俺と対峙しているバランドラは、かつて俺の叔父さんに追い出された教団の人間である事が分かった。自身の話を語り終えたところで、バランドラは俺を見据えながら言った。
「襲ってきた海賊の船長が貴公だと分かった時、ワタクシの心は躍りました。今ここで、ワタクシを地獄の底へ陥れた男の親族を殺す事ができると」
バランドラはゆっくりと俯いた。
「貴公が持っている長剣とショットガン……見覚えがありますよ。あの男から譲り受けた物でしょう?」
バランドラは黒斑眼鏡を外して話し続けた。その声が怒りによって徐々に震えて荒々しく聞こえてくる。
「ワタクシはねぇ、今でもあの男を憎んでいますよ。この憎しみは決して消えません。憎んでも憎み切れない……」
眼鏡を握っている手が震えている。その震えが激しくなると同時に、パキッと何かが壊れるような音が響いた。その時俺は、見えもしないバランドラの邪悪なオーラを感じた。
「本当なら、あの男を殺すその日まで、この憎しみは抑えているつもりでした……ですが……今ワタクシの目の前に、遠回しとは言え、あの男の血族がいる……」
バランドラの震えは手だけではなく、体中にまで渡っていくのが見えた。更に手の圧力により眼鏡が音を立てて割れていく。
「ここで貴公を殺さずにして、何時殺すと言うのですか……?あの男の血族を殺すためなのであれば……」
バキッという音が響き、バランドラに握られていた眼鏡が完全に壊れた。それと同時に、邪悪なオーラが一気に増したように感じた。
「一度くらい…………この憎しみを解き放っても……いいですか?いいですよねぇ?いいでしょ?いいね?いいよな?いいだろ?いぃだろぉぉぉぉ!?」
な、なんだ!?急に口調が荒く……!
俺が驚いていると、バランドラは壊れた眼鏡を叩き落とし……。
「俺様に殺されろ!このクソガキがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「!!」
突如、バランドラが豹変した。ガバッと上げられた顔は真っ赤に染まり、血管が浮かび上がっている。糸のように細かった眼はカッと見開き、充血により赤く血走った二つの目玉が俺を睨みつけている。さっきまで礼儀正しい態度を取っていた男と同一人物とはとても思えない。バランドラは鼻息荒く、ギラギラと殺意を放ちながら怒鳴り散らした。
「テメェのツラを見てるとなぁ、あの憎き国王の顔が思い出しちまうんだよぉ!俺様はなぁ、教団を追い出されたあの日からあいつへの復讐を決めたんだよ!あぁん!?」
バランドラは尚も話し続けた。
「まずは手始めにテメェを殺す!んでもって次はあの憎き国王をぶっ殺す!そんでもって俺様を追い出した教団の奴らもぶっ殺す!最後にこんな世界を創った神をぶっ殺す!」
こいつは俺の叔父さんを殺す気だ……!だが、そんな事はさせない!絶対に!
素早い動作で大鎌を構えたバランドラに対し、俺は応戦するためにショットガンを抜き、戦闘態勢に入ったところで言葉に力を込めて言った。
「どうやらこの勝負……負ける訳にはいかないようだな……!」
「驕り高ぶってんじゃねぇ……さっさと死ねよ、オラァ!」
俺とバランドラは同時に駆け寄り距離を詰めると、互いに武器をぶつけ押し合いの状態に入った。
「キッド!」
後ろからサフィアの声が聞こえた。だが、その声が震えているのを感じた俺は振り返らずにサフィアに言った。
「心配するな!俺はすぐに戻ってくる!だから、俺を信じろ!」
俺は一瞬力を抜いて一歩下がると、長剣の連撃を繰り出した。対するバランドラも大鎌で俺の攻撃を受け流しながら大鎌を振る。その攻撃に対し、俺は長剣で受け流しながらバランドラに連撃を繰り出す。この激しい攻防が繰り返され、辺りに金属同士がぶつかり合う乾いた音が響いた。
「ギャハハハハ!テメェ死ね!あいつ死ね!教団死ね!人間死ね!魔物死ね!神死ね!てゆーか生きてるやつみんな死ねぇ!!グへへヘヘ!ワーイワーイ!ギャハハハハハハ!!」
「くっ!この野郎……!」
発狂してやがる……こいつ、とんでもない異常性格だ。
戦いの最中であるにも関わらず、不覚にもそんな事を思ってしまった。俺は一旦後方へ大きく跳びバランドラから遠ざかると、すかさずショットガンを連発。バランドラは咄嗟に大鎌の刃の部分を盾代わりに利用することで俺の攻撃を防いだ。やがてショットガンの弾丸が切れたが、バランドラはその隙を見逃さなかった。
「ハッ!銃ってのは不便だよなぁ!撃てる弾に限度があるんだからよぉ!それに比べて、俺様は撃ち放題だぜぇ!」
バランドラは大鎌を水平に振る構えに入り、その場で大鎌を振った。刃から放たれた三日月型の覇気が襲ってくる。
あの技か……!喰らって堪るかよ!
俺は左側に飛び込み三日月型の覇気を避けた。避けられた覇気は船の柵に直撃し、爆音と共に
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