エピローグ

俺の船に、新しい仲間が加わった。
そいつの名はリシャス。武術、魔術共に優れてるヴァンパイアで、コリックの妻として共に旅をする事になった。今では戦闘員として活躍している。尤も、日光が弱点であるが故に、活躍できるのは夜間の間だけだがな。
だが、それ以上に厄介な事が…………。







太陽が未だに照らされてる昼間の時、俺はダイニングにて、テーブルでコーヒーを飲んで健やかなひと時を過ごしてる……訳では無く、

「私の夫は何故、雑用のままなんだ!?」
「いや、だから、もっと能力を上げなきゃ……」

向かい側に座っているリシャスを宥めていた。

リシャスは、事あるごとに夫であるコリックの優遇を求めて来る。普段なら昼間は部屋に籠っているんだが、本人曰く、寝る気になれなかったから暇つぶしにコリックの昇格を要求する事にしたとか。俺としては、大人しく寝てて欲しかったんだが……。

「そもそも、キャビンボーイだって立派な役割だろ?船の掃除をしたり、料理を手伝ったり……」
「そう言う雑用扱いされてるのが気に食わないのだ!」
「雑用だって重要な仕事だろうが……」
「何時までも雑用なんてやってたら、立派な海賊になれないだろ!」

説得する俺に対し、リシャスは尚も食ってかかる。
勘弁してくれよ……。

「まぁまぁ、リシャスさん、夫を想う気持ちは素晴らしい事ですけど、焦っていては出来るものも出来なくなりますよ」

狐のしっぽを揺らしながら、楓はリシャスの前に紅茶を置いた。

「……だが……コリックには……早く一人前の海賊になって欲しいんだ」

楓の言葉で落ち着いたのか、リシャスは紅茶のカップを眺めながら言った。
普段は気の強いリシャスだが、女性陣に対してはどこか優しく接している。仲間になってから、サフィアを始めとした他の女性陣たちと仲良くなるのに時間は掛からなかった。色々な話をしていく内に溶け込んできたようだ。
すると、楓はリシャスの隣の椅子に座って言った。

「誰だって、いきなり何でも上手くできる訳無いですよ。船長さんが仰った通り、雑用は重要な仕事です。他の方々にやれない事でも、コリックさんになら任せられる。これって凄い事だと思いませんか?」
「……そうか……コリックは……凄いのか…………」

楓の言葉に対し、リシャスは自分の事の様に嬉しそうな笑みを浮かべた。
いやいや、確かにコリックも凄いが、俺はリシャスを言葉だけで説得できる楓の方が凄いと思う。
関心していると、ダイニングの扉からヘルムとコリックが入って来た。

「やぁ、キッド、またこってり絞られてるんだって?」
「リ、リシャスさん……またキッド船長に無理を言って……」

どうやら、他の仲間たちから聞いて来たようだ。コリックは冷や冷やしながら俺に頭を下げて言った。

「本当にすみません!リシャスさんがご迷惑を……!」
「気にするなよ。お前の成長を願ってくれる、良い嫁さんじゃないか」

俺の言葉を聞いて、リシャスはプイッとそっぽを向いた。
だが、明らかに照れ隠しである事がバレバレだ。ほんのりと頬が赤く染まってる。コリック以外の男の言う事には、素直に受け入れようとしないんだから……。
すると、コリックはリシャスの隣に座った。

「ダメだよ、リシャスさん、キッド船長に失礼な事を言ったら」
「どこが失礼なんだ?夫の昇格を求めて何が悪いと言うんだ?」
「いや、あのね、僕自身がそんなに活躍してないのに、昇格だなんて……」
「十分頑張ってるだろ!?お前だって、早く立派な海賊になりたいのだろう!?」
「そうだけどさ、何も無理を言ってまで頼まなくても……」
「コリック、お前には自信と言うものが……」

「ハイハイ、そこまで!」

ヘルムがパンパンと手を打ち鳴らしてコリックとリシャスの口論を中断させた。

「やれやれ、君たちは言われないと止めないんだから……」

ヘルムは呆れながら、俺の隣に座って来た。
すると、リシャスは鬼の形相で…………。

「影の薄い嫁無しの雑魚が偉そうな口を利くなぁ!!」
「えぇ〜…………」

うわぁ、キツイなぁ、今のは…………。
おいおい、ヘルムの奴、めっちゃ凹んでるよ……。椅子の上で膝抱えて座ってるし……。
なんか、こう……後ろに黒くてドヨ〜ンとしたのが出てるし…………。

「僕、副船長なのに……嫁がいないのは仕方ないけど……副船長なのに……」

あ〜あ〜……ヘルムは傷つきやすいから、こうなると長いんだよな……。

「あわわわ!ヘルム副船長!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさ〜い!!」

コリックは慌てて立ちあがり、必死で何度も頭を下げた。だが、キツイ一言を吐いたリシャスはどこ吹く風と紅茶を啜っている。
う〜む……独身の男に対してはかなり冷たい態度を取ってるな……。

「……あ〜、ヘル
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