「いやぁ、思ったより楽勝だったね」
「寧ろ……こっちは六人しかいないのに、手も足も出なかった方が不思議でならないな」
敵の海賊を一人残らず一掃し、勝利の喜びを噛みしめた。
ついさっきまで海上にて他の海賊に襲われたものの、巧みな戦術によって見事に返り討ちにしてやった。相手は約三十人程いたにも関わらず、私たちへの被害は皆無で誰一人として怪我を負ってない。寧ろ、敵の船にある食料や金品を手に入れる事が出来て大儲けとなった。
「さてと、敵は全員海に沈めた事だし、早速戦利品を取りに行こうか!」
「まぁ、あれ程の弱さだったら大して期待も出来ないがな」
そして私は隣にいる、茶髪で口元をマスクで覆ってる青年……バジル君と一緒に敵船に積んである食料や金品を取りに行く事にした。
バジル君は私と一緒に旅をしている頼もしい仲間だ。以前彼に出会った時からその頼もしさに惚れ込んで私からスカウトすると、バジル君も承諾してくれた。それからは私の海賊団の船員として一緒に海の冒険をする事に……まぁ海賊団と言っても、未だに私とバジル君の二人しかいないけどね。
ドォン!!
「フハハハハ!手応えの無い連中よのぉ!」
「あ、黒ひげさん!」
敵船のドアが乱暴に蹴り飛ばされると同時に、その奥から、黒くて長い髭を生やした巨体の人間の男……黒ひげさんが現れた。余裕綽々とでも言いたげな表情で、何やら大きめの革袋を肩に担いでる。どうやら船の中にある金品を根こそぎ盗って来たようだ。
黒ひげさんは世間から伝説と呼ばれている凄腕の海賊で、黒ひげ海賊団の船長を務めている。戦闘においても大剣を容易に振り回したり、爆発を起こす爆破魔法などを駆使するなど、もはや尋常じゃない程の強さを秘めている。
さっきまで私たちに襲ってきた海賊たちも、黒ひげさんが敵側にいると知った途端、蜘蛛の子を散らす様に逃げ回った程だ。まぁ、黒ひげさんの登場で敵の海賊たちも戦意を半分ほど失ったから、お蔭で戦闘が楽になったけどね。
「金品とかはそれで全部?」
「うむ。だが食料がまだ残っていてな、向こうにエルミーラたちがいるから、我の船に運ぶのを手伝ってやれ」
「はーい!」
補足すると、現在私とバジル君は黒ひげさんの海賊船『ダークネス・キング号』に乗せてもらい、暫くの間だけ同行させてもらう事になってる。
何故かと言うと、実は私はまだ自分だけの船を手に入れてない為、自由に海を渡る術が無いのだ。そして、自分の船が手に入るまでの間は黒ひげさんのところで厄介になる事になった。黒ひげさんも拒む事無く快諾してくれて、本当に有難い限りである。
「メアリー殿ー!バジル殿ー!近くにおるのなら手伝ってくれなのじゃー!」
「食料が予想以上に多くて、運ぶのに人手が要るのです!」
「…………援軍要請……」
すると、船の奥から三人の魔物の声が聞こえた。最初のはバフォメットのエルミーラさん、二番目のは龍の姫香さん、そして最後のはダークマターのセリンちゃんの声だろう。声の大きさかして、それ程距離は無さそうだ。
今の三人は、血は繋がってないけど黒ひげさんの娘でもある。三人共に黒ひげさんを父として慕っており、黒ひげ海賊団を支えている。
「うん!今行くから待っててー!」
「さっさと運ぶか……」
私とバジル君は、エルミーラさんたちを手伝う為に奥へ進んで行った…………。
〜〜〜数分後〜〜〜
「えっと、今回の収穫はこれくらいか……食料が意外と多めだね」
「つい最近になって他の海賊から取り上げたのだろうな」
「これで当分の間は食料には困らんじゃろう♪でもプリンとかチョコレートとかが一つも無いとはどう言う事じゃ?」
「お姉さま、それ一番必要無いものです」
「…………どれも新鮮……食べれる……」
「おお、ラム酒もあったか!満足、満足!」
敵船から食料を全てダークネス・キング号に運び終えた私たちは、船の甲板にて改めて戦利品を確認した。
通貨や宝石こそ少ないものの、新鮮な肉や魚などの食料は想像以上に多い。中にはラム酒や白ワインなども積まれてたようで、お酒が大好きな黒ひげさんは満足しているようだ。
「さて、そろそろ出発の時……皆の者!準備は良いか!?」
「おお!何時でも良いのじゃ!」
「仰せのままに!」
「…………ゴー……」
エルミーラさんたちの承諾を得て、黒ひげさんは懐から指揮棒を取り出して船と同じ方向を指す。
「ダークネス・キング号!いざ進むのだ!」
そして私たちを乗せてるダークネス・キング号が徐に前進し始めた。
ただ……敵側が受ける仕打ちは、金品や食料を奪われるだけではなかった……。
「……そろそろ良いか」
「あ、またやるの?」
「無論だ。では……」
パチン!
ドカァァァァァァァァァァァァァァァァァン!!
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