「今日から再出発だな……」
「そうですね……」
夜が明けてから翌日の午後二時……もうすぐ俺たちは冒険を続ける為に無人島から出航する予定だ。今現在、俺の仲間たちはブラック・モンスターにて出航の準備を進めている。
「なんだか色々あって大変だったが……貴重な経験になったよ」
「ええ、でも……私はもうキッドと離れ離れになるのは嫌です……」
ふと、俺と離れ離れになってた日を思い出したのか、サフィアは少しだけ表情を暗くした。
そこまで想ってくれてる妻を……もう悲しませる訳にはいかないよな。
「心配するな。俺はずっとサフィアの傍にいるからな」
「……はい!」
俺が優しくサフィアの頭を撫でると、サフィアは暗い表情をパッと明るくした。
やっぱり、サフィアの笑顔は何時見ても癒されるなぁ……。
「懐かしのダークネス・キング号!再びこの船で旅が出来るとは……!」
「やっぱり私たちの我が家は、このダークネス・キング号ですね!」
「…………ベスト・マイホーム……」
そしてブラック・モンスターの隣に停泊しているダークネス・キング号の甲板では、エルミーラ、姫香、セリンが心から感激していた。
やっぱり、自分たちの船で旅が出来るのは楽しいんだろうな。その気持ちは分かる。
「フフフ……あやつら、子供のようにはしゃぎおって……」
「お、黒ひげ、そっちはもう準備が出来たのか?」
「うむ、何時でも出航出来る」
すると、黒ひげがダークネス・キング号にいる娘たちを微笑ましそうに見ながらこちらに歩み寄ってきた。
「やっほー!キッド君!サフィアちゃん!」
「……フン」
「おう、メアリー、バジル」
そして黒ひげに続くように、メアリーとバジルも俺たちに歩み寄ってきた。
「いやぁ、もうそろそろ出航かぁ……海賊船で海に出ると思うと、なんだかワクワクするよ!」
「ああ……と言うか、アンタは他所の船に厄介になるだけだろ?」
「あはは……い、今はね!でも私だって大きい船を手に入れて、海を自由に旅するんだ!」
子供のような笑顔を見せるメアリーをからかうと、メアリーは苦笑いを浮かべながら後頭部を撫でた。
ただ、他所の船ってのは……また俺の船に乗る訳じゃない。
「でも、キッド君には色々とお礼を言わないとね。短い間だったけど、私を船に乗せてくれてありがとう!」
「気にするな。短かったが、俺もアンタと冒険できて楽しかったぜ。黒ひげに世話になった後でも、しっかりと頑張ってくれよ!」
「うん!暫くは黒ひげさんのところで頑張るよ!」
そう……メアリーとバジルは今日から暫くの間、黒ひげのダークネス・キング号に乗せてもらう事になったのだ。
メアリー曰く、今から黒ひげたちが向かう目的地はリリム……つまり自分の姉が統治しているらしい。しかも、その目的地は大変豊かな国らしく、大きな船も比較的安価な値段で買える可能性が高い。
なので、その姉に会う為に……そして自分たちの船を手に入れる為にも、目的地に着くまで厄介になるとの事。黒ひげとその娘たちも快く承諾してくれて、共に旅をするのを許してくれた。
「それにしても、まさかバジルがメアリーと一緒に旅をするとはなぁ……ちょっと意外だな」
「意外と言う程か?」
「まぁ、一応賞金稼ぎで通ってたからさ、金も給与されないのによく海賊と同行する気になったな……って思ってさ」
「俺は、俺がやりたいように生きる。ただそれだけだ」
「はは!生意気にカッコ付けやがって!」
こんな俺とバジルの何気ない会話を、メアリーは微笑ましく見守っていた。
バジルがメアリーの仲間になるって聞いた時は本当に驚いた。だが……驚いたのとは裏腹に、どこか納得している自分もいる。他の奴らはともかく、メアリーにだったらバジルも付いて行くだろうと思ってた。
なんて言うか、この二人……最近怪しいもんなぁ。もしかしたら近いうちに……そうなるかもしれない。
「……バジル、アンタとの決闘は楽しかったぜ。次に会った時には是非とも手合わせを頼むよ」
「……その時はリベンジを果たしてやる」
俺が徐に握り拳を突き出すと、バジルも拳を突き出して俺の拳に軽く当てる。その瞬間、互いに不敵な笑みを浮かべ合った。
「達者でやれよ!今度会うまでにくたばんじゃねぇぞ!?」
「貴様もな!」
互いに拳を戻し、何時の日か再び会う約束を交わした。
生きている限り、またバジルと会う日が来るだろう。だが、その時は俺も今以上に強くなっていなければならない。バジルと再び手合わせをする、その時まで……!
「私も短い間だったけど、キッド君たちと一緒に冒険出来て楽しかったよ。これから海賊団を作るのに色々と参考になったし……どうもありがとう!」
「まぁ、うちの船が参考になったんなら何よりだ。アンタが立派な海賊団を率いてくる日を楽しみに
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