜遅いし、俺も寝ようかな」
するとキッドは酒が入ってる瓶を片手に持って岩から立ち上がった。
「じゃ、先に失礼するぜ。また明日会おうな」
「おう、お休みー」
そしてキッドは俺たちに背を向けて、悠々とした足取りで自分の船へと進んで行った。
「……おぉ、そうだ」
と思ったら、途中で急に足を止めて徐に身体を捻って俺へと視線を向けた。
「ちょいと一言だけ言っておくが……」
「?」
キッドは不敵な笑みを浮かべながらグッと親指を立てて言った。
「
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