「おぉ!ここね……!」
私はようやく目的のダンジョンまで辿りついた。見たところ、入口は石造りで如何にも秘宝がありそうな感じがする。
この中に究極の秘宝があるかもしれない……よし!早速行ってみますか!
「ハァ、ハァ……おい!急げ!」
「……ん?」
ふと、ダンジョンの奥から人の声が聞こえた。そして徐々に足音らしき音が大きくなり、こっちに向かって来てるのが聞き取れる。
あれ?もしかして……誰かに先を越されちゃった!?うそぉん!?って、ここで立ってる場合じゃないわ!速く隠れなきゃ!
私は慌ててダンジョンの門の縁に隠れてその場をやり過ごす事にした。暫く身を隠していると、三人の人の声が聞こえた。
「ハァ、ハァ……全く、豪い目に遭ったぜ……!」
「ホント、帰るのがこんな命がけとは思わなかったわ……」
「私……もうこんなダンジョンには入りたくないです!」
これは……男の人と女の人?女の方は二人みたいだけど……?
私は見つからないようにそっと顔を出して声の正体を確認した。
「……え!?あれって……」
私が見たのは……一人の背が高くて若い男の人と、白衣を着た青い髪のサキュバス、そして綺麗な着物を着た稲荷だった。ただ、あの身なりからしてこの島の住人って訳じゃないみたい。
特に男の人……何やらシー・ビショップの魔力を感じるわ。もしかしてインキュバスかな?でも何故こんな所に?
「全く、秘宝を探しに来てみたらこのザマだ……!」
「まぁ、無事に帰ってこれたんだから良かったじゃない」
「そうですね……速く海賊船に帰りましょう」
……えぇ!?秘宝!?まさか、ホントに先を越されちゃったの!?
それに今、あの稲荷の女の子、海賊船って……まさかあの人たち、海賊!?
……まてよ、たった今ダンジョンから帰って来たって事は…………もう秘宝を手に入れちゃったの!?
「よし、今日はもう疲れちまったし、速く帰って……」
カチッ!
あれ?気のせいかな?今何かカチッって音が……
ポンッ!
「うぉ!?な、なんじゃこりゃ!?」
突然、ダンジョンの入り口にいる三人の足元から白い煙が小さく噴き出てきた。
「な、なんか……眠く……なって……」
「最後の……さい……ご……で……」
「も、もう……ダメ……眠い……です……」
煙を浴びた三人は一気に全身の力が抜けてその場で倒れてしまった。
……あ、あれ?もしかして……寝ちゃった?
「……そぉ〜っと、そぉ〜っと……」
私はゆっくりと倒れてる三人の海賊たちの下へ歩み寄って様子を見てみた。
「……ぐぅ〜……ぐぅ……」
「あら、お寝んねしてる」
倒れた海賊たちは完全に寝てた。
成程、そう言う事か。地面から噴き出たのは煙状の眠り薬だったのね。
それで、運悪くそのトラップを踏んじゃったって事か…………。
「……それよりも……この人たち……」
秘宝手に入れたのかな?
それだけが気がかりだった。本当に手に入れたのかもしれないし、もしかしたら途中で諦めて引き返したのかもしれないし……。
「う〜ん……」
……念の為……調べちゃおっかな?
この人たちの持ち物を調べて、秘宝があるか無いかを確認しよう。ダンジョンに入るのは、その後でも大丈夫だよね。
「それじゃ、失礼しま〜す♪」
まずは、この男の人から調べよう。
私は男の人の持ち物を調べようと、徐に手を伸ばし…………
「何をしている?」
「ひょえ!?」
突然、背後からガシッっと腕を掴まれた。不意の出来ごとに驚きながらも、私は腕を掴んだ人物へと振り向いた。
「コソ泥め……どういうつもりだ?」
そこには、高貴な服を纏い黒色のマントを羽織った女の人が立っていた。
この人……もしかして、ヴァンパイア?でも、なんでこんな所にいるの?それに今、夜じゃないのに……。
「えっと、もしかして君、ヴァンパイア?」
「もしかしなくても、ヴァンパイアだ」
「で、でも今は夜じゃないよね?外に出ちゃって良いの?」
「空を見てみろ」
腕を掴まれたまま私はヴァンパイアに促されるままに空を見上げた。
「…………」
「どうだ?天気の調子は?」
「えっと……お世辞にも良い天気とは言えないね……」
「そう言う事だ」
今の天気を見て事情を理解出来た。空には黒い雲が空一帯を覆っていて太陽の光を完全に遮ってる。それに忘れてたけど今は夕方で、もうすぐ辺りが暗くなる頃合だった。
「では、次は私の質問に答えて貰おう。今そこで呑気に寝ている三人組は私の旅の同行者だが……何故こんな事になってる?」
「え?この人たち、君の仲間なの?」
「ああ、そうだ。で、何故こんな事になっている?」
そう質問してくるヴァンパイアは完全に疑いの眼差しで私を見つめていた。
うわぁ……なんだか疑われてるよ……私がやったんじゃ
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