「……バジル君、それ本当かね?」
「ああ」
外がすっかり暗くなってる最中……俺は魔力鳥、ウィング・ファルコンでラスポーネルの拠点に戻った後、ラスポーネルに事の成り行きを報告した。豪華な椅子に座りつつ、いきさつを全て聞き終えたラスポーネルはマヌケな程に口をあんぐりと開けていた。
「……では、黒ひげの秘宝は持ってないのかね?」
「持ってたらとっくに出してる」
「だよね〜アハハハハ……」
ラスポーネルは哀愁漂う笑い声を上げたかと思うと…………
「あー!もうヤダ!なんで秘宝が手に入れられない上に負けちゃうのかね!全く、吾輩にはどうしても秘宝が必要だってのに!」
いきなり椅子から立ち上がり地団太踏んだ。
……突然笑ったり、怒ったり、忙しい男だな。
と言うか……一時的な契約であろうと、こいつに雇われたのが間違いだったのかもしれない。
……いや、そうでもないな。こいつに雇われてなかったら…………キッドに会えなかったかもしれない。あの男は、そこいらの海賊とは一味違う奴だった。部下を宝と呼び……本当に変わった男だった。無論、良い意味でな。
これから出会う機会があるのだとすれば……楽しみなものだ。
「ラスポーネル船長!緊急速報です!」
突然、ラスポーネルの部下の一人が大慌てでラスポーネルの下へ駆け寄った。
こいつは確か……俺と同行してた魔術師だったな。何があったんだ?
「……なんだね?言ってみたまえ」
「はっ!実はですね……」
魔術師はラスポーネルの耳元でヒソヒソと何か伝えた。そして魔術師の話を聞いてるラスポーネルはみるみる顔を強張らせていった。
「……な、なにぃ!?それは本当かね!?」
「はい!更にですね……!」
ひどく動揺しているラスポーネルに、魔術師は再びヒソヒソと何かを伝えた。
「……なななんとぉ!?マジなのかね!?マジのマジの大マジなのかね!?」
「はい!間違いありません!」
随分と驚いた様子で訊き返すラスポーネルに対し、魔術師は真顔で大きく頷いた。
二人の様子からしてかなり重要な内容なのだろうな。まぁ、俺が知った事ではないがな。
「……フム……成程……フ、フフフ……」
突然、ラスポーネルは何かを考え込む仕草を見せると口元をつり上げて不気味な笑みを浮かべた。
この表情……何か良からぬ事を企んでるな。全く、悪知恵だけは一人前だな。
「フフフフフ……どうやら幸運の神は吾輩を見捨ててなかったようだねぇ!」
ラスポーネルは勝利を確信したような笑みを浮かべると、愛用のステッキを部下の魔術師に向けて命令を出した。
「君、早速だが吾輩の部下をここに呼びたまえ!全員集まり次第、緊急会議を開くよ!」
「イェス!ジェントルメーン!!」
魔術師は奇妙な叫びを発すると、いそいそとその場から去って行った。
緊急会議だと?何を企んでいるんだ?
「ああ、バジル君。今回の任務、ご苦労であった。君には特別に休暇を与えてあげようではないか」
「……は?休暇だと?どういう風の吹きまわしだ?」
こいつは突然何を言い出すんだ?全く、こいつの考えてる事が全く持って理解できない。
「いやまぁね、とっても賢い吾輩がね、とっても素晴らしい計画を思いついちゃったのだよ」
「計画?」
「ウム!でも生憎な事に、バジル君は今回の計画に必要無さそうだからねぇ。だから特別に少しばかりの休暇をあげようと思ったのだよ」
……つまり、俺の出番は無いから適当に過ごしてろって事か。
まぁ、別に文句は無い。ハッキリ言って面倒な計画に付き合わされるくらいなら、適当にその辺をうろついた方がよっぽどマシだ。
「……異論は無いが、その計画とやらはどんなものだ?」
「おおっと!いくら手を組んでる者だとしても、計画と関係を持たない者にペラペラと喋る訳にはいかないよ」
俺の質問に対し、ラスポーネルは片手を翳して拒否の意を示した。
慎重なのか……意味も無く話したくないだけなのか真意が分からない。
なんとなく自分から訊いておいてアレだが……そんなに興味は無い。勝手にやれば良いだけだ。
「さて、これは今日までの働きの報酬だ。これを受け取って思う存分休暇を楽しみたまえ」
そう言いながら、ラスポーネルは懐から小さめの革袋を投げ渡してきた。
俺が革袋を受け取ると同時にジャラリと金の音が響き、一応袋の口を開けて中身を確認してみると、多めの金貨が詰められていた。
ふむ、金額は許容範囲だ……とりあえず受け取っておこう。
「……俺はこれで失礼する」
報酬も受け取った事だし、俺はこの場から去る事にした。
踵を返し、ラスポーネルに背を向けて外へ出ようとしたところで…………
「……もうすぐだ……もうすぐ吾輩の野望が…………!」
「なんか言ったか?」
「いやいや、何でもないよ。アハハハハ
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