第十六話 Last stage!

「……船長……さん……」

目の前で起きた惨劇が信じられなかった。
タイラントの爪に斬り刻まれて倒れている船長さんを目の当たりにしても……これが現実だとは思えなかった。

「キッド……キッド!!」

……あ!サフィアさん、ダメ!

「ダメです、サフィアさん!今は船から降りてはなりません!」
「楓さん、お願い!放してください!私をキッドの下まで行かせてください!!」
「落ち着いてください!船を降りたらタイラントに狙われます!」
「でもキッドが!キッド!キッド!!キッド!!」

悲痛な叫びを上げながら船長さんの下まで駆け寄ろうとするサフィアさんを必死に抑える。
本音を言えば、私だって今すぐ船長さんを助けたい。でもタイラントが傍にいる時に船を降りるのは非常に危険だ。
私一人ではあんな怪物に太刀打ち出来ないし……どうすれば……!

「あ〜あ、カッコ付けて死んじゃった。バッカみたい!」

タイラントは血まみれの状態で倒れてる船長さんを嘲笑った。あの冷酷な笑みからは恐怖しか感じられない。自分以外の者を完全に見下してる目としか思えない……。
あんな……あんな怪物に勝てるとは思えない。私たちは……どうすれば良いの?

「あっははは♪まずは一人片付いた!次は……あんただ!」

タイラントは船長さんの血が付いてる爪をメアリーさんに向けた。視線を移すと、メアリーさんは何時の間にか立ち上がり、険しい表情でタイラントを睨み付けていた。

「あっははは♪あんたも同じ目に遭わせてあげる!」
「くっ……!」

ドスドスと足音を響かせながらメアリーさんに近寄るタイラント。しかし、メアリーさんは一歩も動かずにタイラントを睨み付けている。

「待て!タイラント!貴様の相手は俺だ!」

すると、バジルさんがメアリーさんを庇うように駆け寄って、タイラントの前に立ち塞がった。激しく息切れしながらも、両手にランスを持ってタイラントを睨んでいる。

「あんたさぁ、あの海賊の無様な姿を見なかったの?あいつは自分を盾にして死んだんだよ?なんであいつと同じ真似をするのかなぁ?」
「すぐ傍に守りたいと思えるものがいるから戦えるんだ!貴様にはそういったものは無いのか!?」
「……くっだらない!昔話の読み過ぎなんだよ!現にあの海賊は守ろうとして死んだだろ!?」

タイラントは不快感を露わにしながら船長さんを指差した。

「……貴様は……あの男を甘く見ておるわ……」

黒ひげさんが仁王立ちしつつ剣の切っ先をタイラントに向けた。

「貴様はあの男を軽視した。それが貴様の失態よ……」
「はぁ?何言っちゃってんの?失態とか意味わかんないんだけど?むしろドジ踏んだのはあの海賊でしょ?」
「…………」

すると、黒ひげさんは無言でタイラントを睨み付ける。沈黙の時が経つにつれて黒ひげさんの目に力が籠められる。その様子に流石のタイラントも戸惑いを隠さずにいられなかった。


「……あと五秒……」
「は?」


黒ひげさんが急に手を挙げて指で数字の五を示した。
でも……あと五秒って……?


「四……」
「おい、なんだよ急に?」
「三……」
「なんだ?何する気だ?」
「二……」
「おい、なんか言えよ!」
「一……」
「おいコラ!無視するんじゃ…………」
「…………零!!」








「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」




スパァン!!



「グォォォォォォォォ!!?」
「!!?」


……一瞬の出来事だった。空から急降下してきた何かがタイラントに突撃した。そしてタイラントの銀色の角が切られ、鈍い音を立てながら地面に落とされた。


「……まさか、上空にいたなんて思わなかっただろ?」

聞き慣れた声が耳に伝わり、タイラントの角を切り落とした張本人が華麗に着地する。そしてその人はゆっくりと姿勢を正して不適な笑みを浮かべた。
私は……その人の姿を見た時、この目を疑わざるを得なかった。


「う、嘘だろ!?あんた、なんで……!?」
「悪いな。これも黒ひげの作戦なんでね」


タイラントも目を見開いて、自分の角を切断した人を見ている。
それも仕方ない事。何故なら、その人は……長剣とショットガンを持ってる人は…………!


「油断は禁物だぜ?タイラント!」



先ほどタイラントに倒された……キッド船長さんだから…………!



「そんな馬鹿な……!」
「おぅおぅ、思い通りに驚いてくれちゃって……」

上空から現れた船長さんを見るなり、タイラントは驚愕の表情を浮かべている。それもそうだ。何故なら、先ほど仕留めたハズの船長さんがこのようにピンピンしてるのだから……。

「じゃ、じゃあ……あいつは誰なんだ!?」

タイラントはすぐさま振り返り、血まみれになって倒れてる船長さんを凝視した。
そうだ。上空か
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