ザザーン……
「あ〜……なんつーか、こう……のんびり過ごすのも悪くはねぇなぁ……」
無数の木々が生い茂る小さな無人島にて海賊船を停泊させた後、俺ことキッドは砂浜でのんびりと午後を過ごしていた。船から持ってきたビーチチェアの上に寝転がって、海から吹かれる潮風を楽しんでいる。
「ほらピュラ、ここを引っ張って……」
「よいしょ……わぁ!橋ができた!」
俺のすぐ近くでは俺の妻であるシー・ビショップのサフィアと、その妹でもあるマーメイドのピュラがあやとりで遊んでいる。
この二人は実際に血が繋がってる訳じゃないんだが、本当の姉妹の様に何時も微笑ましい姿を見せてくれる。この二人は俺の冒険の支えと言っても過言ではない。
「ふぁ〜……」
「あらあら、キッド、眠そうですね」
「ああ、こうしてのんびりするのも久しぶりだからな……」
不覚にも欠伸が出てしまったが……サフィアに気付かれてしまったようだ。
この無人島に着く前は長い航海が続いてたからな、休む暇なんて無かった。たまには砂浜で昼寝ってのも悪くないかもな。
「あぁ……ちょっくら寝ようか……」
と、昼寝をしようとゆっくり瞼を閉じようとしたら……。
「海賊船が来たぞー!!」
……おいおい、勘弁してくれよ……。
「……ったく!なんだよ、こんな時によぉ……!」
昼寝の邪魔が来たと知らされて少々不満を抱きながらも、俺はビーチチェアから起き上がって海へと視線を移す。そこには、確かに髑髏の旗を靡かせながらこちらに向かって来てる海賊船が見えた。
……ん?ちょっと待て……あの船、どっかで見たような…………?
「キッド、どうします?やっぱり戦わなくてはいけないのでしょうか?」
「いや、ちょっと待て……」
不安げな表情を浮かべながらも、ピュラと一緒に俺の船の中へ避難しようとしたサフィアを片手で制した。
普段ならサフィアたちを危険な目に遭わせない為に船の中へ避難させる。だが、今回はその必要は無さそうだ。
何故なら……俺はあの船に見覚えがあるからだ。
「……あぁ……やっぱりな……」
改めてこちらに向かってくる海賊船を見直して確信を持った。
俺の海賊船『ブラック・モンスター』程ではないが中々大きい船で、船首には狐の頭を模した像が付けられている。更にはマストの天辺の海賊旗にはカウボーイの帽子を被った髑髏が描かれている。そう……狐の耳が付いた髑髏が。
「おう、お前ら!武器を下ろせ!大丈夫だ!あれは敵じゃない!」
俺は戦闘の姿勢に入ってる仲間たちに向かって武器を下ろすように命じた。それを聞いた仲間たちは、戸惑いながらも大人しく命令通りに武器を下ろした。
海賊が来てるのに武器を下ろせなんて言われたら戸惑うのも無理は無いか。まぁ、今回ばかりは……敵じゃないしな。
「……着いたか」
そして狐の海賊船が島に着き、俺のブラック・モンスターと並列になるように並んで停止した。船から碇が下ろされ、帆が少しずつ畳まれていく。
シュバッ!
「ヒャッホウ!!」
爽快な叫び声と同時に、船首から何者かが飛び出て来た。弧を描きながら宙を舞い華麗に着地した人物は、ゆっくりと立ち上がって何事も無かったかのように俺に歩み寄ってくる。
茶色いカウガールハットから出てる狐の耳に、背後から垣間見れる四本の狐の尻尾……つまり妖狐だ。
星のマークが描かれてるカウガールハット、無地のシャツの上から羽織ってるこげ茶色のジャケット、そして黒色のロングブーツ。更には腰のホルダーにはピストルが二丁、そして薄茶色のロープが環になるように腰に携えられている。
何も知らない奴が一目見ればカウガールだと瞬時に思うだろう。だが、こいつは正真正銘……俺と同じ海賊だ。
「……やっぱりフェリスか」
「ヤッホー!キー君、久しぶり〜♪元気にしてた?」
「お陰様でな。で、今日はどうしたんだ?」
俺が呟くように言うと、妖狐の魔物……もといフェリスはニコッと笑みを浮かべながら片手を上げて言った。相も変らぬ元気な女だ。
「いや〜、偶々近くに寄ったらキー君のブラック・モンスターを見つけてさぁ、久しぶりに会いに行ってみようと思ってね」
「ま、生憎な事にピンピンしてるがな」
この妖狐の名はフェリス。見た目はカウガールに見えるが本物の海賊で、フォックス海賊団の船長を務めている。今やってきた海賊船も、フェリス率いるフォックス海賊団の船だ。
「で、最近調子はどう?」
「そこそこだな。昨日も襲ってきた同業者を返り討ちにしてやった」
「あらら〜、その同業者さん、お気の毒ね」
「知らねぇよ。自業自得だろ?」
「あはは!確かにね!」
フォックス海賊団とは、名前の通り狐の魔物が集まってる海賊団で、船員の殆どが稲荷や狐憑きなど
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