ここは……どこ?
私は今、自分がいる場所も正確に把握出来ず、辺りを見回していた。
視界に映るのは、辺り一面雪に覆われた雪原のみ。足元は険しく、立っているのが精一杯の状態だ。
……ここは氷山の一角かしら?それなら、この真っ白い景色を目の当たりにしても合点がいく。
……いや、それでも何かおかしい。少なくともこの場所の気温はかなり低いハズ。
それなのに……寒くない。否、寒いどころか、感覚が無い。まるで全身に麻酔でも打たれた様に……感じるべき物が感じない。
何なの……これは……?それに……ここは……一体……?
ドカァン!!
「!?」
突然、背後から何かが爆発する音が聞こえた。何事かと思い、反射的にその場を振り返ってみた。
そこでは、広い雪原に巨大な亀裂が出来ていた。更に、亀裂は徐々に開き、やがて一定の大きさにまで達するとピタリと止まった。
……次の瞬間、信じられない光景を目の当たりにした。
「……な……な、何!?」
巨大な亀裂から……ゆっくりと何か巨大な物が浮かび上がって来た。そして、その巨大な物の正体を目にした瞬間、私は驚きで言葉を失った。
それは……誰がどう見ても……巨大な人間の男だった。
威圧感漂う鋭い目つき、胸元まであろう長い髭、更に右頬に刻まれている×印の傷。この巨人の姿を見た瞬間、私は体中を何かの感情に支配された気がした。その感情は……恐怖と言った方が良いか。
「……フ……フハハ……フハハハ……!」
「……?」
「フハハハハハハ!」
突然、巨人が大きく口を開いて笑い出した。その巨大な口から見える異常なまでに汚れた歯が、より一層巨人の恐怖を漂わせる。
その巨人の姿に呆気に取られている……その時!
ブオォォォォォ!!
瞬く間に景色が変わった!
さっきまでは辺り一面雪で覆われた雪原が、勢いよく燃え盛る火の海へと変貌した。しかし、こんな業火の中にいるにも関わらず、感覚が無い事は変わらず、熱いとは感じなかった。
「我は最強!我は無敵!命の灯火を消したくなければ、我に従え!我に刃向かう物は、死あるのみぞ!」
巨人は天に向かってそう言い放つと、徐に片手を私に向けて翳した。そして、その手の平から徐々にどす黒い覇気が収束されていく。
……まさか……まさか……まさか!!
嫌な予感が頭を過り、すぐに逃げ出そうとしたが、足が思い通りに動かなかった。足元に視線を移したが、そこには何も無かった。
一刻も早くこの場を離れたい。しかし、その意思に反抗するかのように、自分の足は微動だにしない。
何で?何で動けないの?このままじゃ、私……!
「死ねぇ!!」
巨人の無情の叫びと同時に、どす黒い覇気の球体が私に向かって飛んで来た……!
「キャアッ!!」
……小さな叫びと同時に、私はベッドから飛び起きた。小さく息を切らしながらも、落ち着いて部屋の中を見渡してみる。小さくてシンプルなテーブル、その上に置かれてる私のバッグ、装飾が施された照明、そしてチェック柄のカーテン。この部屋を見渡す次第に、私の昨日までの記憶が戻ってきた。
「……夢……か……」
そっか……昨日からホテルに泊ってたんだった…………。
目覚めたばかりでぼんやりしつつも、徐にベッドから降りて大きく伸びをした。そして窓のカーテンを開き、太陽の日差しを浴びてばんやりしている意識を覚醒させた。
「う〜ん!爽やかな朝!」
青い空、白い雲、小鳥の囀り、爽やかな朝を迎えるには最高のシチュエーション!
……のハズだった。
「……でもないわね……はぁ……」
ふと、さっきまで見てた悪夢が脳裏を過り、一気にテンションを落とされた。
あんな夢さえ見なければ文句ないんだけどなぁ……。
あの悪夢を振り返り、私は胸にざわつく妙な胸騒ぎを感じた。
夢で見たあの巨人、今まで見た事も会った事も無かった。でも、夢とは言えあの威圧感、そして只ならぬ恐怖……もはや夢だけで済むとは思えない……。
って、考え過ぎよね!所詮夢は夢、あり得ないものを見るのは当たり前。それに、今の時代においてあんなデカイ男が存在する訳無いわ。これ以上深く考えるのは止めましょう。
さてと、正体がばれる前に速く着替えて出かけよう!ここは反魔物領だから、厄介な事が起きる前に退散しなきゃ!
私はそそくさと備え付けの大きな鏡の前に立ち、普段着に着替え、愛用のバンダナを頭に巻いて身だしなみを整えた。
「うん!今日も決まってる!さて……!」
鏡の前で身振りを確認し、テーブルの上に置かれてるバッグの中から地図を取りだした。
「次の目的地は……ここね!」
私はこの国から北東に位置する、×印が付けられてる島を指差して目的地を確認した。
この印が付いてる島に
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