第十話 蘇った伝説

「…………」

凍える程の寒さの中……俺はこれから行われるであろう蘇生の儀式を見守る事になった。
ラスポーネルの部下が描いた大きな魔方陣の中心に、黄金の髑髏と教団の勇者……タイラントの遺体が納められてる棺が置かれており、それを取り囲むように複数人の魔術師が真剣な面持ちで立っていた。
どうやら、あの黄金の髑髏……ソウル・スカルの中に封印されてるタイラントの魂を解き放ち、元の身体に戻そうとしているようだ。
だが、正直言ってそんな事が出来るのか疑問に思えてならなかった。


「……本当にあの女が蘇るのか?」
「まぁ、見ていたまえ」

俺は未だに疑わしく思ってるが……ラスポーネルは自信たっぷりと言った表情を浮かべていた。
そもそも、急に魂の話なんて出されても素直に受け入れられない。そんなオカルト染みた話を信じようとは思えないし、何よりも……死んだ人間は絶対に生き返らない。

……待てよ?ラスポーネルは何の為にこんな事をしてるんだ?仮にもこの儀式が成功したとしても、ラスポーネルには何か利益でもあるのか?

「……一つ聞きたい事がある」
「ん?何だね?」
「何故こんな事をする?この女を蘇らせたら……貴様に何の得があるんだ?」
「それは後で説明するよ。今はこの儀式の行く末を見守ろうではないか」

……何故こいつは話の核心を隠したがる?今ここで話しても問題無かろうに…………。

「ラスポーネル様!準備が整いました!」
「うむ、ご苦労!では早速始めたまえ!」
「イェス!ジェントルメーン!!」

どうやら準備が出来たらしく、ラスポーネルの部下が報告しに来た。そしてラスポーネルの了承を得た途端、魔方陣の周辺にいる魔術師たちがブツブツと何か呪文らしき物を唱えた。
そして………………大きな魔方陣が一気に光り輝き始めた!

「フフフ…………遂にこの時が……!」

儀式が始まった瞬間、ラスポーネルが勝ち誇った笑みを浮かべたように見えた。この不気味な笑みを見た瞬間、何故かは分からないが嫌な予感が頭を過った…………。



ガタガタガタガッ!



「……なんだ!?髑髏が震えてる!?」
「……そろそろだねぇ…………!」


魔術師たちが呪文を唱え始めてから少し経つと……いきなり髑髏が揺れ始めた。
まるで…………自分の中にある何かを解き放とうとしているように…………!
そして…………髑髏の口が開いた!





ヒュイイイイイン!!





そして髑髏の口から…………光り輝く球体が飛び出て来た。


まさか……あれが魂だと言うのか!?あの光り輝く球が…………タイラントの魂!?
だが……明らかに何かおかしい。


何故だ?何故…………二つも出てきたんだ?


「あ!」

そう思った瞬間、髑髏の口から出てきた一つの魂が空高く浮かび、物凄い速さで何処かへ飛んで行った…………。
あれは……一体なんだったんだ?タイラント以外の魂も封印されてたのか?
だとしても……一体誰の…………?

「どうやらオマケにもう一つだけ解放してしまったようだね」
「……アレは誰の魂だったんだ?」
「さぁ?吾輩も知らないねぇ。ま、あんなのは放っておいても問題ないだろう。それより……!」

ラスポーネルは意気揚々と棺の中にいるタイラントへと視線を移した。
そして、その上には光り輝く魂が…………!

「フフフ……さぁ、目覚めたまえ!女勇者、タイラント!」

ラスポーネルの叫びと同時に、魂が徐々にタイラントの身体へと潜り込んで行った……!
これで本当に蘇るのか?死んだ人間が本当に……!




「…………ぅ……ん……んん……」



突然、タイラントから声が……って、まさか!


「ぅん…………あ、あれ…………?」


……目の前で奇跡が起きた。死んでると思われたタイラントの目が開かれた。そして……上半身を徐に起こして周囲を見渡し始めた。
そんな馬鹿な……!本当に……蘇ったのか……!?

「おお!やった!やったぞぉ!伝説の勇者が蘇った!」

奇跡を目の当たりにしたラスポーネルは、喜びを表現するかのように何度も大きく跳び上がった。傍らで儀式を見守ってたラスポーネルの部下は驚愕のあまりに目を見開いている。

「ここは……あ、あれ?あなた達は……?」

そして、たった今目覚めたタイラントは俺たちの存在に気付いたようだ。だが、この状況を目にして戸惑いを隠せないでいる。
……と言うか、自分が死んでたと言う自覚はあるのだろうか?魂が身体と離れた状態って……どんな感じだったのだろうか?

「やぁやぁ、お初にお目に掛かるよ!偉大なる勇者様!貴方様のお目覚めを心より望んでおりました!」
「え?あ、あの……あなたは一体…………?」

上機嫌な様子のラスポーネルがにこやかな笑みを浮かべながらタイラントに話しかけた。対する
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