「ん〜……ふぅ……」
ここは、日の本と言う島国の一部の領、尾張。その中心にそびえ立つ城の内部にて、畳が敷かれた自室で古文書を読んでいた私は、持っていた本を机に置いて軽く伸びをした。本の内容に夢中になってしまい、気付いた時には二時間も経っていた。
古文書を読んだ私、明智光秀は、昔の偉人たちに感服した。昔の時代に生きた人間や魔物が築いてきたものは、今の時代へと受け継がれ生かされていく。歴史に名を残した人間や魔物の偉業は忘れ去られる事無く、こうして多くの者たちに知られる。
そして、この時代において活躍した者の名も後世へと語り継がれるだろう。人間の男である私など問題外ではあるものの、あの方なら必ず歴史に名を残すだろう。
そう、『あの方』こそ、歴史に名を残す……
「うわぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁ!!」
突然、遠くから断末魔の様な悲鳴が聞こえた。
何だ!?今の叫び声、城下町の方向から聞こえたような……!?
「光秀様!光秀様!」
部屋の外から私を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。
「そちらに入ってもよろしいですか!?」
この声は……蘭丸か?何やら慌てふためいてるようだが……まさか、今の叫び声と関係のある事か?
「ええ、どうぞ」
疑問に思いながらも、私は部屋の外にいる蘭丸に返事をした。
「失礼します」
静かな声と共に部屋の襖が開けられ、私の予想通り、森蘭丸が部屋に入って来た。
森蘭丸はアルプと呼ばれる魔物であり、『あの方』に仕える小姓でもある。手際が良く、誰にでも優しい性格から、評判の良い小姓として有名な魔物だ。
「どうしましたか?何やらただ事ではないようですね……?」
私が話を促すと、蘭丸は興奮気味に報告した。
「城下町にて盗賊が暴れています!城の兵士たちが応戦していますが苦戦している模様!どうか、助太刀の程を!」
……成程、あの悲鳴は民の人たちか。呑気に読書なんてしてる場合じゃないな。しかし参ったな……こんな時に城の主である『あの方』は外出中だと言うのに……ここは何とかするしかないか。
「城にいる方々には報告したのですか?」
私は素早い動作で立ち上がり、部屋の脇に立てかけられている愛用の刀を腰に掛けながら蘭丸に訊いた。
「はっ!先ほど羽柴秀吉様、柴田勝家様にも報告しました!お二方は既に応戦へ向かっているかと!」
秀吉殿と勝家殿も向かわれたのか……ラージマウスの羽柴秀吉、アカオニの柴田勝家、魔物である二人に限って盗賊ごときに負けるとは思えないが、任せてばかりでは心許ない。
もしかしたら、戦ってる最中に喧嘩してるかもしれないし……
「了解しました。私もすぐに駆けつけます。」
それだけ言い残し、私は急いで城下町へ赴く為に部屋を出て走り出した…………。
〜〜〜数分後〜〜〜
「おりゃあ!どんなもんだい!」
「威勢が良い割には大した事ないねぇ!」
私が城下町に駆け付けた時には、既に秀吉殿と勝家殿が大勢の盗賊を相手に奮闘していた。秀吉殿は持ち前の俊敏の良さを生かして盗賊たちを蹴り飛ばし、勝家殿は愛用の金棒を振り回して盗賊たちを叩き潰していた。
「やっちまえ!秀吉様!ぶっとばせー!」
「勝家様!今のあなた、かっこ良すぎる!」
その二人の雄姿を見守りながら、周囲にいる民たちが声援を送っていた。
相も変らぬ見事な腕前……加勢など必要無かっただろうか?
「畜生!こうなったら、このネズミだけでも……!」
……いや、そうでもないか。
「させません!」
私は全速力で走り寄り、秀吉殿の背後から刀で斬りかかろうとした盗賊の男を、刀を引き抜くと同時に斬り倒した。
「ぐぉあ!?」
悲痛な悲鳴を上げながら盗賊の男はその場で崩れ落ちた。
少々力を入れたが、峰打ちだから死にはしないだろう。
「お!光秀の旦那!助太刀、感謝しやす!」
私の存在に気付いた秀吉殿は無邪気な笑みを浮かべながら礼を言った。
「たかが盗賊共が相手とは言え、ご油断召されるな、秀吉殿」
「えへへ……すんません」
秀吉殿は愛想良くペロッと舌を出しながら謝った。
この愛嬌の良さから『あの方』をはじめとする多くの人に慕われている。
ただ……勝家殿は違うようだが……。
「光秀!ハッキリ言って、こいつら雑魚だ!そんなネズ公は放っておいて、速く全員懲らしめちまおうぜ!」
盗賊たちを金棒で殴り飛ばしながら勝家が大声を上げた。
流石は勝家殿、武において彼女ほど頼もしい方はいない。
ただ……秀吉殿を嫌っているようだが……。
「テメェ!明智光秀だな!その首、斬りおとしてやる!」
盗賊の男が刀を構えながら私に襲って来た。
甘く見られたものだ……しかし!
「遅い!」
男の刀が振り下ろされる直前に、私は男の首元に峰打ちを当てた。男は痛みで顔を歪めながら
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