第十二話 勝利への道は閉ざされた!

「なんてことだ……!」

氷の島アイス・グラベルドの崖にて……遠くから悠々とこちらに向かってくる五隻の教団の船を目の当たりにして、俺はただ呆然とするしかなかった。
すぐ傍の海上では俺の愛船ブラック・モンスターに乗ってる仲間たちが教団と戦ってるというのに……!いくら俺の仲間たちでも、あの数をまとめて相手にするのは無理だ!
早く助けに行かないと!

「……ふん!教団の虚け共め……30年も経った今でも全くもって変わらぬようだな……!」

俺の隣に立ってる黒ひげは腕組みをしながらこちらに向かってくる五隻の教団の船を不愉快そうに見据えながら呟いた。

そう言えば……黒ひげは30年前に教団の勇者と戦った経歴があるんだった。という事は……黒ひげと教団には深い因縁があると言っても過言ではないな。
……って、そんな事思ってる場合じゃなかった!


「こうなりゃ全力で暴れまわってやる!行くぜ!!」


俺は足に力を入れて、勢いよく崖から跳び上がった!



みんな……待っててくれ!俺が必ず助けt



「待たんか!」




ガシッ!!




「え!?あ!ちょ、足を掴まれたら……!」



ヒュゥゥゥゥ……



ガドーーーン!!




「ほげーっ!!」
「うわっ!カッコわるっ!!」




急に足を掴まれたことにより空中で停止してしまい、勢い余って弧を描きながら崖の側面に全身で激突してしまった……。
てかメアリー!『カッコわるっ!!』って何だよ!『カッコわるっ!!』って!!

「全く、少しは落ち着かぬか…………」

よく分からないが黒ひげは半ば呆れながら俺を崖から引っ張り上げた。

「しかしまぁ、『ほげー』とは……ひょうきんな事この上ないな……ククク……!」
「アンタの所為だろーが!!」
「……カッコ悪い」
「二度も言われた!?」

崖の上で座り込む俺を見るなり、黒ひげは笑いを堪えるわ、メアリーは哀れみの視線を向けるわ、踏んだり蹴ったりとはこの事か……。

「……で、なんで止めたんだよ!?早く行かないと間に合わないだろ!?」
「だから落ち着かぬか。こんな状況であるからこそ冷静にならなければなるまい」

立ち上がりながら抗議する俺を黒ひげは両手を翳して宥めた。

……まぁ、確かにその通りだな。こんな時こそ冷静に…………。




ヒュゥン!




「ん!?」


突然、何か巨大な物体が俺たちの頭上を通り過ぎた。

「……あぁ!?あれは……!」

そしてメアリーが目を見開きながら海の方向を指差した。
メアリーの指差す方向へと視線を向けると…………!

「バジル!?」

なんと、バジルが巨大な鳥に乗ってブラック・モンスターに隣接してる教団の船に向かっていた!
そして…………!

「あ!見て!バジル君が教団の兵士たちと戦ってる!」

そう、バジルは教団の兵士たちを次々と海へ落とし始めた。まるで、俺の仲間たちに助太刀するかのように……!

「助けてくれるのはありがたいが、なんでこんな所に……?」
「分からない。でも、バジル君が戦ってるんだから、私たちも戦わないと!」

そう言うとメアリーは背中の翼を大きく広げ、空高く飛び上がり…………。


「バジル君!私が今行くから……」
「待てと言うておろうが!!」



ガシッ!!




「あ!ちょ、尻尾掴んだら……!」



ヒュゥゥゥゥ……



ベターーーン!!



「ぼべーっ!!」
「ええ!?カッコわりぃ!!」


急に尻尾を掴まれてビックリしたのか、翼に力が入らなくなった途端に空中で弧を描きながら崖の側面に……って俺と同じパターンかよ!!

「全く、この時代の若人はせっかちな奴ばかりであるな……」
「だってぇ…………」

黒ひげに崖の上まで引き上げてもらったメアリーは、ペタンと座ったまま頬を膨らませて不貞腐れた。

「しかしまぁ……貴様まで『ぼべー』とは……ククク……!」
「誰の所為よ!!」
「いやぁ、カッコ悪いなぁ……。うん、マジでカッコ悪い……」
「あー!三度も言ったぁ!しかも最後には『マジ』なんて付けたぁ!ひっどーい!!」

さっきのお返しとばかりに三度も言ってやった。
メアリー、これでアンタも俺の気持ちが分かっただろう……。

「……ゴホン!さて、下らぬ寸劇はさておき……」

黒ひげは軽く咳払いをしてから話を切り出した。

「良いか?貴様らが今すぐ駆けつけ、貴様の部下を助けたとしても、ここに向かって来てる五隻の船を相手にどう立ち向かうと言うのだ?」
「それは…………」

確かに、俺の仲間と戦ってる教団の連中を追い払ったとしても、こっちに向かって来てる五隻の船を相手にしなければならない。
正面から立ち向かうとしても、ブラック・モンスターだけで五隻の船を相手にするのには無理がある。逃げ回る手
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