第九話 急展開!思いがけない対面

「ただいま帰りました……」
「あ!コリックさん、リシャスさん!どうでしたか!?キッドは見つかりましたか!?」
「いや、それが……街中を捜し回っても見つからなかった。待ちの住民たちも、何も知らないようだ……」
「そんな…………!」

キッドを捜しに行ってたコリックさんとリシャスさんが船に帰って来たものの、キッドは見つからず、有力な情報も手に入れられなかったようだ。
私は今までピュラと共に船を出ていたので、詳しい状況は把握できていないけど…………キッドがラスポーネルと名乗る海賊の下へ一人で向かったそうだ。

なんでも、キッドはラスポーネルに攫われた私を助ける為に、秘宝を持って一人で向かったそうだけど……。
当然ながら、私は攫われてないし、ラスポーネルなんて人には一度も会った事が無い。
つまり……キッドは騙されたと言う事になる。

嫌な予感がしたヘルムさんとオリヴィアさんは北の海岸へ向かったのだが…………そこには誰も居なかった。
その後も船の仲間たちと総出でキッドを捜し回るものの、未だにキッドは見つからず、情報も何一つ得られないでいた。

「あぁ……どうしよう……キッドに何かあったら……私……私……!」
「大丈夫よ、サフィアちゃん。船長さんならすぐに見つかるから落ち着いて」
「お姉ちゃん…………」

キッドが姿を消した後から、不安になり過ぎて平常を保てないでいる。傍に居るシャローナさんが落ち着かせてくれたり、ピュラが心配そうな表情で私を見つめるも、今はキッドの事で頭が一杯になってる。

「う〜ん……それにしても、情報が皆無と言うのも辛い……せめて目撃情報だけでも……!」

ヘルムさんがひどく困った表情で言った。
確かに……キッドが何処にいるのか誰も分からないのはキツイ状況でもある。現時点でキッドが何処にいるのかさえ分かれば…………!





バサッバサッバサッ!






「…………え?」



突然、上空から翼を羽ばたかせる音が響いた。
鳥が真上を飛んでるかと思ったけど……それにしても妙に音が大きい。
それに…………少しずつこちらに向かって来てるような…………。

「……あ!あれは……まさか!」

ヘルムさんが驚いた様子で上空を見上げてる。
その視線を追うように私も空を見てみると…………そこには…………!


「……ここに居たか…………」


巨大な隼に乗った青年がこちらを見下ろして…………って、この人は……まさか……!


「お前は…………バジル!」


ヘルムさんの発言と同時に、バジルを乗せた隼は華麗に船の甲板に着地した。

「……突然だが……今回は貴様らに用件があってここに来た」
「……用件?」

バジルは真剣な面持ちで隼から下りながら言い出した。
用件って…………まさか、キッドの首を狩る為にここまで来たの!?

「……生憎だけど、キッドなら此処には居ないよ。僕らの船長の首が欲しいのだったら、お引き取りを願うね」

ヘルムさんが警戒しながらもバジルに言い放った。しかし、バジルは鼻で笑ってから言い返した。

「言われなくても……奴が此処に居ないのは分かってる。もう既にこの島から出てってるからな」
「……出てってる!?」

一瞬だけ耳を疑ってしまった。
出てってるって事は……もうこの島にはいないの!?
と言うか……その言い方……まるでキッドがどうなってしまったのか知ってる口振りに聞こえる。

「今の、どういう事ですか!?キッドは何処にいるのですか!?あなたは……何か知ってるのですか!?」
「サフィアちゃん落ち着いて!あの男に近寄っちゃダメよ!味方って訳じゃないでしょ!」

思わず駆け寄って訊き出そうとしたら、シャローナさんに肩を掴まれた。
味方ではない事は分かってる。でも、キッドの事を想うと……身体が勝手に…………!

「気持ちは分かるが……まずは落ち着け。これから俺が知ってる事を全て話してやる」

……そうね、まずは冷静にならないと…………。
宥めるような口調で言われて冷静になると、バジルは小さく頷いて話し始めた。

「さて……奴が此処に居ない理由は…………ラスポーネルと言う海賊に騙されたのだろう?」
「え?」
「詳しく言うと……キッドはラスポーネルに騙されて、黒ひげの秘宝である黄金の髑髏を渡してしまったと…………」
「ちょ、ちょっと待て!なんでそんな事まで知ってるんだ!?」

バジルが話してる途中で、ヘルムさんが動揺した様子で口を挿んだ。
確かに……バジルがそこまで詳しく知ってるのはかなり不自然な気がする。さっきまで船に居た訳でもないのに…………。


「その理由は後で話す。問題はキッドがラスポーネルに秘宝を渡した後だ…………良いか?心して聞け……」


バジルは一呼吸置いてから……静かに、重々しく言った。


「あいつ
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