「……釣れねぇな……」
「……釣れないね……」
晩飯を食べ終えた後、俺とヘルムは船の甲板にて夜釣りをしていた。
が、釣りを初めて2時間は経ったが、一向に釣れる気がしない。
「はぁ……小魚でも良いから釣られてよ……魚が食べたいのに……」
「晩飯食った後で、よく食べたいなんて言えるな」
「だってさ、最近肉料理が多いと思わない?食事のメニューに不満がある訳じゃないけどさ、たまには魚も食べたいでしょ?」
「肉でも良いじゃねぇか。俺たち海賊は、しっかり体力を付けないと。それに、肉は俺の好物だし」
「僕は肉より魚が好きなの」
こんな他愛も無い会話が繰り広げられる最中、俺たちの後ろから楓とリシャスが声をかけてきた。
「船長さん、ヘルムさん、何か釣れましたか?」
「ふん、その様子じゃ、小魚一匹ですら釣れてないようだな」
「ああ、見ての通り不調だよ」
俺は現状を正直に答えた。すると、リシャスがフンッと鼻で笑った。
「やり方が古いから釣れないんだ」
リシャスは腰に掛けてるレイピアを鞘から抜き取り、クルクルと片手で回すと……。
「ハッ!」
海に向かって一直線に投げ飛ばした。
「お、おい!何やって……!」
「黙って見てろ」
得意げな笑みを浮かべたまま、リシャスはクイッと片手の人差し指を自分の方へ曲げた。
すると、海へ投げられたレイピアが円を描きながらリシャスの手に戻って来た。
……五匹の魚が串刺しにされてた。
「これが新しい魚釣りだ」
リシャスは魚が刺さったレイピアを高々と掲げながらドヤ顔を見せた。
……いや、確かに魚は捕れたが…………。
「そりゃ、釣るって言うより刺してるだろ、銛みたいに」
「この方が一気に複数の魚が捕れる。一石二鳥だ」
「まぁ、そりゃそうだが、釣りってのは、こう……魚が釣れるまでのワクワク感ってのが……」
「負け惜しみなど見苦しいぞ」
……ああ、そうだよ、どうせ負け惜しみだよ…………。
もはや言い返す気力も失せてしまった。
「……リシャス、今度からそうやって魚を捕るのは禁止な」
「なんだと!?そんなに悔しいのか!嫉妬も良い所だぞ!」
「そうじゃない。魚どころか海に住んでる魔物にまで刺さったらどうするんだ?」
「うっ……!」
俺の反論に対し、リシャスは何も言い返せなかった。
確かに良い方法かもしれないが、海の魔物たちに巻き添えを喰らわせてしまったら申し訳が立たない。
「……全く、小言の多い船長だ……!」
「まぁまぁ、捕れた魚は私が美味しく料理して差し上げますから」
「う、うむ…………」
楓は優しい口調でリシャスを宥めた。そしてリシャスはレイピアに刺さった魚を俺の釣り籠に移した。
「……あ!キッド!引いてる、引いてる!」
「何!?」
ヘルムに呼ばれて視線を釣り竿に戻すと、釣り竿が海中に向かって曲がっていた。
おお!やっと来たか!
「よっしゃあ!釣ってやる!」
俺は釣り竿を力いっぱい引き上げ魚を引き寄せた。
手応えはかなりある。これはデカイぞ!
落ち着け、集中、集中だ……!
「敵船だー!!」
……何!?敵船!?
「あー!逃げられた!」
俺が気を逸らしてるうちに、魚が餌を食った後に逃げてしまった。
ああ!もう!釣れそうだったのに!
「敵はどこにいるんだ!?」
いつの間にか釣り道具を片づけていたヘルムがマストに立ってる見張り番の仲間に言った。俺もすぐに釣り道具を片づけた。
「船の真正面からこっちに向かって来ます!」
見張り番は船の進路方向を指差して言った。その方向を見ると、一隻の船が遠くからこっちに向かって来るのが窺えた。
マストに立ってるあの旗……ドクロが描かれてる。と言う事は、俺たちと同じ海賊か!
「……ねぇ、キッド」
「ん?」
「あの海賊たち、何か……おかしくない?」
「……?」
おかしい?おかしいって…………?
俺はこっちに向かって来る海賊たちの様子を窺った。
……何だろう、確かにおかしい……。どこか慌てふためいてるし、怯えてるし……。
「お、おい!ヤベェぞ!海賊が来るぞ!」
「くそっ!こんな時に!なんて最悪なタイミングなんだ!」
「モタモタしてる場合じゃねぇ!戦闘の準備だ!」
敵の船から声が聞こえてくる。どうやら、戦うつもりらしい。
「……でも、相手も戦う気があるみたいだけど……やるかい?」
「……勿論!」
変な様子だが、相手もやる気はあるようだ。
俺は船の仲間たちに向かって大声で叫んだ。
「野郎ども!戦闘だぁ!!」
「ウォォォォォォ!!」
俺の号令を引き金に、仲間たちは武器を引き抜いて戦闘態勢に入った。そうしているうちに、敵の船がすぐ手前まで近づいてくる。
「さぁ、始めようぜ……って、えぇ!?」
俺は敵の出で立ちに素っ頓狂な声を上げてしまった。
敵
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