ドクター・シャローナ 〜出会いと別れ、そして愛〜

ここは、新魔物国の中心部に位置する繁華街。街中は、様々な魔物や人間で賑わってて活気に溢れていた。

「さて、速く帰らないと……」

私ことシャローナは、街で必要な医療品を買い揃え、着てる白衣が風に靡きながらも、仲間たちの船が停泊している海辺へ足を進めた。

サキュバスである私は、こう見えて世界を旅して回る医者……と言っても、ただの冒険者ではない。キッド・リスカードって言う名前の青年、通称キャプテン・キッド率いる海賊団の船医として旅をしている。

海賊と言えば、世間から見れば略奪を繰り返す無法者のイメージが定着してるけど、船長さんは違う。無闇に人を傷付ける事を嫌い、一般市民や商船には絶対に手を出さない。更に、優しくて仲間想い。そんな船長さんの人柄から彼が率いる海賊団のクルー全員が彼を慕っている。
海賊の船医は決して楽じゃないけど、それでも大きな不満は無い。世界中を旅する生活はそれなりに充実している。

「……ん?」

ふと、視線がとある方向へ移った。そこには、白馬の下半身を持つ女……ユニコーンが両手にリンゴの入った袋を持って歩いていた。ただ、あのユニコーンはどこか変わった様子だった。お腹の辺りが……異常なまでに膨らんでいた。

あの人……もしかして……お腹に子供が……

「きゃあっ!?」
「!!」

突然、ユニコーンが足を躓いた。

「……ああ、やっちゃった……」

幸い、ユニコーンは転ばずに済んだものの、前のめりになった拍子に袋から大量のリンゴが路面に転がった。体勢を立て直したユニコーンは慌ててリンゴを拾い始める。

……よし!私も手伝おう!

「大丈夫?」

私はユニコーンの下へ駆け寄り、転がったリンゴを拾うのを手伝った。

「あ、すみません…………」

私に気付いたユニコーンは拾ったリンゴを袋に戻しながら頭を下げた。私も拾ったリンゴをユニコーンが抱えてる袋に戻す。やがて、路面に転がったリンゴを一つ残らず袋に戻し終えた。

「……はい、これで全部ね?」

私の問いかけを合図にユニコーンは転がったリンゴを全部袋に戻したのを確認して、私に深々と頭を下げた。

「本当にありがとうございます。助かりました……」
「いいっていいって!でも、お腹に大事な子供がいるんだったら、あんまり無茶しちゃダメよ?」

お節介ながらも、私はユニコーンに注意した。
余計な老婆心かもしれないけど、妊娠中に重たい荷物を持つのは母体に響く。目の前に無茶をしている人を見ると、つい口が出てしまう。これも医者の性分かもしれないけど……。

「ごめんなさい……今日は夫が帰ってくる日だから、彼の大好物のアップルパイを作ってあげようと思って……」

ユニコーンは少し照れながら答えた。
ああ、成程。それでこんなに大量のリンゴを……いや、それにしても……。

「アップルパイ一つ作るのに、こんなにリンゴが必要なのかしら……?」

咄嗟に頭に浮かんだ疑問を言うと、ユニコーンは顔を真っ赤に染めニヤニヤしながら言った。

「やっぱり買い過ぎだと思いますぅ?でもでもぉ、私の夫は貿易船の乗組員で、仕事の為に長い間出かけるんです
#9829; 家の為に頑張ってくれてる旦那様を想うと、せめて彼の好きな物だけでも食べさせてあげたいと思ってつい……」

……あらら……完全にお惚気状態ね……。

「……あっ!ご、ごめんなさい!私ったら……」

正気に戻ったユニコーンは慌てて私に謝った。
デレデレしたり、謝ったり、忙しない子ね……ま、結構可愛いけど。

「では、ご迷惑をおかけしました。それでは、失礼します……」
「あ、待って!」

私はその場を立ち去ろうとするユニコーンを呼び止めた。呼び止められたユニコーンはキョトンとした表情を浮かべながら私を見つめた。
目の前で重たい荷物を持ってる妊婦を見過ごしたら、医者として心許ない。だから……

「一緒に運んであげる♪」
「え?え?」

戸惑ってるユニコーンに形振り構わず、私はユニコーンのリンゴの袋を一つ持った。それに対し、ユニコーンは申し訳無さそうな表情を浮かべながら言った。

「そんな……これ以上ご迷惑をかける訳には……!」
「言ったでしょ?妊娠してるんだから無茶したらダメだって」
「でも……!」
「いいのいいの♪あ、でも……どうしても嫌だったら止めるけど……?」
「い、いえいえ!嫌だなんて……」

ユニコーンは慌てて弁解し、少しの間考える素振りを見せ、やがてほんのりと温かい笑みを浮かべながら答えた。

「では……お願いします」
「ウフフ……それじゃ、家までの案内お願いね♪」
「はい!」

ユニコーンは明るく返事をして歩き出そうとしたが、突然止まって私に向き直って問いかけてきた。

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私、ユリアと申します」

そう言っ
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